【東京五輪(パクリんピック)の闇〜地検特捜部利権疑獄解明への挑戦vol.46】
■『AOKI側12月22日初公判…五輪汚職、前会長ら3人―東京地裁』
東京五輪・パラリンピックを巡る汚職事件で、大会組織委員会元理事、高橋治之容疑者(78)=受託収賄容疑で再逮捕=に対する贈賄罪で起訴された紳士服大手AOKIホールディングス前会長、青木拡憲被告(84)ら3人について、東京地裁(安永健次裁判長)は11月8日までに、初公判の期日を12月22日に指定した。▶︎これまでに出版大手KADOKAWA、広告大手・大広が絡む事件を含めて計9人が起訴されており、公判期日が指定されるのは初めて[*時事通信 2022.11.08付記事抜粋]
■『東京五輪招致の買収疑惑で高橋治之氏の実名報道に及び腰だったスポンサー新聞社』
2021年夏に開催された東京五輪のスポンサー選定をめぐり、東京地検特捜部は2022年8月17日、東京五輪大会組織委員会(大会組織委)の元理事の高橋治之氏を受託収賄容疑で逮捕した。▶︎2022年10月末時点までに明るみに出た東京五輪にまつわる高橋氏の問題は大きく分けて2点ある。▶︎一つが先に述べた東京五輪スポンサー選定の疑惑・事件である。▶︎もう一つが、🇫🇷フランス検察当局が捜査を進める東京五輪招致段階での買収疑惑(以下、五輪招致疑惑)である。▶︎いずれも現時点(2022年10月末現在)で現在進行形だが、国際的な政治経済事件が後者の五輪招致疑惑である。▶︎報道メディアでは通常、逮捕、あるいは起訴を境にしてその前を「疑惑」、その後を「事件」と表記する。▶︎このため、本稿では高橋氏の逮捕前を「五輪スポンサー選定疑惑」、逮捕後を「五輪スポンサー選定事件」と表記する。▶︎そこで今回は五輪スポンサー新聞4社の五輪招致疑惑に関する実名報道の傾向を定量的に検証する。▶︎このため、新聞社ぞれぞれの記事アーカイブを利用して、「高橋治之」というキーワード検索を実施した。▶︎検索対象は各新聞社本紙の朝刊と夕刊に掲載された記事の見出しと本文、検索期間は記事アーカイブ開始時から高橋氏逮捕翌日の2022年8月18日までとした。▶︎ここで、各新聞社の大会組織委との利害関係と取材報道の主体性に着目し、各新聞社の五輪スポンサー契約終了時点と大会組織委の解散時点、そして高橋氏逮捕時点に焦点を当てた。
◆「高橋治之」の名は何度報道されたのか
五輪スポンサー新聞4社(朝日新聞社、読売新聞社東京本社、毎日新聞社、日本経済新聞社)のスポンサー契約終了は2021年12月31日、大会組織委が解散したのは2022年6月30日、そして高橋氏逮捕は2022年8月17日である。▶︎これらに焦点を当てて、調査期間を以下に設定した。▶︎まず、五輪スポンサー新聞4社と大会組織委とのスポンサー契約以前(2016年1月21日まで)を第1期、スポンサー契約期間中(2016年1月22日〜21年12月31日)を第2期、スポンサー契約終了後から大会組織委解散まで(2022年1月1日〜2022年6月30日)を第3期、大会組織委解散後から高橋氏逮捕当日まで(2022年7月1日〜2022年8月17日)を第4期、高橋氏逮捕翌日(2022年8月18日)を第5期とした。▶︎第1期では五輪スポンサー新聞4社と大会組織委が直接的な利害関係はなかった。▶︎また、五輪招致疑惑や五輪スポンサー事件が発覚前の期間である。▶︎第2期は大会組織委との間に利害関係があるため、スポンサー新聞4社は大会組織委を批判しにくい時期だと考えられる。▶︎第3期をスポンサー契約終了時から大会組織委の解散時までとしたのは、契約終了後であっても間接的な利害関係が残存する可能性があるためである。▶︎第2期と同様、スポンサー新聞4社は大会組織委を批判しにくい時期だと考えられる。▶︎第4期は大会組織委解散後である。▶︎この時期は取材対象である大会組織委自体が消滅しており、その内部文書の廃棄・隠蔽の可能性があり取材が困難になる。▶︎同時に、スポンサー新聞4社にとっては利害関係があった大会組織委が存在しないため、大会組織委への批判もしやすくなる。▶︎第5期は高橋氏逮捕翌日のみに設定した。▶︎これは、松本サリン事件報道など過去の事例からすると、逮捕を境に容疑者がスケープゴートにされ、真偽定かでない情報も含めた集団的過熱報道に陥り、大量の記事が出稿されやすいためである。▶︎本稿ではこれ以降の期間の出稿量について調査対象外としたものの、一見しただけでも実際に大量の記事が出稿されている。▶︎「高橋治之」を検索した結果、朝日新聞は合計36本、読売新聞は合計38本、毎日新聞は合計40本、そして日経新聞は合計37本、4紙合計で151本であった(表1)。
このうち、第1期の記事出稿数と全体との割合は朝日新聞が計6本で16.7%、読売新聞は計6本で15.8%、毎日新聞が計2本で5.0%、日経新聞が計2本で5.4%、そして4紙合計が16本で10.6%であった。▶︎これらの主な記事は高橋氏の母親の死亡告知と、高橋氏の大会組織委理事就任に関する内容であった。▶︎また、第1期は五輪招致疑惑や東京五輪スポンサー選定疑惑は発生していたがその発覚前である。▶︎これら五輪招致疑惑と五輪スポンサー選定疑惑に関連した高橋氏の実名入り記事はいずれの新聞にもなかった。
◆五輪招致疑惑で毎日と日経は通信社電の実名報道
同様に第2期では、朝日新聞が計9本で25.0%、読売新聞が計6本で15.8%、毎日新聞が計12本で30.0%、日経新聞が計6本で16.2%、そして4紙合計が33本で21.9%であった。▶︎この期間の高橋氏の主な実名報道は2020年夏に開催予定だった東京五輪の延期問題についてであった。▶︎2020年3月10日付けの🇺🇸米ウォールストリート・ジャーナル紙が東京五輪延期の可能性について高橋氏のインタビュー記事を掲載したのをきっかけに、五輪スポンサー新聞4社を含め国内報道メディア各社がこれを追う記事を相次いで掲載したのである。▶︎また、この期間中の2020年3月30日、五輪招致疑惑について他の国内外の報道メディアに先駆けて🇬🇧英ロイター通信が高橋氏の実名報道に踏み切った。▶︎この記事では2020五輪招致委から高橋氏に約9億円の資金が流れ、汚職疑惑のある国際オリンピック委員会(IOC)委員のラミーヌ・ディアク氏らに対して腕時計などの贈り物など招致関連の活動費に充てたと報じた。▶︎この五輪招致疑惑に関する高橋氏の実名報道として、毎日新聞がロイター通信の転伝記事と、招致疑惑をめぐる竹田恒和・日本オリンピック委員会(JOC)会長(当時)の辞任記事と計2本(5.0%)掲載した。▶︎また、日経新聞はこの疑惑に関してパリ発の共同電1本(2.7%)を転載した。▶︎他方、朝日新聞と読売新聞にはこの疑惑の高橋氏の実名報道はなかった。▶︎これら4紙合計では3本(2.0%)であった。▶︎これら実名報道の抜粋記事を以下で紹介したい。
《東京五輪:電通元専務に9億円 通信社報道 東京五輪、招致委から 賄賂性は否定〜東京オリンピック・パラリンピック組織委員会理事を務める大手広告代理店「電通」元専務の高橋治之氏(75)が、招致委員会から820万ドル(約8億9000万円)を受け取り、国際オリンピック委員会(IOC)委員らにロビー活動をしていたとロイター通信が30日、報じた。▶︎高橋氏は毎日新聞の取材に「真実ではない。▶︎まるでうそ」と真っ向から否定した。(毎日新聞、2020年4月1日付け)》▶︎《東京2020・決定から7年:招致巡り贈賄疑惑…竹田氏会見わずか7分〜ロイター通信は2020年3月末、大手広告代理店「電通」元専務の高橋治之氏が招致委員会から820万ドル(約8億9000万円)を受け取り、国際オリンピック委員会(IOC)委員らにロビー活動をしていたと報じた。▶︎高橋氏は真っ向から否定しているが、ロイター通信が根拠としたのは招致委が開設した銀行口座の記録だ。▶︎招致委の理事長を務めていたのは竹田氏だった。▶︎招致委は2013年に🇸🇬シンガポールの会社にコンサルタント料として計約2億3000万円を支払っており、そのカネが集票工作に使われた疑いを持たれている。▶︎JOCの調査報告書によると、コンサル料の支払いは計11人に11億数千万円程度で、平均すれば約1億円。▶︎事実ならば、桁違いに大きな金額である。(毎日新聞、2020年4月16日付け)》
◆電通元専務に招致委が9億円、海外報道
《【パリ=共同】ロイター通信は31日、東京五輪・パラリンピックの大会組織委員会理事を務める広告代理店電通元専務の高橋治之氏が、五輪招致を巡り招致委員会から820万ドル(約8億9千万円)相当の資金を受け取り、国際オリンピック委員会(IOC)委員らにロビー活動を行っていたと報じた。▶︎(日経新聞、2020年4月1日付け)》▶︎一方、第2期にも五輪スポンサー選定疑惑については、いずれの新聞社による高橋氏の実名報道はなかった。▶︎第3期は五輪招致疑惑と五輪スポンサー選定疑惑ともに、いずれの新聞社も高橋氏の実名報道はまったくなかった。▶︎スポンサー新聞4社との利害関係の実質的な解消を意味する大会組織委の解散から高橋氏の逮捕までが第4期である。▶︎この期の高橋氏の実名報道は朝日新聞が14本(38.9%)、読売新聞が21本(55.3%)、毎日新聞が21本(52.5%)、そして日経新聞が21本(56.8%)であった。▶︎4紙合計では合計77本(51.0%)であった。▶︎これらのほとんどが大会組織委のスポンサーであったAOKIホールディングス社と高橋氏との間での贈収賄疑惑という五輪スポンサー選定事件(まだ立件前)に関する記事であった。▶︎この初出は2022年7月20日で、これは大会組織委解散約半月後で、7月8日の安倍晋三元首相銃撃事件以降にあたる。▶︎読売新聞が国内報道メディアのなかでいち早く7月20日朝刊で五輪スポンサー選定疑惑を報じた。▶︎五輪スポンサー新聞4社では続いて毎日新聞と日経新聞が7月20日夕刊、そして朝日新聞が2022年7月21日朝刊でそれぞれこの事件を報じた。▶︎いずれの記事も取材源を秘匿した。▶︎また、この時期、この事件の関連として五輪招致疑惑に関する高橋氏の実名報道を、毎日新聞が4本(10.0%)と日経新聞が1本(2.7%)を出稿した。▶︎以下が五輪スポンサー選定をめぐる読売新聞記事の抜粋である。《五輪組織委元理事4500万受領か 東京大会スポンサー AOKIから〜東京五輪・パラリンピック大会組織委員会の高橋治之元理事(78)が2017年秋以降、自身が代表を務める会社と大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」(横浜市)側の間でコンサル契約を結び、AOKI側から4500万円超を受け取っていた疑いがあることが関係者の話でわかった。▶︎理事は「みなし公務員」で職務に関する金品の受領を禁じられている。▶︎東京地検特捜部も同様の事実を把握し、コンサルは実態に乏しく、高橋氏への資金提供だった疑いがあるとみて慎重に捜査している。▶︎(読売新聞、2022年7月20日付け)》
◆逮捕後に実名報道に切り替え、五輪招致疑惑にも言及
第5期は2022年8月18日の1日のみである。▶︎高橋氏の逮捕翌日であるこの日には各紙ともその容疑事実や関連する内容の記事を大量に報じた。▶︎高橋氏の実名報道記事は朝日新聞が7本(19.4%)、読売新聞が5本(13.2%)、毎日新聞が5本(12.5%)、そして日経新聞が8本(21.6%)。▶︎4紙合計では合計25本(16.6%)であった。▶︎このうちのほとんどが五輪スポンサー選定事件に関する内容であった。▶︎五輪招致疑惑に関する高橋氏の実名報道記事は朝日新聞が1本(2.8%)、読売新聞が1本(2.6%)、毎日新聞と日経新聞がそれぞれ0本であった。▶︎4紙合計では合計2本(1.3%)であった。▶︎ここで、五輪招致疑惑に関して特徴的だったのが朝日新聞と読売新聞である。▶︎両紙は大会組織委解散を経て高橋氏逮捕に至るまで、五輪招致疑惑に関係する高橋氏の実名報道はなかった。▶︎それが逮捕直後に一転したのである。▶︎以下がこれらの実名報道を抜粋した内容である。
まず、朝日新聞は《(五輪汚職:上)祭典の影、カネ呼んだ存在感 高橋元理事、海外スポーツ界要人と人脈》という記事の中で、五輪アナリストの春日良一氏の談話として、「招致時に集票のための買収工作の疑いが持たれたコンサルタント会社との契約にも絡んでいると取り沙汰された人でもある。▶︎高橋元理事に招致活動を頼ったのが問題で、こういう人物を理事にするべきではなかった」(2022年8月18日付け)と間接的に報じた。▶︎また、読売新聞は《[スキャナー]五輪利権 証拠固め 東京地検特捜部 「事業要望文書」入手》という記事で、「今回の事件の舞台となった東京五輪では、🇯🇵日本の招致委員会が🇸🇬シンガポールのコンサル会社に計約2億3000万円を送金した疑惑が2016年に浮上。▶︎当時の招致委理事長で日本オリンピック委員会(JOC)会長だった竹田恒和氏(74)が🇫🇷フランス司法当局の捜査対象となり、捜査共助に基づいて東京地検特捜部が2017年に竹田氏から事情聴取した。▶︎竹田氏は「正当な対価を支払ったもので、不正はしていない」と疑惑を否定したが、2019年6月に会長を退任。▶︎この疑惑では高橋容疑者が代表を務める「コモンズ」の名前も取り沙汰された」(2022年8月18日付け)と簡単に報じたのである。▶︎利害関係が完全に消失する大会組織委解散まで、五輪招致疑惑と五輪スポンサー選定疑惑に関する高橋氏の実名報道は一部の外国報道メディアの転電を除いて、五輪スポンサー新聞4社では全くなかった。▶︎特に、朝日新聞と読売新聞は高橋氏逮捕後、突如として五輪招致疑惑に関する高橋氏の実名報道に踏み切ったのである。
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【掲載日時】2022年11月9日(水)





