【東京五輪(パクリんピック)の闇〜地検特捜部利権疑獄解明への挑戦vol.57


『古巣、学閥事件の背景に複雑な「高橋人脈」』


東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件では、捜査の進展とともに、大会組織委員会元理事の高橋治之被告78)=受託収賄罪で4回起訴=を〝交差点〟とする複雑な人間関係が浮かび上がった。▶︎幅広い人脈を背景に、五輪を巡る前代未聞の疑獄は5ルートにまで広がった。

 電話で呼び出し


「森さん、呼んでみようか」。▶︎関係者によると、平成272015)年10月、組織委理事だった高橋被告は東京都内の料亭で会食中、同席していた広告会社「ADKホールディングス」前社長の植野伸一被告68)=贈賄罪で起訴=や同社元幹部、久松茂治被告63)=同=にこう話すと、携帯電話を操作し始めた。▶︎しばらくして料亭に現れたのは当時、組織委の会長だった森喜朗元首相85)。▶︎10分程度、顔を出すと、その場を去った。▶︎高橋被告森氏とも昵懇(じっこん)なのだと思った。▶︎電話で呼べるとは驚いた」。▶︎久松被告は、特捜部の調べにそう語ったという。▶︎その後の平成302018)年3月、植野被告は都内の飲食店で再び高橋被告と向き合った。▶︎関係者によると、同席していたADKの社外取締役だった男性は、特捜部の調べに「会合で植野被告が『1社くらい紹介してください』と発言し、高橋被告が『分かった』と応じていた」と供述したという。▶︎贈収賄事件では贈賄側が何を依頼し、収賄側がどう応えたかの立証が求められる。▶︎特捜部は、この会合が植野被告自身も高橋被告に依頼(請託)をした場面の一つとみているもようだ。▶︎また特捜部は、ADKの現場レベルで送受信されたメールも押収。▶︎五輪事業に関し、高橋被告に相談することを検討していた内容が含まれているといい、客観証拠の一つに位置付けているとみられる。

◆多彩な交友関係利用


他のルートでも、高橋被告は自身の「力の源泉」である交友関係をフル活用した。▶︎紳士服大手「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲(ひろのり)被告84)=同=や出版大手「KADOKAWA」前会長の角川歴彦(つぐひこ)被告79)=同=らと行った会合にも、森氏が同席することがあった。▶︎幼稚舎から大学まで過ごした「慶応」も、高橋被告に欠かせないものだった。▶︎組織委の副会長を務めた日本オリンピック委員会(JOC)前会長、竹田恒和氏75)は、慶応幼稚舎からの後輩。▶︎高橋被告が理事就任前の平成252013)年11月、植野被告と初めて会食の場を持った際、竹田氏も顔を出していたという。▶︎玩具会社「サン・アロー」元社長の関口芳弘被告74)=贈賄罪で在宅起訴、賄賂の受け皿となったコンサルティング会社「アミューズ」(解散)元代表取締役の松井譲二被告75)=収賄罪で在宅起訴=も、慶応大竹田氏の同級生に当たる。▶︎そして、専務まで務めた広告大手「電通」。▶︎高橋被告が働きかけをしたとされる組織委の幹部も、電通からの出向者で後輩。▶︎アミューズと同じく受け皿の役割を果たしたコンサル会社「コモンズ2」元代表の深見和政被告73)=受託収賄罪で起訴=も、電通の雑誌局長だった。▶︎検察関係者は「高橋被告は(贈賄側に便宜を図るのに)森氏らの力を必要としていない。▶︎今回の事件は高橋被告の事件だ」と話した[*産経新聞 2022.11.09付記事抜粋]

『五輪テスト大会で談合か電通など落札、特捜部と公取委が捜査』


東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会が発注した、各競技のテスト大会をめぐる業務の入札で、談合による受注調整が行われた疑いがあることが、関係者への取材で分かった。▶︎最大手の「電通」を含む広告会社などが落札していた。▶︎東京地検特捜部は、独占禁止法違反(不当な取引制限)にあたる可能性があるとみて、公正取引委員会と連携して調べている。▶︎組織委は、各競技の進行や警備態勢を実際の競技場で確認するテスト大会について、実施計画の立案などを委託する業務を発注。▶︎201858月に、12の会場ずつ計26件の入札を行った。

9社と1共同企業体が落札

入札は技術と価格を総合評価する方式で、電通を含む広告会社など9社と、共同企業体一つが落札した。▶︎契約額は約6千万~約400万円で、計約54千万円だった。▶︎関係者によると、一連の入札をめぐり、業者間で受注調整が行われた疑いがあるという。▶︎テスト大会は26件の入札に基づいて、20182021年に56回開かれた。▶︎計画の立案業務を落札した業者らは、テスト大会の実施や本大会の競技運営も担当した。▶︎これらは入札を伴わない随意契約で、1件あたり十数億円の業務もあった。▶︎特捜部は、大会スポンサーの選定などをめぐる汚職事件で、組織委の元理事・高橋治之被告78)を受託収賄罪で4回起訴した。▶︎関係者によると、テスト大会の計画業務をめぐる談合疑惑は汚職事件の捜査で浮上。▶︎大会運営を主導した電通のほか、汚職事件で贈賄側として逮捕者を出した広告大手の「ADKホールディングス」と「大広」も落札者になっていた。▶︎特捜部は独禁法を運用する公取委と連携し、さらに実態解明を進める[*朝日新聞 2022.11.21付記事抜粋]

『電通頼りがあだに求められる「裏レガシー」との決別』


東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件は、大会組織委員会がスポンサー集めを電通に依存したことがあだになった。▶︎五輪史上最高のスポンサー収入を達成した一方、スポンサー企業だけでなく電通と競合する他の広告代理店も「電通スポーツ局のレジェンド」だった大会組織委員会元理事の高橋治之被告78)とのつながりを求め、不正を許す温床となった。▶︎世界的スポーツイベントを次々に手がけてきた電通が組織委の「マーケティング専任代理店」に選ばれたのは、組織委発足から3カ月後の平成262014)年4月。▶︎組織委に多数の職員を出向させてスポンサー選定など組織委の収益事業に深く関与し、五輪史上最高額となる3761億円を集めた電通だが、その中心にいたのがOBの高橋被告だった。▶︎AOKIKADOKAWAといったスポンサー企業以外に、競合他社のはずのADK大広といった広告代理店も「高橋詣で」を繰り返した。▶︎「多くのスポンサーは電通が自力で集めたが、高橋被告ありきの場面は確かにあった」。▶︎組織委関係者はそう明かす。▶︎大広ルートでは、大広が販売協力代理店として最終的に参画した語学サービス系企業(ECC)とのスポンサー交渉に高橋被告自身が乗り出し、企業トップと直に交渉。▶︎電通との間で一度決裂していた契約をまとめ直した。▶︎ADKルートでは、駐車場サービス「パーク24」のスポンサー契約に関し、ADKが実際に業務をしていないにもかかわらず、電通からADKに販売協力代理店として業務委託費を支払うよう、電通側に働きかけたとされる。▶︎広告関係者によると、こうした実態を伴わない取引は、一つの案件を複数の代理店間で分け合う「まわし」と呼ばれる業界の慣習だ。▶︎高橋被告がみなし公務員でなければ普通の商行為」(広告会社幹部)とする声もあるが、密室で決まり、やり取りされた資金の一部が賄賂と認定された。▶︎JOC関係者は「スポーツ界が電通に頼り切ってきた裏のレガシーも表に出して断ち切らなければ、冬季五輪招致を目指す札幌でも過ちを繰り返すことになる」と話した[*産経新聞 2022.11.09付記事抜粋]

▶️スポンサーを巻き込んだ高橋ルートにせよ、テスト大会談合疑惑にせよ、もれなく名前が上がる電通。その独占的利権構造を可能にした影には、政治家が暗躍しているとは容易に想像が付く。東京地検特捜部は、金メダル獲得を目指して、電通と政界の闇にメスを入れて欲しい〆

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【掲載日時】20221121日(月)