【汚れた東京五輪(パクリんピック)第2章〜《逃げ得は許さない!》東京地検特捜部が追う東京五輪官製談合疑惑 vol.85


『五輪本大会400億円も談合か組織委「テスト落札企業に原則委託」』


部屋にあかりがともった電通本社=20221125日午後5時、東京都港区]

東京五輪・パラリンピックのテスト大会業務をめぐる入札談合事件で、大会組織委員会側が、落札企業が原則として本大会の業務も受注すると複数の資料に明記していたことが、関係者への取材でわかった。▶︎実際に、計約54千万円のテスト大会を落札した企業は全て、そのまま本大会業務などを随意契約で受注。▶︎随意契約の総額は約400億円に上り、独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で調べている東京地検特捜部が、本大会分なども一体とみて立件する方向で検討していることも判明した。▶︎談合の規模は大幅に大きくなる可能性がある。


【チャート】計約54千万円のテスト大会を落札した企業はすべて、本大会業務などを随意契約で受注していた]

組織委2018年、各競技の進行や警備態勢を確認するテスト大会について、実施計画の立案業務を発注した。▶︎12の会場ごとに26件の競争入札を行い、広告最大手「電通」を含む9社と1共同企業体が落札した。▶︎契約金は計約54千万円だった。▶︎大半は1社しか参加しない「1社応札」で、組織委の大会運営局元次長(森泰夫氏)電通側が事前に作成した一覧表とほぼ同じ企業が落札していたという。▶︎関係者によると、組織委側が入札時に企業側への説明で用いた複数の資料などには、発注したテスト大会の計画立案業務の遂行に問題がなければ、原則として本大会までの業務も委託すると記載されていたという[*朝日新聞 2023.01.30付記事抜粋]

=======================

NHK「虚偽字幕」はただのチェック不足ではない「政治への忖度」に慣れきった危うい空気』


2001年と2021年、NHKでは公共放送の土台を揺るがす事件が起きた。▶︎前者はETV2001「問われる戦時性暴力」の放送前、政治家の口出しを受けて番組内容が改編された事件。▶︎後者は、東京五輪の公式記録映画を制作する監督らに密着したBS番組「河瀬直美が見つめた東京五輪」において、五輪反対デモに参加したという男性が登場するシーンで「お金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕がつき、その後、事実でないことが発覚した事件だ。▶︎どちらもBPO(放送倫理・番組向上機構)がNHKを厳しく指弾し、視聴者の反発を招いた。▶︎が、2つの事件の間には、見落とすことのできないNHK内の変化がある。▶︎2022年の10月。▶︎NHKでは、15回に及ぶ講座を職員に受講させる「研修」が行われていた。▶︎その名も「リスクマネジメントブートキャンプ」。▶︎ブートキャンプは、「河瀬直美が見つめた東京五輪」の字幕問題について、BPOが「重大な放送倫理違反がある」という結論を下したことを受けてNHKが実施した再発防止策だ。

 「リスクに対する知識不足」が原因なのか

研修は「BPO意見をどう受け止めるか」(第1回)に始まり、「放送ガイドラインから学ぶリスク事例」(第2回)、「ジェンダー・セクシャルマイノリティ取材で注意すること」(第3回)、「宗教・事件・・・炎上案件マネジメント」(第5回)、「よくある相談事例でリスクヘッジを学ぶ」(第10回)、「シビアなリスク案件への対応」(第12回)、「最近のリスク管理対応例から」(第15回)といったプログラムで構成されていた。▶︎職員に受講を呼びかける案内には「リスクマネジメントスキルを高めること」が目的であると記されていた。▶︎しかし、あるディレクターは、局内チームズのチャットにこう書き込んでいる。▶︎「今回のような深刻な事態が起きた原因は、PD(編注:プログラム・ディレクター)のリスクに対する知識やスキルの不足なのでしょうか」▶︎字幕問題について、経緯を簡単に振り返る。


河瀬直美が見つめた東京五輪」が放送されたのは2021年の1226日(同月30日に再放送)。▶︎東京五輪の公式記録映画を制作していた河瀬監督や、河瀬監督の助手的な立場で撮影していた島田角栄監督に密着したドキュメントだった。▶︎問題となったのは番組の後半、「五輪反対デモに参加しているという男性」が登場し、「実はお金をもらって動員されていると打ち明けた」という字幕がついた。▶︎NHKの番組は、島田監督の背中越しに男性を撮影しており、当該シーンは島田監督の取材に同行する形で撮影された場面だった。


▲NHKの内部資料。字幕問題を受けて実施された研修の案内]

放送後、ネット上では五輪反対デモを行う人々に対して「お金で動員された矜恃も何もない集団」▶︎「民意をゆがめようという工作」といった誹謗中傷のコメントが飛び交った。▶︎しかし202219日、NHKは同番組について「字幕の一部に不確かな内容がありました」と発表。▶︎登場した男性が五輪反対デモに参加したと確認が取れていなかったことを明らかにした。▶︎10日後の119日、NHKは記者会見で制作過程について釈明に追われた。▶︎その内容によると、制作当時、チーフプロデューサーはディレクターに、男性が本当に五輪反対デモに参加していたのかについて確認するよう指示。▶︎ディレクターは「一緒に話を聞いた島田監督に『デモに行く予定がある』という話を聞いたことを確認した」とチーフプロデュ-サーに返答していた。

ひっくり返ったNHKの説明

だが、NHK釈明会見の翌日、島田監督が「担当ディレクターからの事前確認はありませんでした」という声明を出し、NHKに抗議したことを明らかにした。▶︎これを受けたNHKは「字幕の内容について島田さんに確認したという事実はありませんでした」と先の釈明を撤回してしまう。▶︎問題が表面化した20221月、前田晃伸会長(当時)は字幕問題について「率直に言って非常にお粗末だった」▶︎「チェック機能が十分に働かなかったことが一番大きな問題」だと述べている。▶︎「お金をもらって五輪反対デモに参加した」とされる男性が、本当に五輪反対デモに参加したのか、番組では曖昧な形で描かれている。▶︎NHK関係者によると、問題が発覚した当時、担当ディレクターはこの男性の連絡先すら把握していなかったという。▶︎その意味で前田会長の「非常にお粗末」という評価は間違っていない。▶︎NHKは番組を手がけたディレクター(30代)とチーフプロデューサー(40代)に停職1カ月、専任部長(50代)に出勤停止14日という厳しい処分を下した。▶︎だが、「お粗末」な番組が放送されるに至ってしまった真因を「チェック機能が十分に働かなかったこと」だけで説明できるのか。▶︎見え隠れするのは政治への忖度だ。▶︎コロナ禍での東京五輪について、NHKの世論調査でも一時は国民の半数以上が中止や延期を求めていた。▶︎ところが、五輪の盛り上がりを政権浮揚につなげたい菅義偉首相(当時)は開催に踏み切る。▶︎元総務大臣の菅首相は「NHK改革」を叫ぶなど自民党内でもNHKににらみを利かせてきた政治家として知られる。▶︎菅首相が五輪開催に舵を切ると、NHKは五輪に関する世論調査の質問や選択肢を変更し、開催を前提とした調査方法へと切り替えていく。

五輪に批判的な企画は上がらなくなった

ドキュメンタリー番組などを制作してきたNHKのベテランディレクターは「チェック機能うんぬんというのは表層的な話。▶︎もっと深いところに真の原因がある」として、「字幕問題を生んだ空気」に言及する。▶︎NHKの中にも東京五輪に批判的な意見を持つ人は決して少なくない。▶︎誘致にかかったカネの中身を検証する企画や、五輪の商業主義を批判する企画を練っていたディレクター、記者は少なからずいた」▶︎しかし、菅政権が五輪開催に舵を切ると「NHK内で五輪を盛り上げる番組制作に駆り出される職員が増えた」と言う。▶︎「五輪を批判する企画をやることは自分たちの仲間を批判するような格好となり、五輪に批判的な企画はしだいに上がらなくなった。▶︎そんな空気の中で、ついに五輪反対デモを誹謗中傷するような番組が作られ、放送されてしまった」▶︎同ディレクターはこう続ける。▶︎20年前のETV2001番組改編問題が起きたとき、二度と同じ過ちを繰り返さないよう、NHKのあるべき姿をしっかりと固めておくべきだった」▶︎20年前のETVとは、2001130日に放送されたETV2001「問われる戦時性暴力」(シリーズ「戦争をどう裁くか」第2回)。▶︎戦時中の戦時性暴力問題を扱ったこの番組は、放送前、安倍晋三官房副長官(当時)ら自民党政治家が番組内容に口出しをしたことを受け、政治家対応を専門とする野島直樹総合企画室担当局長(当時)を中心にNHK幹部が現場に内容修正を指示。▶︎結果、放送前に番組内容が改編された。▶︎2005年に朝日新聞が「保守政治家の関与」をスクープしたことを受け、番組のチーフプロデューサーだった長井暁氏が単独で記者会見を開催。▶︎「政治家の圧力により番組が改竄された」ことを告発した。▶︎刮目すべきは長井氏の会見の後、NHKの中から長井氏を支援する動きが出たことだ。▶︎当時、長井氏の上司として番組制作に尽力し、市民がNHKを訴えた裁判でもNHKを告発する法廷証言を行った永田浩三・現武蔵大学教授はこう述懐する。▶︎「当時、長井さんを孤立させちゃいけないといろんな人たちが勉強会をやった。▶︎本館の4階には当時『NHK公安』とも呼ばれていた危機管理の部署があって、局内で不穏な動きをする職員に目を光らせていた。▶︎私たちはあえて『公安』すぐ近くの会議室で勉強会を開いたりした。▶︎『怖くないぞ』という意思でもあった」▶︎永田教授はこう続ける。▶︎「あとから(NHK内で)聴取を受けたが、一方で愛情も感じた。『お前たちは間違ってない』『守ってやる』と言ってくれる幹部もいたから。▶︎それくらい当時は多くの職員が『政治介入』に憤ったし、NHKは政治介入を招くような組織であってはならないと皆信じていた」


▲ETV2001問題を受けて有志らが開催した勉強会の資料]

NHKが国民から受信料を徴収できる権限を持つのは、政府や民間スポンサーから独立した公共放送だからだ。▶︎政治家の意向を受けて番組内容を改編したことはNHKの土台を根底から覆すような事件だった。▶︎2005年にはNHK青山荘という宿泊施設でも大きな集会が開かれている。政治的圧力を受けた経験のあるOBOG、鬱屈した思いを抱えるディレクター、プロデューサーたちが多数集まり、法廷で証言をする永田氏や長井氏を激励した。▶︎一方、政治家と日頃から密に付き合う報道局では、政治家からの圧力は当時から珍しい事案ではなかったフシがある。▶︎永田氏は「制作局で番組を作っていた私たちはウブだった。▶︎NHKがそういう組織だとは思っていなかったのだから」と当時を振り返る。▶︎ETV2001番組改編問題の衝撃は、政治家の意向が報道局だけでなく、制作局の内側にまで入り込んできた点にある。▶︎それから20年が経ち、NHKはどうなったか。▶︎40代のディレクターは、NHK史に刻まれることになった2つの事件を俯瞰して、次のように語る。▶︎ETV2001番組改編問題のあと、どうすれば政府から独立し、政権に対して批判的な眼を持ち続けられるか、有志たちが集まって勉強会を重ねてきた。▶︎でも、結局は世の中の大きな流れに呑まれてしまった感がある」▶︎「安倍政権時代には迎合するような忖度報道が目立ち、菅政権時代には五輪に批判的な番組がほとんど放送されなかった。▶︎そんな中で起きたのがあの字幕問題。▶︎この20年で『政治への忖度』に慣れきったNHKの姿をさらしてしまった」

組織防衛に主眼が置かれる

ETV2001番組改編問題と五輪反対デモ字幕問題には、どちらも政治への忖度が背後にある一方で、決定的な違いがある。▶︎前者が、政治家の口出しを受けて番組を改編させられた事件であったのに対し、後者には政治家による介入といえる事実が存在しない。▶︎NHK全体が政権の意向を忖度する空気の中、現場のスタッフ自ら五輪に舵を切った政権を後押しするような番組を作ったというのが実態だ。▶︎ETV2001番組改編問題では渦中の人となり、五輪反対デモ字幕問題では綿密な取材をしてきた長井暁氏はこう語る。▶︎「問題の本質は『チェック機能が働かなかった』というレベルの話ではない。市民運動を侮蔑するような態度をとってきたNHK執行部の姿勢が職員たちの感覚を麻痺させてしまっている。▶︎ETV2001番組改編問題以降、政権への忖度に慣れきったNHKの、ジャーナリズムの力そのものが弱っているところに(字幕問題の)真の原因がある」▶︎NHKには、職員が過去の番組を探して視聴できる検索システムがある。だが、「河瀬直美が見つめた東京五輪」は、現在、検索しても出てこない。問題とされた番組を職員が検証しようにもできなくなっている。▶︎そしてNHKが再発防止策として実施した「研修」は、視聴者や市民への理解促進ではなく、いかにしてNHKという組織をリスクから守るかという点に主眼が置かれた。▶︎ETV番組改編事件から20年が経過した、NHKの現在地である[*東洋経済ONLINE 2023.01.29付記事抜粋]

=======================

【掲載日時】2023130日(月)