【第三次世界大戦への火種〜🇷🇺ロシア・🇺🇦ウクライナ関連ニュースvol.100】
■『「こんなにうまくプーチンが引っかかるとは」…🇺🇦ウクライナ戦争を🇺🇸アメリカが引き起こしたといえる残念な証拠【後編】』
【前編からの続き】
◆「自分が100%正しい」という政治思想は破滅を産む
【中島】保守はこの懐疑の念を自分自身にも向けます。▶︎自分もまた間違えやすい人間だとするなら、自分と異なる意見を持った他者の話にも耳を傾けてみようということになる。▶︎そして、他者の話に理があれば、そこで合意形成をしていく。▶︎自己に対する懐疑が他者への寛容につながるのです。▶︎極端で偏った考え方は、必ず🇫🇷フランス革命のような結果をもたらします。▶︎バイデンが現在のような対🇷🇺ロ政策を続けていれば、🇺🇦ウクライナはこれまで以上に悲惨な状況に陥る恐れがあります。▶︎今回の戦争で私が本当にショックだったのは、私と同世代から少し上で、個人的にもよく知っている🇯🇵日本の国際政治学者たちが、バイデン政権の主張をオウム返しのように述べ続けていることです。▶︎彼らは🇺🇸アメリカの責任を指摘している人を見つけようものなら、「🇷🇺ロシアを擁護するつもりか」などとバッシングを浴びせています。▶︎完全にネオコンの論理にとらわれてしまっています。
◆🇷🇺ロシアを批判する🇯🇵日本の保守派は矛盾していないか
【中島】また、🇯🇵日本の国際政治学者の中には、🇺🇦ウクライナ戦争が🇺🇸アメリカと🇷🇺ロシアの「代理戦争」であると指摘すると、強く反発する人たちもいます。▶︎彼らがいうには、この戦争は🇷🇺ロシアから一方的に侵攻された🇺🇦ウクライナが反撃を試み、🇺🇸アメリカがそれを支援しているだけで、🇺🇸🇷🇺米ロの代理戦争という見方は🇺🇦ウクライナの主体性を無視している、ということになるようです。▶︎しかし、ミアシャイマーが指摘するように、この戦争はNATOの東方拡大を抜きには語れません。
[ミアシャイマー氏]
むしろ🇺🇸アメリカというファクターを無視する方が非現実的です。▶︎もう一つ付け加えると、🇯🇵日本のいわゆる保守派の多くは、🇷🇺ロシアを批判し、🇺🇦ウクライナを応援していますが、ここにもねじれがあります。▶︎というのも、彼らはその一方で、🇯🇵🇺🇸日米戦争の開戦プロセスは🇺🇸アメリカに非があり、🇯🇵日本にも正義があったと主張しているからです。▶︎そうであれば、プーチンがなぜ戦争に踏み切ったのかにも目を向けるべきです。▶︎🇯🇵🇺🇸日米戦争を肯定しつつ、プーチンのいい分を全否定するのは矛盾といわざるをえません。
【東郷】最近、🇯🇵日本の若手の学者の方々はよくテレビに出演されていますね。▶︎みんな優れた知性の持ち主で、私も彼らの話を聞いて大変勉強になっています。▶︎しかし、中島さんがご指摘されたように、彼らはネオコンの論理にとらわれ、ネオコンのルソフォビア(ロシア嫌悪症)すらそのまま受け入れているように見えます。▶︎とにかくプーチンを打倒することしか考えていないのではないでしょうか。
◆「プーチン打倒」だけではウクライナの人々を救えない
【東郷】しかし、そうした考え方をしている限り、戦争は終わりません。▶︎彼らの🇺🇦ウクライナを助けたいという気持ちに嘘偽りはないと思いますが、それは結果としてさらに多くの犠牲を生み出すと思います。
【中島】現在の🇯🇵日本政府も🇺🇸アメリカ一辺倒で、ネオコンと同じような対応をとっています。▶︎岸田政権はこれまでの方針を転換し、対🇷🇺ロ強硬路線に舵を切りました。▶︎ここまで特定の国との関係をバッサリ切り捨てた例はほとんどないと思います。
【東郷】そうですね。▶︎🇯🇵日本の外交史に残る出来事だと思います。▶︎通常、こういうときは外務省から反対意見があがるものです。▶︎実際、他の国ではそういう動きが見られます。▶︎6月8日のニューヨーク・タイムズには、🇺🇸アメリカの諜報(ちょうほう)機関が🇺🇦ウクライナ側から軍事戦略や戦況について十分な情報提供がなされていないことに不満を持っているという記事が掲載されています。▶︎これは明らかに政権内からのリークです。▶︎バイデン政権の中に対🇷🇺ロ強硬路線を続けることに疑問を持つ人がいるということです。▶︎ところが、🇯🇵日本ではこうした動きはまったく見られません。▶︎大変残念ですが、いまの外務省はとにかくバイデンの方針に従うことしか考えていないように見えます。
◆🇯🇵日本の外交は取り返しのつかないことをしている
【東郷】もう一つ重大な問題は、バイデン政権の対🇷🇺ロ政策が結果的に中国の台頭を招いているということです。▶︎🇺🇸アメリカは🇷🇺ロシアに多くの力を割くようになったことで、🇨🇳中国にプレッシャーをかける余裕がなくなりました。▶︎それによって🇨🇳中国はフリーハンドを手にし、🇺🇸アメリカとの関係において立場を強めています。▶︎また、🇷🇺ロシアが🇨🇳中国を全面的に頼るようになったことも大きいと思います。▶︎🇨🇳中国は何もしていないのに、漁夫の利を得たのです。▶︎これは🇯🇵日本にとっても深刻な問題です。▶︎🇯🇵日本は台頭する🇨🇳中国とどう対峙(たいじ)すべきなのか。▶︎まず何よりも重要なのは「抑止と対話」です。▶︎🇯🇵🇺🇸日米同盟を強化するとともに防衛力を高めつつ、🇨🇳中国との対話を重ねていく必要があります。▶︎それと同時に、🇯🇵日本外交が主戦場とすべき北東アジアでできるだけ味方を増やす、少なくとも敵をつくらないことが大切です。▶︎その対象となる国は🇷🇺ロシアと🇰🇷韓国しかありません。▶︎しかし、🇷🇺ロシアは🇺🇦ウクライナ戦争の結果、🇯🇵日本を非友好国ないし敵対国と位置づける可能性があります。▶︎また、🇯🇵日本は🇰🇷韓国と安全保障上の利益を共有しているといっていますが、植民地問題に関して和解へと動き出す様子はありません。▶︎🇯🇵日本は大切にすべき二つの国に対して、取り返しのつかないことをしているのではないでしょうか。
◆今こそ🇮🇳インド外交に学ぶべき
【中島】私は政治家の大平正芳を尊敬しているのですが、大平は総理時代、「環太平洋連帯構想」を提唱しました。▶︎これは🇺🇸🇨🇳米中のどちらか一方を選ぶのではなく、🇺🇸🇨🇳米中の間の均衡点を見極めつつ、環太平洋という枠組みの中で🇨🇳中国をソフトランディングさせていくという考え方です。▶︎この背景には、大平が重視した「楕円(だえん)」の思想があります。▶︎楕円形のように二つの中心があり、それらが均衡を保ちつつ緊張した関係を維持していれば、一つの正義を盲目的に信じることはなくなります。▶︎これによって無謬性にとらわれることを回避しているわけです。▶︎これはまさに保守思想のエッセンスです。▶︎私は現在の🇷🇺ロシアや🇨🇳中国に対しても、こうした姿勢で臨むべきだと考えています。▶︎🇺🇸アメリカとの関係を大切にしつつ、🇨🇳中国や🇷🇺ロシアともしっかり付き合い、彼らの覇権主義の牙を抜いていく。▶︎これは理想論ではありません。▶︎実際に🇮🇳インドがそうした外交を行っています。▶︎彼らは🇺🇸アメリカや🇯🇵日本と友好関係を維持する一方、🇷🇺ロシアとも付き合っています。▶︎🇯🇵日本はいまこそ🇮🇳インド外交に学ぶべきです。
◆戦争を終わらせるために何が必要か
【東郷】最後に🇺🇦ウクライナ戦争をどうやって終結させるかについて議論したいと思います。▶︎冒頭で述べたように、欧米にはわずかとはいえ停戦を求める動きがあります。▶︎特にヨーロッパは和平を模索しているように見えます。▶︎6月16日に🇫🇷フランスのマクロン大統領と🇩🇪ドイツのショルツ首相、🇮🇹イタリアのドラギ首相(当時)がゼレンスキーと会談し、🇺🇦ウクライナが🇪🇺EUの加盟候補国になることを支持しました。▶︎これは対🇷🇺ロ強硬路線の延長のように見えますが、実際に🇺🇦ウクライナが🇪🇺EUに加盟するには🇷🇺ロシアとの和平が必要なので、そのための布石を打ったとの見方があります。▶︎しかし、🇺🇦ウクライナへの武器提供の流れが止まったわけではありません。▶︎6月15日には🇺🇸アメリカ主導で🇺🇦ウクライナへの軍事支援について話し合う会合が開催され、NATO加盟国などおよそ50カ国が参加しました。▶︎6月17日には🇬🇧イギリスのジョンソン首相(当時)がゼレンスキーと会談し、武器の提供や、🇬🇧イギリスが🇺🇦ウクライナ兵に軍事訓練することを提案しています。▶︎やはりアングロサクソンは戦争をやめるつもりはないようです。
◆事態打開のカギを握るのはやはりバイデン大統領
【東郷】ミアシャイマーは6月16日に🇪🇺欧州大学院(EUI)で講演し、「🇺🇦ウクライナ戦争は多重的惨事であり、予見できる将来、状況はさらに悪化する」と述べています。▶︎この見方は正しいと思います。▶︎実際、10月8日には🇷🇺ロシア本土とクリミアを結ぶクリミア大橋が爆破されました。▶︎また、🇺🇦ウクライナは、🇱🇹リトアニアが自国の領土を通って🇷🇺ロシアが制裁対象の物資をカリーニングラードに輸送することを禁じました。▶︎🇺🇸🇷🇺米ロの政治に影響力を持つドミトリー・サイムズは6月21日に🇺🇸アメリカの雑誌『ナショナル・インタレスト』で、これは1948年にソ連が西ベルリンと西ドイツをつなぐすべての陸上交通を遮断したことに似ているとして、プーチンは当時の🇺🇸アメリカと同じように激しい反応に出るだろうと強く警告しています。▶︎事態打開のカギを握るのは、やはりバイデンです。▶︎バイデンがゼレンスキーに「これ以上戦争を続け、被害を拡大してはならない。▶︎🇺🇸アメリカの武器援助には限界がある。▶︎失われていく🇺🇦ウクライナ人の命のことを考え、どこまで領土を保全すべきか見極めてほしい」といわなければなりません。▶︎もしゼレンスキーが自ら停戦を決断すれば、そのとき彼は本当に偉大な大統領になると思います。▶︎バイデンとゼレンスキーにそこまで踏み込む勇気がないとすれば、戦争は拡大され、無数の命が失われることになります。暗澹たる思いです。
◆3国がそれぞれ相手に譲る姿勢を持たなければ
【東郷】かつて🇯🇵日本が戦争終結にあたって連合国からポツダム宣言を提示されたときも、大変な苦労がありました。▶︎🇯🇵日本は国体の護持、すなわち皇室の安泰が棄損されないことを条件にポツダム宣言を受諾すると連合国に伝えます。▶︎これに対して、連合国側は「🇯🇵日本国の最終的な政治形態は🇯🇵日本国国民の自由に表明する意思によって決定する」と回答しました。▶︎そこで🇯🇵日本は、🇯🇵日本国民が自由に意思表明をすれば必ず国体の護持を願うはずだと考え、ポツダム宣言受諾を決定したのです。▶︎もしこのとき連合国が皇室の廃止を通告していたら、🇯🇵日本は戦争を継続していたと思います。▶︎🇺🇸アメリカもそれがわかっていたから、🇯🇵日本に対して譲歩し、🇯🇵日本が何とか受け入れられるような条件を提示したのです。▶︎自分の主張を100%相手に飲ませようとするのは、外交ではありません。▶︎🇺🇸アメリカと🇺🇦ウクライナ、そして🇷🇺ロシアがそれぞれ相手に譲る姿勢を持つことが必須です。
【中島】山本七平は『「空気」の研究』で、🇯🇵日本が無謀な戦争に突入した原因を「空気の支配」に見出しました。
「戦争するのが当然だ」という空気がつくられた結果、いかに非合理的な決定がなされても、「それはおかしい」と口にすることができなくなってしまったのです。▶︎現在のように🇷🇺ロシアを打ち負かすべきだという空気が支配的な中で、🇷🇺ロシアとの停戦交渉に乗り出すのは非常に大変です。▶︎しかし、これ以上犠牲を増やさないためにも、停戦が必要であることは間違いありません。▶︎私も友人や先輩との良好な関係を失う覚悟で、停戦を訴えていきたいと思います[*PRESIDENT Online 2022.11.09付記事抜粋/文:東郷和彦氏・静岡県立大学グローバル地域センター客員教授/中島岳志氏・東京工業大学教授、政治学者]
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【掲載日時】2022年11月9日(水)






