【🚀ウチュノコトバ〜神秘解明に向けた人類の歩み】episode501
■『3段階目と4段階目のマイルストーンを相次いで完了!…民間月探査「HAKUTO-R」ミッション1続報』
[HAKUTO-Rミッション1ランダーの航行軌道のイメージ図]
株式会社ispaceは、同社の月面探査プログラム「HAKUTO-R」ミッション1について12月16日までに、ミッション1のランダー(月着陸船)を予定の軌道へ投入するための初回軌道制御マヌーバと、ランダーに搭載されている顧客ペイロードの確認作業が完了したと発表しました。▶︎ミッション1ランダーは約1か月間の深宇宙航行の後に月へ向かう予定です。▶︎ispaceによると、2022年12月11日16時38分(日本時間・以下同様)に打ち上げられたHAKUTO-Rミッション1ランダーは、姿勢・電源供給ともに安定した状態で航行を続けています。▶︎2022年12月15日12時には初回の軌道制御マヌーバが、翌12月16日には顧客ペイロードに不備がないことの確認が完了したとしています。▶︎ミッション1ランダーは地球や月から一旦離れた後で再び戻ってくるような軌道を描く、低エネルギー遷移軌道(low-energy transfer orbit)を航行しています。▶︎低エネルギー遷移軌道は航行するのに時間がかかるものの、少ない推進剤で月へ向かうことができます。▶︎ランダーは12月15日時点で地球から約55万km離れた地点を航行しており、2023年1月20日頃に地球から約140万kmの地点(地球から月までの距離の約3.7倍)に到達する予定です。▶︎HAKUTO-Rミッション1では打ち上げから月面着陸までの各段階に応じて10のマイルストーンが設定されています。▶︎初回軌道制御マヌーバと顧客ペイロード確認作業の完了をもって、Success 3「安定した航行状態の確立」とSuccess 4「初回軌道制御マヌーバの完了」が完了しました。▶︎今後は地球から最も遠ざかる地点へ向かう約1か月の間に、安定した深宇宙航行が可能であることの確認作業が完了すれば、次のSuccess 5「深宇宙航行の安定運用を1ヶ月間完了」が完了することになります。
[ispace「HAKUTO-R」ミッション1のマイルストーンを示した図]
なお、HAKUTO-Rミッション1ランダーには以下7つのペイロードが搭載されています。
◉🇦🇪アラブ首長国連邦(UAE)ムハンマド・ビン・ラシード宇宙センター(MBRSC)の月面探査車「Rashid(ラシード)」
[▲UAE月面探査車「Rashid」]
◉株式会社タカラトミー等が開発した変形型の月面探査ロボット「SORA-Q(LEV-2)」
◉🇨🇦カナダのMCSS社が開発した人工知能(AI)を用いたフライトコンピューター
◉🇨🇦カナダのCanadensys社のカメラ
◉HAKUTOのクラウドファンディング支援者の名前を刻印したパネル
◉サカナクションの「SORATO」(HAKUTO※応援歌)の楽曲音源を収録したミュージックディスク
[※…HAKUTOは民間初の月面無人探査を競うコンテスト「shoppingmode Google Lunar XPRIZE」に🇯🇵日本から参加したチームで、HAKUTO-Rの前身にあたる。shoppingmode Google Lunar XPRIZEは勝者がないまま2018年に終了][*sorae 2022.12.19付記事抜粋]
■『宇宙倫理学は問う…火星を開発するのは「良いこと」か?』
――進行役の清野由美です。▶︎科学哲学者の清水雄也さんから、宇宙に関する倫理の話をうかがっています。
【澤本嘉光氏(電通グループ エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター)】:僕たちが思いもよらないところを、ここまで考えている専門家がいる、ということにびっくりしつつ、面白さを感じます。
――前回までのお話をおさらいしますと、1967年に発効した宇宙条約により、宇宙空間や天体の一部もしくは全部を地球上の国が所有することはできません、と。▶︎しかしながら、月や小惑星にある資源を採掘して、自国のものにすることは可能である、とされていて、そのあたりにビジネスが発生する、と。
【清水雄也氏(京都大学宇宙総合学研究ユニット特定助教、科学哲学者)】:そうなると、利益をめぐる競争が起き、適切な枠組みがなければ望ましくない事態を生んでしまうかもしれない。▶︎それを回避するための議論の土台として宇宙倫理が求められる、ということですね。
【澤本】:利益争奪戦が起きたら、国家間で格差が拡大していくことでしょうし。
【清水】:そこがまさしくいま、🇺🇳国連で議論されている問題です
――SDGs(持続可能な開発目標)の次は宇宙倫理だ、と。
【清水】:前回も少し言及しましたが、🇺🇳国連の中にCOPUOS(宇宙空間平和利用委員会)というものがあります。▶︎現在では参加国が100カ国を超える大所帯になっていて、宇宙開発に直接の実績や興味がない国もたくさん入っています。▶︎どうしてかと言うと、この委員会に参加して意見を表明することで、この先の宇宙利用の枠組みづくりに自分たちの利害関心を少しでも反映させたいからでしょう。▶︎いますぐ自分たちに関係しないからといって放っておいたら、現時点での宇宙先進国にばかり都合のよい枠組みができあがってしまうかもしれないという危惧は当然あるはずです。
――不穏ですねえ。
◆宇宙人とのコンタクトについての「倫理的な指針」
【澤本】:清水さんが取り組んでいる宇宙倫理学というものについて、僕が興味を持ったのは、面白さもさることながら、それ以上に、これはちゃんとやらなきゃまずいな、と危機意識を感じたからです。▶︎大きく言うとそれは、僕たちが「もうすぐ来る未来だ!」って喜んでいたものに対して、善悪の基準が必要だよね、というきわめてまっとうな問いかけでした。▶︎たとえば、火星に行って、プラントなりコロニーなりを造る話が単純に「いいこと」として語られる。▶︎パースに描かれた未来像はかっこよくて新しいから、わくわくするけれど、そこで起こる問題について、善悪の判断はどうするのか。▶︎その部分は、まだブラックボックスなんですよね。
【清水】:はい、現状では根本的な原則も具体的な枠組みもありません。
【澤本】:あと、清水さんは「宇宙人とコンタクトするとしても、そこでどう行動すべきかという倫理的指針がまだない」ということも言われていて、そこも興味を引かれるポイントでした。
――最初に名刺交換をしますとか?
【澤本】:それはルールじゃなくて、マナーですけど。
【清水】:宇宙倫理学の中でも、かなりSF的なトピックですけど、宇宙人とのファーストコンタクト問題というのは、一応、少しずつ論じられてはいます。
――マジですか?
【清水】:我々がイメージする「宇宙人」みたいな形態かどうかはさておき、ある程度以上知的な生命体とのコンタクトですね。▶︎第1回(こちら)で、宇宙の生物の話をしたときに、微生物でも生命として尊重されるべきかというような話をしました。▶︎その点について言えば、知的生命体が存在するなら、当然に尊重ないし配慮すべき相手だということになりそうではあります。
――イルカぐらいのレベル感ですか。
【清水】:その「レベル感」がまさに哲学的な問題になるわけですが、ともかく、少なくとも相手が知的ならば相応の配慮が要求されるだろうと、まずは考えられそうです。▶︎でも、これは地球上のこれまでの倫理観を拡大適用してみているだけの話で、あくまで出発点にすぎません。
【澤本】:そうやって考えていくと、どんどん難しくなっていきますね。▶︎ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督のSF映画で「メッセージ」(2016年)という作品がありました。
[「メッセージ」(ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督)]
【清水】:はい、未知の知的存在との邂逅(かいこう)を描いた作品ですね。▶︎宇宙人とのファーストコンタクト問題はそれ自体はかなりSF的という非現実的なトピックですが、それについて考えることで、「知的であるとはどのようなことか」▶︎「コミュニケーションが成立していると言える条件は何か」▶︎「どのような対象に対して、どのような種類の道徳的配慮が要求されるか」といった、一般的な問題に新しい視点を与えてくれるかもしれません。▶︎そうした論点は、人工知能、ロボット、動物などについて考える際にも関係してきます。▶︎そう考えると、ファーストコンタクトの倫理学的検討にも、それなりに現実的な意義がありそうです。
【澤本】:そういうお話を聞くと、宇宙倫理学って何か小難しそうで分からないよな、と思っていたことが、どんどん面白くなっていくじゃないですか。
――いや、十分に小難しいです。
◆宇宙旅行は危険、自己責任、でいいのか?
【澤本】:この対談の第1回で、人類はアポロ計画以来、月に行ってないという話もしました。▶︎その間、国際宇宙ステーション(ISS)には基本的に科学者や技術者が行っていて、地球じゃできない実験を行っているわけですが、科学者が実験のために行くのではなく、一般人が楽しみのために宇宙を体験する宇宙観光旅行は、すでに実現可能な話になっています。
――宇宙空間には、強烈な放射線や、筋力低下などの問題があると、清水さんにうかがいました。▶︎ZOZO創業者の前澤友作さんは当然、そういうリスクについての説明を受けた上で行かれているわけですよね。
【清水】:再び宇宙旅行の問題ですね。▶︎宇宙旅行に大きな生命・健康リスクが伴うことは基本的な認識事項ですよね。▶︎その中で実施されている宇宙旅行ビジネスでは、事前に当事者の同意を得ることをもって、そうしたリスクに満ちた環境に旅行客を輸送することを正当化し、万一の際の免責根拠とするという手法が一般的になっているのではないかと思います。
――不可抗力の場合、どうなっても文句は言いません、ということですね。
【清水】:しかし、「当人が同意したのだから、リスクのある場所に連れて行ってもよいし、そこで何かあっても責任はとらなくてよい」と単純に考えることは、もちろんできません。▶︎そこで、インフォームドコンセントの枠組みを適用しようという考え方があります。
【清水】:インフォームドコンセントは、医療分野で用いられてきた考え方で、患者が受ける医療について、事前に想定されるリスクなどを十分に情報提供し、その上で同意するかどうかをしっかり確認しなければならない、というものです。▶︎ここで重要なのは、インフォームドコンセントが成立するのは、リスクについて十分な情報提供ができるという前提が置ける場合に限られるということです。
――つまり、リスクがどの程度のものなのかが分かっている、ということですね。
【清水】:特に国が認める先端医療などの場合は、科学実験などを通して知見を蓄積した上で、リスクの詳細情報を伝えているわけです。▶︎一方、宇宙旅行にどのような種類のリスクがどの程度伴うのかということは、まだまだよく分かっていない。▶︎もちろん、実際に宇宙に行った人たちのデータもありますし、宇宙医学の研究も進められていますが。
【澤本】:知見はまだ全然ない段階ですよね。
【清水】:十分にあるとは言えないでしょう。▶︎ただ、いまのところ依拠できそうな最もマシな枠組みはインフォームドコンセントだということで、🇺🇸アメリカでは宇宙旅行ビジネスにインフォームドコンセントの枠組みを適用しています。
――現時点では、宇宙に行ったら、それは命の危険もあるよね、というのは、人々の間に通念としてあると思いますが。
【澤本】:その通念がどれぐらい世の中に広まっているかが問題です。▶︎医療の場合は、リスクを告知されないで、それで深刻な事態になったら、お前、言ってねえだろ、という話になったりするわけですが。
◆誰もまだ分からない世界のリスク
――清水さんのご専門の哲学的な観点から言うと、リスクの詳細が解明されていない状態でインフォームドコンセントは成立するのか、ということが問題になるということでしょうか。
【清水】:哲学的にも法学的にも、そこが重要な問題の1つになります。▶︎ただ、リスクの詳細情報を提供できる状態になることは、インフォームドコンセントの枠組みを適用するための十分条件ではありません。▶︎たとえば、「20%の確率で命を落としますが、ワクワク感は保証します。▶︎この確率は適切な科学的手続きによって確認されたもので、そのメカニズムの詳細も説明できます」というアトラクションがあったとして、それを使ったビジネスはそもそも認められないですよね。▶︎ここでインフォームドコンセントを持ち出すのは明らかに不適切でしょう。
――そんなのはだめだ、という基準は、私たちの中に自明のものとしてあります。
【清水】:医療の場合、治療行為に伴う生命・健康リスクとてんびんにかけられるのは、やはり生命や健康です。▶︎つまり、そもそもそれを受けなければ、病気のために生命や健康が損なわれてしまうであろう状況に置かれていることが、前提になっているわけです。▶︎治療を受けた場合のリスクと、それを受けなかった場合のリスクが、少なくとも一定程度まで釣り合っているような状況で、そこの微妙な判断を誰がどのようにすべきかという問題があり、その答えの1つがインフォームドコンセントなんです。▶︎宇宙旅行ビジネスでは、この前提も成立しません。▶︎さきほどのアトラクションの例と宇宙旅行に共通するのは、どちらも、それに伴う生命・健康リスクとてんびんにかけられるのが「楽しみ」とか「満足感」のようなものであって、まったく釣り合っていないように見えるという点です。▶︎インフォームドコンセントの枠組みを用いるというと、それなりに分かりやすく、しっかりしているというような気がするかもしれませんが、こうして少し考えてみると、医療と類比的な仕方でインフォームドコンセントを宇宙旅行ビジネスに適用するのは無理があるように思われます。
【澤本】:とはいえ宇宙については、リスクを承知で行かないといけない段階がありますよね。▶︎医療も技術もすべてそうだと思いますが、それこそ宇宙飛行士は人類代表として、そのリスクを負って、宇宙に行っているわけで、僕たちだって、ここは行っておいてもらわないとな、と思っている。▶︎宇宙倫理学は、そこにブレーキをかけてくる、なんて思われないのでしょうか。
【清水】:倫理学者は決して物事にブレーキをかけたい人たちの集まりではないですし、倫理的なことがらを問題にするかぎり、「ブレーキをかけるべきでない」という主張も倫理学的な議論の中に位置づけられることになります。▶︎宇宙で言えば、初期の冒険的段階では倫理もへったくれもないという主張もあるかもしれませんが、それ自体が1つの倫理的主張だとも言えます。
◆なぜ、ベンチャー段階なら倫理を考慮しなくていいのか
――と言いますと?
【澤本】:ベンチャー段階では倫理的考慮は無視してよいと、そう思う根拠は何か、という話になってくるわけですよね。
【清水】:そうです。▶︎もちろん、そこまで極端な主張をする人はいないと思いますが、ベンチャー段階にある重要な事業については倫理的なハードルを下げてよい、と考えている人は結構いそうです。▶︎これは、「やってよいことと悪いこと」あるいは「人の行いとして正しいことと間違っていること」についての1つの意見です。▶︎問題は、それがどのような根拠に基づいていて、他の意見と比べてどこまで優れているかということですが、それを論じるフィールドが「倫理(学)」と呼ばれているわけです。
【澤本】:倫理がブレーキになるかどうかとは別に、そこがゼロだと何も考えないじゃないですか。▶︎でも、宇宙についての倫理学というものがあって、何かを議論している状況があると、それを無視しては先に進めない。▶︎我々は善悪について考えなきゃいけないんだな、と頭に入れてから進む、または進まないことを選択する。▶︎で、物事を決めるとき、そのような態度を持つことは相当、意味があるものだと思ったんです。▶︎宇宙倫理学というものに興味を持つにしろ、持たないにしろ、そういう議論があることについては、みんな知っておいてね、と僕は思うんですね。
【清水】:澤本さんがおっしゃってくれたことがすべてな気がします。▶︎宇宙倫理を論じる意義はやっぱりそこで、気がつかなければ話にもならないところを、気にしてもらえるというのが非常に大事なんだと思っています。▶︎もちろん、専門的知見のある学者が答えを出していくという側面もありますが、大事なことは、みんなが本当に納得できるかどうかということです。▶︎ただし、ここで言う「納得」は、色々なことをよくよく考えた上での「納得」です。▶︎倫理学は、何かを止めるためのものではないのですが、新しい科学技術やビジネスなどについて論じる際には、しばしば「こういう倫理的懸念があるよ」という話をするかたちになりやすい。▶︎しかし、それは倫理学の本質的な特徴ではなく、あくまで本当に目指しているものへの1つのルートでしかないんです。
◆お説教する邪魔者に見えるかも……
【澤本】:一般論に戻すと、何かの科学の推進派にとっては、倫理学者って、たしかにうとましい存在になりえますよね。
【清水】:倫理的な議論を喚起しようとする人は、結果として、お説教くさい邪魔者に映るというのは、現実的には避け難い部分があるでしょうね。▶︎そこも含めて引き受けつつ、倫理的な考慮の意義について論じていくしかないんだと思っています。
【澤本】:倫理学に反感を抱く人に、その意義を分かってもらうことは簡単じゃなさそうですね。
【清水】:根本的な説得とは言えないものの、まず話を聞いてもらおうというときに言えそうなことはあります。▶︎それは、科学技術の開発や実装を推進するときに、自分たちは人としてよいことを、少なくとも問題ないことをしている、と自信を持って、すっきりした気分で進めてもらうためにも、倫理学的議論は有用だということです。▶︎多くの人は、もともと倫理的な善さや正しさをそれなりに重要視しているはずで、本心からそれを軽視したり忌避したりしているということはあまりないと思います。▶︎でも、自分のしたこと、していること、したいことが、いつもそうした価値に照らして許容できるものであるとはかぎらない。▶︎そこで、そうした議論に直面すると、残念に思ったり、反感を持ったりします。▶︎これは、いたって自然な反応だと思いますし、そうした経験をまったくしない人の方が少ないと思います。▶︎正直に言って、私もよくあります。▶︎でも、そこでそのまま開き直ったり、突っ走ったりしてしまうのは、他の人々のためにも自分のためにもよくない。▶︎立ち止まって、もう一度どうすべきかを考えてみることが重要です。▶︎しかし、何が善いことなのか、正しいことなのかというのは、とても難しい問題で、各自が一から考えるというわけにはいかない。▶︎倫理学は、そういうときに参照できるように、議論や概念を整理して発展させています。
――あ、分かりました。倫理ってまさしく「スター・ウォーズ」におけるフォースですね。
[*日経ビジネス 2022.12.19付記事抜粋]
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【掲載日】2022年12月19日(月)
Limitless undying love whshines around me like a million ,suns, it calls me on and on across theuniverse.
[100万の太陽のように私の周りで輝く永遠の愛は、宇宙を越えて私を呼んでいる。]








