【第三次世界大戦への火種〜🇷🇺ロシア・🇺🇦ウクライナ関連ニュース vol.91】
■『「プーチンは悪い政治家である。しかし…」…多くの🇷🇺ロシア人が独裁者を許容しているワケ』
🇺🇦ウクライナ侵攻によって、より独裁者としての色を強めた現🇷🇺ロシア大統領のウラジーミル・ウラジーミロビッチ・プーチン。▶︎世界中から批判を受ける彼が大統領に居座り続けられるのはなぜなのでしょうか。▶︎大統領就任前からプーチンを追う元外交官で作家の佐藤優氏が、現地でみた「🇷🇺ロシアの教育」と「🇷🇺ロシア人の政治に対する捉え方」を解説します。
◆エリツィンへの批判が、プーチンを正当化する伏線に
🇷🇺ロシアでは「混乱の90年代」という表現がなされることがある。▶︎エリツィン時代は、過度な民主化、自由化のために社会が混乱し、国民にとって不幸だったという意味だ。▶︎🇷🇺ロシアの義務教育9年生(日本の中学2年生に相当)でもっとも広く用いられている「プロスヴェシチェーニエ(啓蒙)」出版社の歴史教科書において、エリツィン時代は次のように総括されている。▶︎〈1990年代には、🇷🇺ロシア連邦を再建し、その統一性を保持し、国の連邦体制の新たな原則を定着させることに成功した。▶︎中央と地方の関係は、より対等になった。▶︎この関係は、多民族国家の現代的な発展傾向を考慮したのであった。▶︎これが連邦建設の主な結果であった。▶︎対立をすべて抑え、問題をすべて解決することはできなかった。▶︎地方との関係で連邦中央政権の役割は弱体化した。▶︎その一方で、民族問題がますます大きな意義をもった。▶︎🇷🇺ロシア人の民族運動が活発化し、その指導者は、🇷🇺ロシア人の諸問題に政権の関心が払われないことに不満を示した。▶︎🇷🇺ロシアの領土保全は、依然としてもっとも喫緊の課題のひとつであった。▶︎🇷🇺ロシアは、ソ連がたどった崩壊への道を繰り返しているように思われた。▶︎中央の経済的・政治的意義の低下は、地域間の結束を弱め、連邦権力の参加なしでもすべての問題が解決できるという印象を与えた。▶︎チェチェン共和国での失敗は、国の他地域の分離主義者を奮い立たせ、民族政策を変更する必要性が生じた。▶︎エリツィン時代に〈🇷🇺ロシアは、ソ連がたどった崩壊への道を繰り返しているように思われた〉という評価は辛辣だ。▶︎要するに🇷🇺ロシア政府は「あのままエリツィン路線が続いていたら、🇷🇺ロシア国家が崩壊していた」という認識を、義務教育で生徒に叩きこんでいるのだ。▶︎これは、プーチンによる「独裁」に限りなく近い権威主義的体制を正当化する伏線でもある。
◆「独裁」に等しいプーチン政権を正当化する学校教育
プーチン政権の誕生について、この教科書の記述を見てみよう。▶︎〈🇷🇺ロシアの第2代大統領となったウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチンは、1952年10月7日に生まれた。▶︎レニングラード国立大学法学部を卒業したのち、1975~1991年まで国家保安機関に勤務した。▶︎1991~1996年までサンクトペテルブルク副市長を務め、その後、🇷🇺ロシア大統領府へ転属し、短期間のうちに大統領府副長官に上り詰めた。▶︎1998年にプーチンは連邦保安局(FSB)長官に任命され、1999年の夏には🇷🇺ロシア連邦首相に就任した。▶︎2000年3月26日の大統領選挙で、V・V・プーチンは、第1回投票で勝利を獲得し、🇷🇺ロシアの第2代大統領に選出され、同年5月7日に大統領に就任した。(中略)▶︎V・V・プーチン大統領は、🇷🇺ロシアにおけるあらゆる進歩的改革を保障する強力な国家権力の推進者であることを鮮明にした。▶︎したがって、新大統領の最初の方針は、社会活動における国家の権威と役割を強固にし、しかるべき秩序をもたらすことに向けられた。▶︎こうして、1990年代に行われた民主主義路線はこれまで通り継承された〉▶︎プーチンが、KGB(旧ソ連国家保安委員会)出身で、〈社会活動における国家の権威と役割を強固にし、しかるべき秩序〉をもたらしたことを強調している。▶︎具体的には、中央集権の強化だ。プーチンは、🇷🇺ロシアを構成していた諸連邦を七つの管区に集約し、各管区に大統領全権代表を置いた。▶︎〈(それまで各連邦で)採択された3500以上の法令は、🇷🇺ロシア憲法や連邦法に合致していなかったため、そのうちの5分の4が改正された。▶︎こうした措置は、地方における中央権力の役割を強化させ、連邦を強固にし、🇷🇺ロシア国内に統一した法治社会を復活させることになった〉▶︎それまで連邦会議(上院)は、各連邦の知事と議会議長から構成されていた。▶︎それが立法機関からの選出と、プーチンが指名した行政の長によって任命された地方の代表者によって構成されるようになった。▶︎さらには〈ロシアの多党制も改善されつつあった。▶︎政党法は、国民の大多数の支持を得ている組織のみを政党と認めた。結果として、国家活動における政党の意義が高まった〉▶︎地方の自治権を取り上げて、中央集権制を強化することをプーチンは「法の独裁」と名づけた。▶︎教科書では、プーチンが好んで用いた「法の独裁」という言葉を記録していない。▶︎スターリン時代に「プロレタリアート独裁」の名の下で、大規模な人権弾圧が行われたことを彷彿させるからだろう。▶︎地方が採択した法令の8割が変更されるというのは、統治の「ゲームのルール」の大きな変化だ。▶︎知事選挙も廃止し、中央政府による任命制になった。▶︎さらに検察、警察、FSBなどの「力の省庁」を用いた統治メカニズムが導入された。
◆「政権を支持している」…模範解答を丸暗記させる教育
さらに、プーチンは国家統合を強化するためのシンボル操作を行った。▶︎〈🇷🇺ロシアの国家シンボルの問題をめぐる無益な争いは、約10年にわたって続いていた。▶︎プーチン大統領は、様々な社会階層の立場を近づける妥協案を提示した。▶︎2000年12月に国家会議(下院)は、🇷🇺ロシアの国家シンボルに関する法律を採択した。▶︎白・青・赤の3色旗と双頭の鷲の紋章は、🇷🇺ロシア千年の歴史を想起させるものである。▶︎大祖国戦争におけるわが国民の勝利の赤旗は軍旗となった。▶︎ソ連国歌のメロディーにのせられた🇷🇺ロシア国歌は、世代の統一と、わが国の過去と現在、未来の不可分な結びつきを象徴している。▶︎(中略)V・V・プーチン新大統領の活動は、社会の賛同を得た。▶︎大統領の最初の任期終了までに、🇷🇺ロシア国民の約80%がプーチン大統領を支持した〉▶︎この教科書には課題がついている。たとえばこんな内容だ。▶︎〈社会的・政治的安定の達成は、過去2年間のもっとも重要な成功のひとつと認識されています。▶︎なぜ現代🇷🇺ロシア社会がそれほど強く安定を求めているのか、クラスで議論しましょう。▶︎安定は何によってもたらされますか。▶︎何のために安定が必要なのか、改革の成功のためなのか、あるいは改革から徐々に脱却するためなのか、考えましょう。▶︎大統領と政府は、この問題に対してどのような立場をとっていますか。本文中やマスメディアの資料を用いましょう〉▶︎🇷🇺ロシア人は、6~7歳の子どもでも本音と建て前の区別がつく。▶︎〈何のために安定が必要なのか、改革の成功のためなのか、あるいは改革から徐々に脱却するためなのか、考えましょう〉という設問に対して、「改革から徐々に脱却するためです」という間抜けた答えをする生徒は一人もいない。▶︎そもそも義務教育段階では、「教育とは暗記なり」というのが🇷🇺ロシア人の常識だ。教師が提示する模範解答を丸暗記する。▶︎「真の改革のためには、秩序と安定が必要だ。プーチン大統領と政府は、🇷🇺ロシアの国家体制(государственность、ゴスダルストベンノスチ)を強化するために全力を尽くしている。▶︎この路線を国民も支持している」▶︎これが模範解答だ。▶︎現実問題として、🇷🇺ロシア人はプーチン政権の現状を(消極的にではあるが)支持している。▶︎🇷🇺ロシア人にとってそもそも政治とは悪だ。▶︎政治における最大の悪とは何か。▶︎スターリンのように政治・経済・文化だけでなく、人間の魂までも支配しようとする独裁者が現れることだ。▶︎他方、政治指導者が弱く、国内が混乱することも、🇷🇺ロシア人の考える巨悪だ。▶︎そう考えると、ゴルバチョフのペレストロイカやエリツィンの改革も巨悪なのである。
◆許容できる独裁…「代わりとなる人材もいない」
2000年にプーチンが大統領に就任して以降も、🇷🇺ロシアにはそこそこの言論・表現の自由があった。▶︎プーチンが設定した「ゲームのルール」──すなわち「経済人は政治に嘴を差し挟まず、金儲けに専心し、税金をきちんと納める」という原則さえ守れば、経済活動も自由にできた。▶︎「そもそも良い人は政治家にならない。▶︎プーチンは悪い政治家である。▶︎しかし、うんと悪い政治家、とんでもない政治家ではない。▶︎まあ、この程度の独裁者ならば許容できるだろう」▶︎これが🇷🇺ロシア大衆の平均的感覚なのだ。▶︎普通の🇷🇺ロシア人とプーチンについて議論すると、「昔のような熱い支持はないよ。▶︎もう飽きた。▶︎しかし、プーチンの代わりに大統領を務めることができる人もいない。▶︎メドヴェージェフの小僧が大統領をやったが、力量不足だ。▶︎あいつは、ツイッターで軽々に発信する。▶︎それに英語でちゃらちゃら話をするあたりが軽い。▶︎プーチンのような恐さがなければ、🇷🇺ロシアで大統領は務まらない」という返事が返ってくる。▶︎プーチンをぼろくそに非難するのは、親欧米的な世界観をもった一部の知識人とジャーナリストしかいなかった[*幻冬舎GOLD ONLINE 2022.11.06付記事抜粋/文:佐藤優氏・作家、元外務省主任分析官、同志社大学神学部客員教授]
■『🇰🇵北朝鮮から🇷🇺ロシアへ列車越境、軍事物資運搬の可能性…鉄道輸送約2年半ぶり再開』
🇺🇸米国の北朝鮮問題研究グループ「38ノース」は、🇰🇵北朝鮮から🇷🇺ロシアに列車が越境した場面をとらえた衛星写真の分析結果を発表した。▶︎「🇰🇵北朝鮮から🇷🇺ロシアへの兵器供与に関する報告がある中での越境」と指摘し、軍事関連物資を運搬した可能性があるとの見方を示した。▶︎38ノースの11月4日の発表によると、同日越境した列車は両国の国境にかかる橋を渡り、🇰🇵北朝鮮から🇷🇺ロシアに入った。▶︎これに先立ち🇷🇺露側も11月2日、🇰🇵北朝鮮のコロナ対策で停止していた鉄道輸送を約2年半ぶりに再開し、3両編成の列車が🇷🇺ロシアから🇰🇵北朝鮮に渡ったと発表していた。▶︎在🇰🇵北朝鮮の🇷🇺ロシア大使館は、🇰🇵北朝鮮からの衣服などの輸入に強い関心を持っていると表明していた。▶︎🇺🇦ウクライナ侵略で不足する軍服などを北朝鮮から調達しようとしているとみられる[*読売新聞 2022.11.06付記事抜粋]
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【掲載日時】2022年11月6日(日)

