🇯🇵日本人の選択肢〜ジャパンクライシスに備え今考えるヒント vol.32


🇺🇦ウクライナ戦争は「電子立国🇯🇵日本」を再生する最後のチャンス』


1213日、先端半導体の新企業「Rapidus」が、国産半導体の量産化に向けIBMとの共同開発を発表する記者会見を行いました。▶︎社長の小池淳義氏は早稲田大学大学院から日立製作所に入社、東北大学大学院で電子工学の学位を取得。▶︎日立OBの方からは、小池氏がエンジニアの中のエンジニアだとうかがっています。▶︎しかし、悲しいかなNHKの報道は、例によってですが、表面すらも撫でられておらず、何を言っているのかさっぱり分かりません。▶︎「トヨタ自動車やNTTなどが出資するRapidus2027年をめどに先端半導体の量産化を目指していますが、🇯🇵日本には現在、そのための技術がありません」▶︎「新会社では、126日に🇧🇪ベルギーの研究機関とも技術協力に向けた覚書を交わしていて、優れた技術を持つ海外勢との連携を積極的に進めようとしています」▶︎この2つのセンテンスで、何か意味ある内容を把握できる読者がいるとすれば、関係者か超能力者でしょう。▶︎官僚が書くプレスリリースが無内容なのは、その官僚自身が内容を理解していないことに原因があることが大半です。▶︎そのプレスリリースを書き写したような報道には報道機関としての責任感が全く感じられません。▶︎そもそも、この文章中にある「優れた技術を持つ海外勢との連携」という記述からして社会常識を欠いて無意味です。▶︎普通、先端技術を持つ企業や研究機関は海外に技術漏洩するのを極度に警戒します。▶︎どうしてそうした海外勢との連携が図れるのか、と真っ先に疑問が生じます。▶︎🇧🇪ベルギーの研究機関」ではなく、なぜ「世界の先端大学が協力して超微細電子工学と情報技術分野で世界を牽引するする「Interuniversity Microelectronics CentreIMEC)大学際微細電子工学研究センター」と書かないのか。▶︎関連する内容を扱っている大学の一教官として極めて不本意です。▶︎また、「🇯🇵日本には現在、そのための技術がありません」の文章に至っては、あまりに間抜けな話です。▶︎技術がないのにたった5年でキャッチアップできるのでしょうか。▶︎🇯🇵日本は1980年代「電子立国🇯🇵日本」だったはずです。▶︎どうしてそれが「技術がありません」にまで零落したのか。

モノづくり産業政策を放棄した🇯🇵日本

この謎を解くカギは20002001年「同時多発テロ」直前頃の政策転換にあります。▶︎この時期、🇯🇵日本は🇺🇸米国から毎年「年次改革要望書」を突き付けられるようになります。▶︎官僚はこぞって、これに沿って政策案を書けば国会を通過しました。▶︎私は1999年、東京大学に着任したので、このありさまをリアルタイムで見るのみならず、御用学者の末端として、研究教育の政策立案にも携わりました。▶︎正確には「産業政策」周りを回避して、基礎研究、教育だけに集中するように自らの道を選んだ。▶︎何しろあまりにもひどい内容だったから。▶︎一言でいうと小渕恵三政権末期から森喜朗、小泉純一郎政権初期にかけて、🇯🇵日本は独自の「ものづくり産業政策」を放棄したわけです。▶︎「もはや輸出などと言っている時代ではない」▶︎「これからは内需拡大、インバウンド重視」など、旗印は結構なのですが▶︎世界に冠たるシェアを持つ商品や産業は、ごく一部の例外(車やゲーム、アニメなど)を除いて、ことごとく消えてしまった。▶︎半導体は🇯🇵日本で育った技術が完全に芽を摘まれ、移植された先の🇰🇷韓国サムスン🇹🇼台湾TSMCが天下を取りました。▶︎かつては「電卓戦争」で熾烈な争いを勝ち抜いた「ビジコン」東北大学出身の嶋正利が世界で最初のマイクロプロセッサを設計し、マルチウインドウ型のOSも大阪大学でその原型が開発されたはずでした。▶︎しかし嶋さんのチップは発足したばかりのベンチャー、🇺🇸インテルが製造、マルチウインドウ型OS🇺🇸アップルマイクロソフトが独占してしまった。▶︎技術で勝ってビジネスで完敗」が20世紀末年🇯🇵日本のパターンでした。▶︎その技術も根絶やしにされかかったのが、21世紀に入ってからのここ20余年だったわけです。▶︎皮肉なことに2022年、🇺🇦ウクライナで戦争が勃発、🇺🇸🇨🇳米中関係を軸に東アジアにも各種の緊張が走る中、むしろ台北やソウルよりは人件費が安くなってしまった🇯🇵日本の地方で、自由主義圏のモノづくり復活というのが、グローバルに見た🇯🇵日本の現状と言えるでしょう。▶︎では20世紀「電子立国🇯🇵日本」当時と、21世紀第3ディケードの今日と、エレクトロニクスは何が変化し、🇯🇵日本は「その技術がない」状況になってしまったのか? ▶︎一言でいうなら「ナノテクノロジーものづくり(ファブリケーション)」を支える「ヒト」「基幹技術」そして「設備と組織」が「ない」のです。▶︎そこで、ここ20年「IT」だ「データ・サイエンス」だと表層的な情報応用に執心して、🇯🇵日本が完全に乗り遅れてしまった「ナノテクもの作り」について、端的な例を挙げて物性物理の観点から平易に示してみたいと思います。

◆「ナノテクもの作り」に乗り遅れた日本

Rapidusの記者会見に先立つこと4日の129日、世界最大手の半導体受託生産メーカTSMC(台湾積体電路製造)は、3nm世代のCMOSロジックLSI製造技術の確立を発表しました。▶︎「新しい3nm世代LSIは、トランジスタとしてFin-FETを採用、配線は15層でシングルパターンのEUV極端紫外線露光装置でエッチング」などとプロセシング用語を並べてもわけが分からなければ意味がありません。▶︎トランジスタというのは「スイッチ」です。▶︎「ゲート電極」に電位が掛かると「ソース電極」と「ドレイン電極」の間にチャネルが開かれ電気が流れる。▶︎「ゲート信号によって、ソースドレイン間の電流を制御するスイッチング素子」というのがトランジスタの実体です。▶︎これを単位に論理回路を組み立てることで、CPUやメモリーなどの半導体素子、チップが作られます。▶︎一言でチップといっても、種類は様々で、すでに確立されているGPUから、私たちがいま創成を目指している「脳型半導体(ニューロモルフィックLSI)」など、種類は豊富です。▶︎今日、多くの半導体素子が電界効果トランジスタ「Field-Effect TransistorFET)」と呼ばれるシステムを基本ユニットとして採用しています。▶︎これはゲート電極にかけた電圧(電界)が半導体内部の状態を変化させ、電気が流れたり流れなかったりを制御する仕組みになっている。▶︎発明された当初、FETはゲート電極「面」がソース~ドレインに「面」で密着して「電界効果」を与えていました(図のPlanar FET)。


これを薄型化することで、高速で動作するFETを作ることができます。▶︎「ナノ薄膜」加工によってFETのサイズは数十ナノメートル・スケールまで極小化し、低いスイッチング電位、低消費電力で高速動作する素子を作ることができました。▶︎ところが、一定以上サイズを小さくしてしまうと、ソースとドレインの間が近づくためにゲートが本来の「扉(gate)」の役割を果たさなくなり、ショートしてしまうなどの難がありました。▶︎この点を克服するためゲートとソースの接触面積を増やしてスイッチング素子としての性能を高めたのが「Fin-FET」背びれ型電界効果トランジスタと呼ばれる、ナノファブリケーションです。▶︎それまで膜面を2D積層していたナノ薄膜形成を「3D」化し、3面で接することで、0.5Vの動作電圧でも作動する、高速半導体素子の創成に成功しました。▶︎現在では「Fin FET」が最先端半導体では主流になっています。▶︎つまり「半導体ナノシート」のプロセシングで実用に供する歩留まりが出ているといことになる。▶︎しかしこれがうまくいったのはスケール5nmまでで、4nm以下では動作電圧を下げにくいことが分かり、さらなる高速化に向けてサムスン電子などが注力したのが「Gate All Around(ゲート・オール・アラウンド=まわりがゲートだらけ)」という新しい構造でした。▶︎一番右に描いた図で分かるように、ゲートの中に直径1ナノメートルほどの、極めて細いソースやドレイン「細線」が埋め込まれています。▶︎だから「まわりがゲートだらけ」となり、より低い動作電圧でも正確に作動するのです。ただ、導線の断面積が小さいので電流量が稼げない。▶︎そのマイナスを補うために細線が並列つなぎになっている。▶︎これがGAA構造と呼ばれるもので、実用に供する歩留まりで「ナノワイヤー」を製造する技術が求められます。▶︎そして、これらの技術が「🇯🇵日本にはない」。▶︎冒頭のNHKの報道だけでは、わけが分からないのは、こうした「ナノテクノロジー」の精密なアプリケーションの認識が一切ないまま、ただ単に「最先端」の何のと、意味の希薄な代理店的惹句を並べて終わっているからにほかなりません。▶︎また、プロでないと気付きにくいですがTSMC129日リリース(https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/07475/)ではFin-FETの構造で3nmスケールを実現したとしている。▶︎これは従来はできなかったのではないかという物質科学、材料物性の議論を無視した考えになります。▶︎量子細線は顕著な物性を持ち、高速で動作もしますが、何分扱いが面倒で歩留まりにも難しい面が考えられる。▶︎その点「Fin 背びれ」は十分枯れた技術になっており、側面積が広いだけでなく断面積も稼げるので、すでに実用に供している。▶︎Finでの3nmの背景には、知財としていまだ伏せられているのかもしれない物性物理の成果、量子力学的な効果が秘められている可能性も考えられます。▶︎という、こうしたモノづくりの全体を「2027年までに」「🇯🇵日本で」「実現」できるかと問われたとき、言えるのは、まず先進圏(この場合は🇹🇼台湾や🇰🇷韓国)から技術委譲を受けながら、それを活用できる「人材」活用の有無が、成否を分けると言えるでしょう。▶︎先に結論を記します。▶︎現在の🇯🇵日本の半導体モノづくりは、国策の変化に伴って20年にわたってシステムと人材、そして人材育成のスキームを完全に破壊、根絶やしにしてしまいました。▶︎歴史と伝統を誇るはずの旧帝大工学部電気電子工学科でも、もはやアナログ回路を教えなくなってしまった。▶︎カリキュラムは「データ・サイエンス」一辺倒。▶︎企業の求人ニーズはそちらにある、というのですが▶︎その実は、数年で使い物にならなくなる浅い統計応用、その表層を撫でさせただけで社会に送り出される学生の割合を増やしているだけ。▶︎いま、我が国で独自の集積回路を設計、実装できるしっかりした「ナノテクもの作り」の人材育成システムは、本家本元の大本山でも、少数の例外を除いて、現在はほとんど稼働していない状況なのです。▶︎単に「先進国」🇹🇼台湾・🇰🇷韓国に頼るのでなく、🇯🇵日本が半導体モノづくりで再生するか否かは、「人づくり」、2027年の新卒や現在10代・20代以下の若者をどう育ていかにしてモノ作りのプロとして世界で戦える学術技術戦力にブラッシュアップするかに掛かっている。▶︎それは2010年代までの目新しそうなスキーム(例外なく失敗し続けてきました)ではなく、本命再登場、保守本流「電子立国🇯🇵日本」の新たなオーソドキシーである必要があります。▶︎しかし、国内を改めて見渡せば、2009年以降、🇯🇵日本の高等学校では行列も複素数もまともに教えていないという亡国の人材欠乏の実態がある。▶︎高校で複素数を教えず、大学でも実数化したコンピューターの計算で間に合わせているから、かつてはアマチュア無線少年だって通暁した「複素関数論」は完全に学生たちの手に余り、演習のテストでは零点平野のほうき草。▶︎その複素関数論を駆使する交流理論など、LSI設計に必須不可欠な電子回路技術は「算数」のレベルから人材が払底し、🇯🇵日本は到底自前のチップを設計実装不可能になり、かつての「負うた子」🇰🇷韓国・🇹🇼台湾の後塵を完全に拝する立場まで零落し、人材面からの立て直しに見通しはありません。▶︎足腰が「弱い」のではない、自力で歩ける足がないのです▶︎超スローモーなカタツムリ、ナメクジ状態。そんな若い世代を作り続けてしまった「ゆとり以降」の教育制度「怪革」まさに国難と指摘せねばなりません。▶︎過去30年ほどの文科省初等中等局スタッフOBOGには深刻な反省を求めねばならないでしょう。▶︎この国難をいかにして乗り越えていくかについては、稿を改めて現実的な施策を考えてみたいと思います。▶︎モノづくり大国」として、戦後の焼け野原から2540年ほどで「🇯🇵ジャパン・アズ・ナンバーワン」と世界に讃嘆された「電子立国🇯🇵日本」を再生する上で、🇺🇦ウクライナ戦争の続く20222023年は最大で最後のチャンス、転機を迎えていると思います[*JBpress 2022.12.15付記事抜粋/文:伊東乾氏・作曲家、指揮者、ベルリン・ラオムムジーク・コレギウム芸術監督、東京大学ゲノムAI生命倫理コア研究統括]

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【新刊紹介】『出生数80万人割れの危機人口激減ニッポンが衰亡する前にすべき「たったひとつのこと」』


出生数が急減している人口減少日本で各業種・職種や公共サービスに何が起こるのか?▶︎実人数が減り消費量が落ち込む「ダブルの縮小」に見舞われるこの国は一体どうすればいいのか?▶︎累計95万部突破の『未来の年表』シリーズ最新作『未来の年表 業界大変化 瀬戸際の日本で起きること』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。


これから日本を襲う「ダブルの縮小」

🇯🇵日本が人口減少社会にあることは、誰もが知る「常識」である。▶︎だが、企業や政府・地方自治体(行政機関の「仕事の現場」に起きることを正しく理解している🇯🇵日本人は、いったいどれくらいいるだろうか?▶︎新型コロナウイルス感染症のパンデミックや、🇷🇺ロシアの🇺🇦ウクライナ侵攻によって、各国経済は大きなダメージを受けた。▶︎景気の波はあるし、社会経済を不安定にする出来事はたびたび起きる。▶︎いちいち数えたらきりがない。▶︎だが、こうした経済上の危機は大概、「時間」が解決してくれる。▶︎画期的な技術の登場に助けられることもある。▶︎政府などの支援も活用しながら、企業は独自の経営努力によって何とか乗り切るだろう。▶︎ところが、人口減少はそうはいかない。▶︎結婚や妊娠・出産に対する人々の価値観の変化がもたらした社会構造上の問題であり、政府の失政の結果や人為的に起こされたことではないからだ。▶︎多くの人々が「多産社会に戻そう」と価値観を変えることでもないかぎり、将来にわたってずっと減少は続く。▶︎仮に、価値観が変わったとしても、人口増加社会に戻るのは何十年も先のことだ。▶︎その間は人口減少の弊害が続く。▶︎人口問題とは、繰り返し起きる社会経済問題などとは異なり、🇯🇵日本社会に与えるインパクトが桁違いに大きいのだ。▶︎人口減少がビジネスに与える影響で即座に思いつくことといえば、マーケットの縮小や人手不足だ。▶︎🇯🇵日本は国内需要依存型の企業が多いだけに、とりわけマーケットの縮小は死活問題である。▶︎しかも、マーケットの縮小とは単に総人口が減るだけの話ではない。▶︎若い頃のようには消費しなくなる高齢消費者の割合が年々大きくなっているのである。▶︎今後の🇯🇵日本は、実人数が減る以上に消費量が落ち込む「ダブルの縮小」に見舞われるということだ。

現実逃避する経営者たち

しかしながら、こうした実態を知ってか知らでか、人口減少などどこ吹く風と言わんばかりに、どの業界でも大規模な事業計画が目白押しである。▶︎いまだに売上高の拡大を目指す経営者が少なくない。▶︎誤解していただきたくないが、企業経営者が足元の利益を確保することを批判しているのではない。▶︎マーケットが日々縮小、変質を続けている「現実」から逃避しているかのような経営判断・姿勢を危惧しているのである。▶︎このまま拡大路線を貫き、現状維持を模索していったならば、必ずどこかで行き詰まる。▶︎私は仕事柄、経営者の集まりに招待されることが多いが、時折「うちは海外との取引が大半なので、国内マーケットが縮小しても影響はない」と語る経営者とお会いする。▶︎だが、そうした企業だって国内に取引先を一切持たないわけではないだろう。▶︎人口減少の影響を受けない組織や個人は存在しない。

「戦略的に縮む」という成長モデル

では、🇯🇵日本が人口減少に打ち克つには、どうしたらいいのだろうか。▶︎答えは、経済成長が止まらないようにすることだ。▶︎成長が続きさえすれば、人口減少や少子高齢化は止められないとしても、これらによって引き起こされる弊害のかなりの部分は解決する。▶︎だが同時に、人口減少が🇯🇵日本経済の足を引っ張る主要因ともなっている。▶︎この大いなる矛盾を解決するには、マーケットが縮小しても成長するビジネスモデルへと転換することである。▶︎「言うのは簡単だが、そんな都合のいいビジネスモデルなどあるはずがない」との声が聞こえてきそうだ。▶︎もちろん魔法の杖などない。▶︎だが、🇯🇵日本は瀬戸際にあり、いずれにせよ過去の成功体験と決別せざるを得ない。▶︎発想さえ変えれば十分に可能だ。▶︎発想をどう変えるかといえば、各企業が成長分野を定め、集中的に投資や人材投入を行うことである。▶︎「戦略的に縮む」のだ。▶︎かなり思い切ったことをしなければ人口減少に押しつぶされてしまう。▶︎「戦略的に縮む」という成長モデルを実現するためには、いくつも手順を踏まなければならない。▶︎未来の年表 業界大変化』はそれを明らかにしていく。▶︎例えば、求められる要素として、他国の追随を許さぬ技術力やアイデアに富んだオリジナリティーがある。▶︎資源の乏しい🇯🇵日本は、人口が増えていた時代も独自性で勝負をかけ、成長の果実を手にしてきた。▶︎人口減少社会ではなおさらそうした力が求められる。▶︎「売上高」から、「利益高」へと経営目標をシフトさせることも不可避である。▶︎マーケットが縮小して売上高が減ったとしても利益高さえ伸ばせたならば企業は発展する。▶︎そうした企業を1つでも増やすことが日本経済の成長につながり、国民生活をこれまで以上に豊かにする。

未来を可視化し、勝ち筋を示す


未来の年表 業界大変化』は2部構成である。▶︎1部では、各業種やビジネスを支える公共サービスの現場で起きつつある課題を人口減少の観点で捉える。▶︎このまま対策を講じなかったならば各業界や職種において今後何が起きるのか、未来の可視化作業――いわば、ビジネス版の「未来の年表」だ。▶︎製品やサービスの利用者である国民の立場からすれば、暮らしを支えてくれる企業や仕事が今後どうなっていくのか知ることでもある。▶︎むろん各企業・行政機関は固別の課題を抱え、人口減少だけでは説明できない難題も多い。▶︎だが、もはや人口減少の影響を織り込まない政策や事業計画は意味をなさない。▶︎そうである以上、人口減少のもたらす弊害を可視化することに意味があろう。▶︎そこから企業や行政機関が真に進むべき方向性が見えてくる。▶︎2部では、「戦略的に縮む」という成長モデルの手順を深掘りし、「未来のトリセツ」(10のステップ)として具体的にお示ししようと思う。▶︎人口減少下における企業の勝ち残り策として提言したい。▶︎特に重要なのは2つだ。▶︎1つは、先にも触れたが、各企業・行政機関が事業をスリム化し得意分野に資本や人材などを集中投入することである。▶︎消費者数も勤労世代も減っていくのだから、すべてを人口が増えていた時代のようにやろうとすることには無理がある。▶︎とりわけ各企業は得意分野に磨きをかけ、これまで以上に競争力をつけていかなければならない。▶︎そうすることで、自ずと海外でも道が開ける。▶︎もう1つは、従業員・職員個々のスキルアップを図り、労働生産性を向上させることだ。▶︎人手が減っていく分は、一人一人が"稼ぐ力"を強化し、労働時間を充実させることでカバーするしかない。▶︎同時に働き手の貴重な時間を奪う"無駄な会議"などを無くす必要もある。▶︎ベストセラーとなった私の代表作『未来の年表』では、少子高齢化や人口減少がもたらす巨大な危機について、いつ何が起こるのかを「人口減少カレンダー」として体系的にお示しした。▶︎「カレンダー」の内容を「現実」が次々と追いかけてきている。▶︎2018年には75歳以上人口が6574歳人口を上回り、2020年には女性人口の過半数が50歳以上となった。▶︎人口の未来というのはほぼ外れることはない。▶︎だが、私が必死にデータ収集と分析を繰り返し、「人口減少カレンダー」の完成度を高めたとしても、人々の意識や行動が変わらなければ何の意味もない。▶︎瀬戸際の🇯🇵日本を衰退の道への転落から守り切れるかどうかは、われわれ一人一人にかかっている。▶︎拙著『未来の年表』は、人口減少を「静かなる有事」と名付けた。▶︎戦争や自然災害など目に見える危機とは異なり、じわじわと🇯🇵日本社会を蝕むからである。▶︎その変化に気づいたときにはすでに手遅れである。▶︎そうしないためにも、ビジネスモデルの転換だけでなく、あらゆる社会システムを一刻も早く人口減少に耐え得るものへと作り替えなければならない。▶︎未来の年表 業界大変化』が、人口減少社会を乗り越えるための道筋を示すものとならんことを切に願う[*現代ビジネス 2022.12.15付記事抜粋/文:河合雅司氏・ジャーナリスト]

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【掲載日】20221215日(木)