【盛者必衰・ビッグテックの落日〜新たなパラダイムシフトを探すためのヒント vol.3


YouTubeTwitterNetflix…大手のビジネスモデルが完全崩壊ネットがお金を払って広告を見る時代に突入するこれだけの理由』


YouTubeをつけるとCM15秒間スキップできず、やっとスキップを押したと思ったら2本目が始まる。▶︎1日で最もイラっとする瞬間かもしれない。▶︎プレミアム登録をすればYouTubeの広告を避けられるが、最近ではNetflixが「広告付き月額790円プラン」を打ち出すなど、あらゆるところに広告が進出してきているようにさえ見える。▶︎しかし実は、今起きているのは実は真逆のことである。▶︎Twitterを買収したイーロン・マスクの苛烈なリストラやメタ、AmazonGoogleの人員規模縮小の動きはすべて『無料でどうぞ、でも代わりにCMを見てくださいね』という広告モデルの破綻から始まっている。▶︎私たちはこれからも広告を見せられ続けるのか、それとも月額の支払いが必要になるのか、それともお金を払った上で広告を見るという状況に追いやられるのだろうか……

「広告を見る代わりに無料で楽しめる」時代は終わった

インターネットサービスは広告を見る代わりに無料で楽しめるもの、という牧歌的な世界観は崩れた。▶︎その背景には、行動履歴を大量に蓄積して利用者の性質に合わせて最適な広告を出すという大手プラットフォームによるターゲティング広告の限界が2つの点で明らかになっている。▶︎1つめはターゲティングの精度が限り無く高まった結果、競合に勝る認知の獲得のためには結局従来のテレビCMのようなマスメディア広告との組み合わせが不可欠になったこと。▶︎ターゲティングを行うのはもう当たり前で、それだけでは広告の効果が十分に出なくなってしまっている。▶︎もう1つはユーザーの嗜好が細分化し、SNS上でもその好みに応じたコンテンツを積極的に表示するアルゴリズムの精度が上がった結果、コミュニティの分断が起こったことだ。▶︎ターゲティングを正確に行おうとすると、あらゆる広告クリエイティブの種類が求められる傾向が強まっている。▶︎結局、細分化されたターゲットに対して広告のバリエーションを際限なく準備するには莫大なコストが掛かるので、マスメディア型の広告を大量投下し認知度を上げる手法に回帰しつつある。▶︎YouTubeを無料で利用しようとすると頻繁に、さほど最適化されているとも思えない広告を「見せられる」のはそのためだ。


インターネット広告を巡るプラットフォームの「変質」が最も如実に表れたのがTwitterだ。▶︎世界でMAU33300万人を擁するTwitterは、スタート以来利益がほとんど上がらず累積赤字が積み上がっていた。

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【用語解説】

◉『MAU』=MAUMonthly Active Usersの略。 Webサイトやアプリ、各種オンラインサービスで、特定の月に1回以上利用や活動があったユーザーの数。 ユーザーの利用実態を把握するために使われる指標。 同様に特定の日の利用実態を把握する指標としてDAUDaily Active Users)がある。

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先に挙げた2つの要因に加え、先の🇺🇸アメリカ大統領選挙で起こったようなデマやヘイト投稿を繰り返すアカウントが大量に登場するなど政治的な分断とそれを巡る混乱が可視化されることでメディアとしての信頼性が高まらず、広告主にとってメリットよりもリスクの方が大きいメディアという印象が強まった。▶︎Twitterはそれを引き起こしていると見られるアカウントを大量に凍結・排除することでその改善を図ろうとしたが、人的リソースが際限なく必要な上に、誤認によると見られる処置も相次ぎ、今度はユーザーの満足度が下がるというジレンマに陥っていた


Twitterはイーロン・マスクによる買収を契機に、ビジネスモデルを広告から認証アカウントの有償化によるユーザー課金型に転換を図ることで、このジレンマから脱しようとしているが、これが成功するかどうかは不透明だ。▶︎凍結されていたトランプ大統領のアカウントを自身のアカウントでのアンケート結果のみで復活させるなど、拙速なマスク氏の姿勢にも疑問が投げかけられている。

Netflixはテレビに取って代わる存在にはならない?


メタの運営するFacebookは広告ビジネスモデルの限界を、メタバースへの領域の拡大によって打破しようとしたがこれも現時点では上手く行っていない。▶︎このように広告に頼り切っていたインターネットサービスが転換点を迎えていることは間違いなく、以前のようにユーザー数を増やせば、自動的に広告収益が上がる好循環に回帰することはもはやない。▶︎そんな中、Netflixが広告付きの割安な視聴プランを用意したことにも注目が集まった。▶︎CM放送で利益を挙げているテレビの牙城を崩すことになるのではないか」という見立てもあるが、これは間違いだ。▶︎ITジャーナリストやコンテンツビジネスの有識者の間でも世界的な会員数の減少(Netflixショック)を受けて行った、株主向けのアピールに過ぎない、という見立てが一般的なのだ。▶︎なぜNetflixCMメディアの王様たるテレビに取って代わるような存在にならないのか?▶︎ここまで述べてきたように、インターネットサービスにおける広告市場の成長は限界を迎えている。

また、Microsoftと提携して広告の調達を図るとするNetflixだが、視聴履歴に基づく広告表示の最適化を図ったところでYouTube以上のパフォーマンスを出せるのかには疑問が残る。▶︎Netflixの苦境は🇯🇵日本でより顕著だ。▶︎国内の映像サブスクの利用状況はAmazonプライムビデオが他を圧倒している。▶︎Netflixは「オリジナル」と呼ばれる一定期間世界で独占配信を前提とした作品の調達に力を入れており、🇯🇵日本においてはアニメスタジオとの連携も図ってきたが、人気ランキングの上位になるのは稀だった。▶︎この部分でも会員数減少を受けた戦略の見直しは避けられそうにない。▶︎広告視聴モデルで多少利用料が安くなったとしても、見かけ上、映像視聴に対して直接の対価が発生していないAmazonプライムからユーザーを奪うのは難しい。▶︎コロナ禍により世界規模での想定外の巨大な巣ごもり需要が生まれ、それはインターネットサービスの現時点での利益の限界点を示した。

国内でも2020年にネット利用時間が全年代でテレビ(リアルタイム視聴)を抜き更なる伸びを見せたが、コロナ禍が落ち着きを見せる中、天井を迎えたことが各種調査からも見て取れる。▶︎市場がポストコロナモードに移行するなか、各サービスは広告だけに依存しない方向への戦略の見直しを余儀なくされている。▶︎わたしたちの生活にはどのような影響が出るのか、どうそれに備えれば良いのか気になるところだ。

1カ月で広告を見る時間は9000円相当?

ITサービス側が取る手立ては、マスク氏のTwitterが認証アカウントへの課金を急いだように、私たち顧客(コンシューマ)に直接課金する方向しかない。▶︎もしそれを嫌うなら、YouTubeが既にそうなりはじめているように延々と広告を見続けることになる。


ある調査では、20代の19%が1日「3時間」もYouTubeを見ている、という結果も出ている。▶︎仮に5分の動画に6秒のバンパー広告を5=30秒見るとすれば、1時間あたり360=6分間、3時間なら18分間CMを見ることになる。▶︎これを1カ月続ければ540=9時間。▶︎時給1000円換算なら9000円分となる。▶︎まだここまで大量のCMが挿入されてはいないが、時間対費用のパフォーマンスを考えれば、CM無しで視聴可能となり、動画のダウンロードもできるYouTubeプレミアム1180円は割安に見えてこないだろうか?▶︎一方、海外では「OTTダイエット」という言葉も聞かれるようになった。▶︎OTT=オーバーザトップとは、動画などコンテンツ配信系のサービス全般を指す▶︎11つは月額数百円~千円前後と大きな負担ではないが、それが積み上がると家計への負担は無視できないものとなる。▶︎コンテンツの重複もあるなか、できるだけ契約数を絞り込むことが家計の防衛策となるというわけだ。


実際、動画サービスの利用状況を見ても1年に12サービスしか利用しない人が全体の9割を占める。▶︎サービスを絞り込む傾向は、円安・物価高を受けて更に強まっていくはずだ。▶︎ITジャーナリストの西田宗千佳氏は対策として「たとえ割安であっても、1つのサービスに縛られることになる年間一括契約は避けるべきだ」と指摘する。▶︎独占タイトルなどその都度利用したいコンテンツに応じて契約サービスを切り替えた方が、結局コスパが良いというわけだ。▶︎インターネットサービスの利用が広告によってほぼ無料であった時代は終わり、対価を求められる場面は動画以外でも増えてくるはずだ。▶︎サービスの取捨選択、契約形態について賢さが求められていくことになる[*文春オンライン 2022.12.08付記事抜粋/まつもとあつし氏・Webライター]

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【掲載日】2022128日(木)