【汚れた東京五輪(パクリんピック)第2章〜《逃げ得は許さない!》東京地検特捜部が追う東京五輪官製談合疑惑 vol.54】
■『札幌五輪の誘致が〝大迷走〟 消えない東京五輪汚職の影響…反対多数なら「民意を尊重」』
[「政財界主導」だった五輪への不信感は、国民の中で根強い]
〝迷走〟が止まらない。▶︎2030年冬季五輪開催を目指す札幌市と日本オリンピック委員会(JOC)は20日に都内で合同会見を開き、積極的な機運醸成活動を当面休止することを発表した。▶︎秋元克広市長は「招致を目指す中で、なりふり構わずやみくもに突っ走るのではなく、まずは国民のみなさんの不安を払拭することが先決だ」と説明。▶︎「改めて民意を確認したい。▶︎前回(3月)の意向調査は市民、道民だったが、加えて国民にもしなければいけない」とし、招致の是非を問う全国規模の調査を実施する方針を示した。▶︎同市の招致活動はかねて反対意見が多く、東京五輪を巡る汚職や談合事件を受け、さらに五輪のイメージが悪化。▶︎地元関係者が「市の窓口には『このまま(招致を)続けるのか』など結構厳しい声が寄せられている」と証言するほどだ。▶︎ただ、若い世代からは期待する声も届いており、同関係者は「将来を担う子供たちの夢や希望を損なうことはできない。▶︎いろんな意見がある中で今までとは違うクリーンな大会をつくり上げていくことに注力しなければ…」と悲壮な思いを口にした。▶︎札幌市が3月に郵送で実施した意向調査では、開催賛成は52%。▶︎秋元市長は「再調査で反対が上回った場合は?」との問いに「民意を尊重する」と話したが…。▶︎招致活動を前に進めることができるのか[*東スポWEB 2022.12.21付記事抜粋/文:小松勝氏・東京スポーツ記者(五輪)]
▶️“開催賛成の52%”の調査も、電通主導で実施したとすれば怪しい数字だ笑笑〆
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【BACK TO THE 東京五輪疑惑】
■『取材対象からの独立という報道倫理に反した東京五輪スポンサー新聞社』
◆組織委と利害を共有したことで、招致疑惑の実名報道に及び腰に
今回は、租税回避地での資金洗浄犯罪の淵源となった1991年のBCCI(国際商業信用銀行)事件、そして租税回避地を舞台とした各国の政財界要人の不正蓄財を暴いた2016年のパナマ文書事件の報道傾向を比較することで、朝日新聞社、読売新聞社東京本社、毎日新聞社、日本経済新聞社の東京五輪スポンサー(オフィシャルパートナー)新聞4社による東京五輪招致段階での国際的な買収疑惑(以下、五輪招致疑惑)と報道の特徴を検証したい。▶︎そのうえで、五輪をめぐる報道メディアの問題について論じていく。
◆招致の度にIOC委員の買収疑惑
五輪招致疑惑は2020年夏季五輪大会の招致をめぐって、大手広告代理店「電通」元専務で東京五輪招致委委員会の「スペシャルアドバイザー」であった高橋治之被告が海外のペーパーカンパニーや不可解な贈答物を使って国際オリンピック委員会(IOC)委員らを直接的かつ間接的に買収した疑惑を指す。▶︎これに関連して2016年9月、招致委理事長だった日本オリンピック委員会(JOC)竹田恒和会長(当事)はこの疑惑を一貫して否定し、JOC調査チームも「違法性はない」と結論付けた。▶︎だが、🇫🇷フランス検察当局は2018年末からこの疑惑の予審手続きを開始したことで、竹田氏は2019年にIOC委員を辞任し、JOC会長を退任した。▶︎翌2020年にJOCがこの疑惑の再調査を否定したのを期に、国内報道メディアの報道もほぼ終了した。▶︎ただ一部の独立系報道メディアや一般市民の疑念がくすぶり続け、🇫🇷フランス検察当局は2022年12月末現在でも捜査を継続中である。
スケールの大きさや範囲の広さなどBCCI事件やパナマ文書事件ほどではないにせよ、五輪招致疑惑は「オリンピック」そのものの存在意義に関わる重要な論点であることには間違いない。▶︎しかも、五輪招致疑惑は2020年夏季大会(開催は2021年)だけではない。▶︎明るみに出たものだけでも1998年冬季大会、2002年冬季大会、そして2016年夏季大会など、ほとんどすべての五輪招致でIOC委員の不正買収工作が行われてきた。▶︎ここで五輪スポンサー新聞4社の五輪招致疑惑に関する報道状況の調査結果を示したい。▶︎それぞれの新聞社の記事アーカイブで「五輪招致疑惑」をキーワード検索すると、記事数は朝日新聞で112本(1998年12月18日-2020年9月24日)、読売新聞で113本(1998年12月13日-2021年2月14日)、毎日新聞で176本(1998年12月24日-2021年1月31日)、日経新聞で84本(1998年12月23日-2021年12月4日)、4紙合計で485本を確認した(表1)。
これらの記事の中には2020年夏季五輪招致のほか、1998年冬季五輪招致、2002年冬季五輪招致、2016年夏季五輪招致の買収疑惑が多く含まれる。▶︎五輪招致では必ずと言っていいほど不正・不法行為が繰り返されてきたため、五輪スポンサー新聞4社も高い関心をもってこの問題を報道してきたことが分かる。▶︎しかも、2002年ソルトレイク五輪や2016年リオデジャネイロ五輪の招致疑惑では捜査当局による逮捕・起訴以前やIOCの処分決定以前から五輪スポンサー新聞4社それぞれが一部海外報道メディアの記事を引用しながらも実名報道に踏み切っていた。▶︎これは立件前の被疑者の実名報道がほとんど無かった東京五輪の五輪招致疑惑とは対照的である。▶︎しかも、海外報道メディアの転伝というクッションを置き、安全を確保したうえで取材対象を批判する、五輪スポンサー新聞4社にとってリスクゼロの報道方法とも映る。
◆疑わしきを白日にさらしたBCCI事件、パナマ文書報道
一般に同一案件で出稿数とニュース価値は正比例する。▶︎ここで五輪招致疑惑、BCCI事件とパナマ文書事件のこれら3件の疑惑・事件についてのニュース価値の内容を考えてみたい。▶︎ジャーナリズム界で世界的な評価を得ているピューリッツアー賞を授賞する🇺🇸米コロンビア大ジャーナリズム大学院のメルビン・メンチャー教授が示したニュース価値を見てみよう。ニュース価値を高める要因には、
- 新しさを示す「時間性」
- 社会への影響度を示す「インパクト性」
- 取材対象の社会での認知度を示す「著名性」
- 情報需要者との物理的あるいは心理的距離を示す「近接性」
- 紛争や戦争などの「対立性」
- 一次的な社会での拡がりを示す「流行性」
- ジャーナリスト個人の価値観による「必要性」
などがある。▶︎ニュース価値が高い場合、記事数が増加すると共に、内容も詳細になる。▶︎またより一層の情報源の開示と実名報道が求められる。▶︎為政者による汚職や犯罪がからんだBCCI事件とパナマ文書事件、そしてオリンピックという世界最高峰のスポーツ大会招致疑惑はいずれもインパクト性と著名性という点でニュース価値が高かったと考えられよう。▶︎また、自国開催での東京五輪の招致疑惑は🇯🇵日本国民にとって物理的かつ心理的な近接性が高かったであろう。▶︎一方、BCCI事件とパナマ文書は海外の事件であり、🇯🇵日本の為政者らの関与は見当たらず、物理的あるいは心理的な近接性は低かったと考えられる。▶︎次に、五輪ポンサー新聞4社が報じた五輪招致疑惑に対して、BCCI事件とパナマ文書事件との記事の量と内容について比較検討したい。▶︎そこで、ここでは「五輪招致疑惑」、「BCCI」そして「パナマ文書」というそれぞれのキーワードを記事の見出しと本文中に含む記事数を調査した(ただし、五輪招致疑惑、BCCI事件やパナマ文書事件それぞれのテーマ内容に関して、キーワードの設定や検索の方法によって漏れがある可能性は否定できない)。▶︎その上での各新聞社のそれぞれの疑惑・事件についての全体的な出稿傾向を示したい。▶︎五輪スポンサー新聞4社の合計では「五輪招致疑惑」が計485本に対して、「BCCI」事件では計422本(対「五輪疑惑」記事比率87%)、また「パナマ文書」事件では計842本(同1.74倍)であった。▶︎この結果、記事数からするとニュース価値は五輪招致疑惑とBCCI事件はほぼ同程度、パナマ文書事件はこれらよりもニュース価値が高いと考えられる(表1)。▶︎BCCI事件では発覚当初から関わりが疑われた人物の実名報道が特徴的であった。▶︎例えば「不法行為の関係者には、パナマのノリエガ元将軍、🇮🇶イラクのフセイン大統領、🇵🇪ペルーのガルシア前大統領などの名もあがっており(読売)10」や、「取引先はノリエガ将軍(元🇵🇦パナマ最高実力者)、フセイン・🇮🇶イラク大統領、故マルコス・🇵🇭フィリピン大統領、オルテガ前🇳🇮ニカラグア大統領、武器取引の大立者のアドナン・カショギ氏らの名が含まれており、国家の資金を私有化し国外に退蔵する手助けもしたという(朝日)」などである。▶︎さらに表現方法に関しても、BCCIについて「史上最も汚い銀行」(朝日)、「史上空前の悪徳銀行」(日経)、「空前の悪徳銀行」「闇の銀行」(毎日)、「世界一汚い銀行」(読売)、などと主観的に表現した。▶︎しかも、「BCCI口座 CIAも利用――表に出せない資金アリ?(日経)」「BCCIのお得意さん、話題の政治家ズラリ 資産国外退蔵の手助け?(朝日)」などと憶測や風刺的な表現もあった。▶︎五輪スポンサー新聞4社はBCCI事件やパナマ文書事件では疑惑の渦中であっても公人ならば実名報道が基本で、公権力を監視して警笛を鳴らす、「疑わしきを、白日の下にさらす」という、ジャーナリズム本来の使命を追求した形跡が随所に見られた。▶︎ただし、これらの海外要人は日常的な取材対象でもなく、しかも日本語記事である点から、報道内容をめぐって問題が発生するとは考えにくい状況であったことに留意したい。▶︎また、ソルトレイク五輪やリオデジャネイロ五輪の招致疑惑では捜査当局による逮捕・起訴以前やIOCからの追放決定以前から五輪スポンサー新聞4社それぞれが一部海外報道メディアの記事を引用しながらも実名報道に踏み切っていた。▶︎ただし、これらの取材対象である大会組織委とのスポンサー契約など経済的な利害関係は無かった。
◆招致疑惑で実名報道に及び腰だったスポンサー新聞社
東京五輪の招致疑惑でもIOCやJOC、大会組織委や電通からの公人・準公人が多く関わっていた。▶︎BCCI事件と同等のこの疑惑の高いニュース価値とこれら取材対象の公的性格からすると、実名報道がなされてしかるべきであった。▶︎実際に海外報道メディアや国内雑誌メディアは高橋元理事による五輪招致疑惑を発覚当初から実名報道してきた。▶︎しかも、大会組織委とスポンサー契約時に、たとえば朝日新聞社は「公正な報道を貫き」と五輪報道の編集方針を宣言した。▶︎ただし、この編集方針が踏襲されたとは言い難い。▶︎五輪スポンサー選定疑惑では、大会組織委解散後まで高橋氏の実名報道は無かった。▶︎また、五輪招致疑惑ではスポンサー期間中、🇬🇧英ロイター通信の記事を引用して毎日と日経が実名報道、朝日と読売は高橋氏逮捕後に実名報道に切り替えて五輪招致疑惑に言及した。▶︎これらはBCCI事件やパナマ文書事件、そして2002年ソルトレイク五輪や2016年リオデジャネイロ五輪の招致疑惑での実名報道姿勢とは対照的である。▶︎こうして振り返ると、五輪スポンサー新聞4社の実名報道に関する編集方針には一貫性が無く、しかも利害関係を持つ取材対象について匿名で報道する傾向が見られた。▶︎「ウォッチ・ドッグ」や「社会の木鐸」と称される報道メディアの主目的は公権力を監視し、市民社会に危機の警告を発することである。▶︎報道メディアには、事実関係への批判的視座と市民社会への誠実性を担保するため、取材対象と利害関係を持たないという「経済的な独立」、取材対象の信条・思想に対する「政治的・精神的な独立」、そして取材対象と外見的に一線を画すという「外観的な独立」の3つの独立性が求められる。▶︎このうちいずれかが欠ける場合、公正な報道への瑕疵が生じる懸念が持ち上がる。▶︎報道メディアと大会組織委の間にスポンサー契約という利害関係が生じていたなか、五輪招致疑惑が発生した。▶︎以上の検証結果は、利害関係が報道メディアによる五輪招致疑惑の独自調査が困難となり、実名報道を敬遠したことの傍証となろう[*論座2022.12.19付記事抜粋/文:小田光康氏・明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所所長]
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【掲載日時】2022年12月21日(水)



