【東京五輪の闇〜地検特捜部利権疑獄解明への挑戦 vol.13】
■『”五輪汚職”で話題の老舗宝飾企業で起きていた「巨額着服事件」』
[逮捕される直前の高橋治之氏。自宅から送迎の高級車に乗り込む際、報道陣を一瞥した]
創業60年を迎えた大手宝飾メーカーの「ナガホリ」が揺れている。▶︎ナガホリは百貨店などへの出店で事業を拡大した上場企業として知られたが、近年は業績が低迷し、株価も低調だった。▶︎異変が起こったのは春先のことである。
◆逮捕された「元電通専務」の部下が…
株の買い占めの動きと株価の急騰に始まり、筆頭株主に躍り出た“物言う株主”との間で続く質問状の応酬。▶︎現経営陣は買収防衛策として元警視総監の米村敏朗氏を顧問に招聘するなどして徹底抗戦の構えをみせ、6月の株主総会以降も両者の対立は激化の一途を辿っている。▶︎さらに東京地検特捜部が捜査を進める東京五輪を巡る疑惑の“余波”も関心を集めている。▶︎「ナガホリはかつて1998年の長野五輪でも、公式ライセンスを取得し、大会マスコットをあしらった指環や18金のペンダントなどを販売した実績があり、今回の東京五輪でも早くから公式ライセンス取得に動いていました。▶︎そのキーマンとみられていたのが、2016年6月に社外監査役として迎えた電通の元執行役員、岩上和道氏でした。▶︎社内では、日本サッカー協会の副会長や日本女子サッカーリーグの理事長などを歴任した岩上氏の影響力もあって公式ライセンスを取得したと言われていました。▶︎純金小判やプラチナ小判、ジュエリーなどを販売して約40億円を売上げています」(ナガホリ関係者)▶︎学生時代からサッカー経験があった岩上氏は、電通時代はスポーツマーケティングを担ったILS事業局にも在籍。▶︎五輪疑惑の中心人物として受託収賄の疑いで逮捕された電通元専務の高橋治之氏の部下だった。▶︎事件が広がりを見せたことで、ナガホリ社内でも岩上氏と高橋氏との関係を心配する声があったという(ナガホリは公式ライセンス契約について「岩上和道が尽力したという事実はございません」と回答)。▶︎この五輪ビジネスを推し進めたのは、ナガホリ創業者の長男で、現社長の長堀慶太氏である。▶︎実は、その長堀氏が取締役を務める子会社で、五輪問題の余波どころではない、警察を巻き込んだ前代未聞のトラブルが取り沙汰されている。▶︎舞台となった子会社は、ナガホリが2014年9月に買収した大阪に本店を置く「仲庭時計店」。▶︎もともとナガホリは関東には百貨店の直営店を多数抱えていたが、西日本には足場がなく、シェア拡大を狙って仲庭時計店の子会社化に踏み切った。▶︎しかし、当初からその先行きを危ぶむ声があった。
◆大手百貨店が烈火の如く激怒した「事件」とは
仲庭時計店の元社員が語る。▶︎「仲庭は高級時計を扱っていましたが、管理の杜撰さは以前から指摘されていました。▶︎在庫の棚卸をする時に本来なら3ヵ月に一度は、書類と現品との付け合わせをしてチェックをするのですが、別の店舗に貸し出している時計があっても細かく追及せず、トータルの数だけ合っていれば、それで済ませたりしていました」▶︎2017年11月の棚卸では、仲庭時計店の社員A氏が売上実績を伸ばすために不正を行なっていた事実が発覚。▶︎2008年頃から顧客による大幅な値引き要請に応じた上に、無料でもう一点の時計を添付し、その穴埋めのために別の商品を転売して換金する行為を繰り返していた。▶︎換金した金の一部を自らの飲食代などにも充てており、損失額は約4300万円にものぼっていたという。▶︎さらに不正の連鎖は続き、勤続10年を超える社員B氏は権限がないにもかかわらず、2016年4月から2017年5月にかけて、自らの大口顧客に高級時計41点を販売。▶︎約5400万円の代金が未払いとなっただけでなく、大口取引先である百貨店「そごう西武」の2020年来の顧客から定期無料メンテナンスのために預かった1200万円相当の超高級時計「リシャール・ミル」の限定モデルを巡っても深刻な事態を引き起こした。▶︎預かった時計のガラスに傷があることがのちに判明し、対応の不手際を隠すため、紹介者を通じ、格安で修理を請け負う指定外の修理業者に依頼。▶︎正規ルートではないため、時計の修理に手間取り、回収不能の事態に陥ったのだ。▶︎当然ながら「そごう西武」側は烈火のごとく怒り、仲庭時計店は親会社のナガホリと連名で文書を差し入れて、解決金として1200万円を支払うことになった。▶︎問題のB氏は2018年6月に退職。▶︎しかしその後、B氏が後輩の現役社員に「あるお客様が時計を見たがっている。▶︎何とか数点用意して欲しい。▶︎時計を預けても短期間ですぐに返却されるので大丈夫」などと持ち掛けて、「ブレゲ」の時計2点を持ち出させたことが、新たなトラブルを誘発していく。▶︎「B氏は、この現役社員が何度催促しても返却しようとせず、『別の時計を持ってくれば交換する』などと説明し、一向に埒が明かない。▶︎そこで対応に困った現役社員が、先輩格の社員C氏に相談。▶︎C氏は別の顧客から預かっていた700万円相当のオメガを渡し、B氏に渡した時計を回収するよう指示したのですが、今度はオメガが回収できない。▶︎そのうちにB氏からの要求に応じる形で、C氏は約半年の間に次々と時計を持ち出し、▶︎2019年9月の棚卸の時点で、この不正が発覚。▶︎結果的にはC氏が105点、2億円相当の時計を持ち出していたことが分かったのです」(同前)
◆カルティエの「覆面調査」で発覚
まさに“無法地帯”と言っても過言ではないほどの杜撰な管理体制である。▶︎C氏は外商セールスでは優良顧客を抱えた腕利きの販売員ではあったものの、規範意識が希薄なところがあり、当初から社内で問題視される存在だった。▶︎「C氏が西武大津店(現在は閉店)の店舗に勤務していた頃に、高級ブランドのカルティエの商品を常習的にカルティエ取扱店ではない業者向けに卸売りしていたことが明らかになりました。▶︎カルティエはブランド価値を高めるために直販での販売を契約で謳っており、覆面調査でシリアルナンバーのチェックを行なうのですが、その過程で仲庭時計店に卸していた商品が二次卸に回っていることが発覚したのです。▶︎この件で、仲庭時計店はカルティエ取扱店の資格をはく奪され、C氏は左遷という形で、一時ナガホリの広島の店舗に異動になっていました」(同前)▶︎素行不良のC氏を焚き付けたB氏は、持ち出された高級時計を、リシャール・ミルの修理業者を仲介した時計販売店経営者に渡し、この経営者は複数の質屋にこれを持ち込んでいたという。▶︎当然これは刑事事件になってしかるべき“犯罪”だが、仲庭時計店が所轄の滋賀県警大津警察署に盗難の被害届を出したのは、犯行が発覚してから約7週間後。▶︎そして19年10月23日に受理されている。▶︎事情を知る仲庭時計店関係者が明かす。▶︎「仲庭時計店の國松忠男社長には、C氏が時計を持ち出していたことを忠告する声もあったようで、ある意味で時計を持ち出しても、売上をあげてくるC氏を容認していたところもあったと思う。▶︎C氏は周囲に國松社長からナガホリの顧問弁護士に相談に行くよう指示があったとも語っているようです。▶︎警察への被害届が横領ではなく、あくまで窃盗被害という形だったのは、盗品が質屋に持ち込まれていた形であれば、無償で時計を回収できるとの見込みがあったからでしょう。▶︎実際に被害届と並行する形で、質屋5社に対し、動産返還訴訟も起こされていました」
◆ナガホリの回答は…
質屋には毎月一回程度、地元の警察が立ち入り検査を行ない、古物台帳などをみて、盗品などがないか否かの確認をするのが慣例であり、盗品と知って品物を扱っていたとは考えにくい。▶︎動産返還訴訟のハードルは決して低くはなかったが、それに追い打ちを掛けたのが、約1年後の大津署による捜査だった。▶︎「大津署は『社内規定に持ち出し禁止の細則がないため、窃盗ではなく、横領で立件する』方針を20年10月に仲庭時計店側に伝え、近々C氏の逮捕を予定していると報告。▶︎しかし、横領では、質屋との返還訴訟の根拠が根底から崩れ、回収の見込みが断たれるため、仲庭時計店はナガホリ側と相談のうえで、被害届を取り下げることになったのです」(同前)▶︎結局、懲戒解雇されたC氏はのちに仲庭時計店と債務弁済契約書を結び、現在は弁済のためコンビニ店で雇われ店長として働いているという。▶︎事件は雲散霧消し、これだけの大量着服トラブルでありながら処分は國松社長の減給処分3ヵ月を始め一部のみ。▶︎仲庭時計店の取締役でもあったナガホリの長堀社長らは「処分の対象とすべき非違行為・関与がなかった」として処分は見送られている。▶︎看過できないトラブルの数々についてナガホリ側に10月12日付で質問状を送ったところ、ナガホリは翌日にIRでトラブルの経緯を公表。▶︎そして管理本部総務部長名の文書で「仲庭時計店の従業員による複数の不正が行なわれたのは事実です」としたうえで、改めてこう回答した。▶︎「(大量窃盗・質屋質入れ事案は)警察から横領事案としては立件できるが、窃盗事案としての立件が難しいとの見解が示されたことから、裁判所の訴訟指揮に従い、和解交渉を行いました。▶︎その結果、当社は、質屋との和解にあたり、質入れした商品返還の条件として不正を働いた元社員らが得た現金見合いの金額を質屋に支払い、質入れされた商品の全ての返還を受けました」▶︎疑惑発覚後は仲庭時計店に管理職人材を派遣し、類似事案の調査を行ない、管理体制の強化を図っているという。▶︎全ては”解決済”と言わんばかりだが、一連のトラブル事案は今後、物言う株主とのバトルにも影響を与えそうだ[*FRIDAYデジタル 2022.10.18付記事抜粋/取材・文:西﨑伸彦氏・ノンフィクションライター]
▶️現在捜査拡大中の“五輪汚職”とは今のところ直接関係なさそうだが、上場企業でありながら、あまりにも筋が悪すぎる。無悪不造とは、こういった企業のことを指すのだろう〆
■『角川元会長、2回目保釈請求 五輪汚職』
東京五輪・パラリンピックのスポンサー選定を巡る汚職事件で、大会組織委員会元理事の高橋治之容疑者(78)=受託収賄容疑で再逮捕=への贈賄罪で起訴された出版大手KADOKAWA元会長、角川歴彦被告(79)の弁護人が10月17日、東京地裁に2回目の保釈請求をした。▶︎弁護人によると、体調が優れず、持病の手術を予定しているという[*時事通信 2022.10.17付記事抜粋]
■『五輪汚職、元理事を4回目逮捕へ…ぬいぐるみ会社とADKから賄賂か』
東京五輪・パラリンピックをめぐふ汚職事件で東京地検特捜部は、大会組織委員会の元理事・高橋治之容疑者(78)を受託収賄容疑で再逮捕する方針を固めた。▶︎逮捕は4回目。▶︎大会マスコットのぬいぐるみを製造・販売した「サン・アロー」(東京都千代田区)から約800万円、スポンサー獲得業務を担った広告大手「ADKホールディングス」(港区)から約2千万円の賄賂を受け取った疑いが強まったと判断した。▶︎関係者への取材で分かった。▶︎高橋元理事は紳士服大手「AOKI」、出版大手「KADOKAWA」の各ルートで逮捕・起訴された。▶︎3回目の逮捕となった広告大手「大広」ルートの勾留期限が10月18日で、いずれも否認しているという[*朝日新聞2022.10.18付記事一部抜粋]
▶️しぶとく自供を拒む高橋被告。さて、再逮捕○回でゲロするか?東京地検特捜部の腕の見せ所だ〆
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【掲載日時】2022年10月18日(火)

