【自民党終焉への道〜戦後利権政治との決別 vol.9


『岸田政権「発足1年動画」SNSでケチョンケチョン…“8分超大作も「いいね」は菅政権以下』


[カネをかけて演出しても(首相官邸公式ツイッターから)]

107日までの3日間、衆参両院で行われた岸田首相の所信表明に対する代表質問。▶︎野党議員から統一教会問題で瀬戸際の山際経済再生相の更迭を求められるたび、岸田首相が繰り返したのは次のフレーズだ。▶︎「引き続き政治家として自らの責任で丁寧に説明を尽くす必要がある」

同じ答弁連呼で乗り切る覚悟?

ナントカのひとつ覚えのように連呼するものだから、周囲にも伝播。▶︎木原誠二官房副長官106日の会見で、今週発売の週刊文春が報じた寺田稔総務相の政治団体が妻に2000万円超を支出した裏金づくり疑惑を問われると、一言一句変わらずに回答した。▶︎「説明責任」は疑惑の大臣一人一人に丸投げし、岸田首相は「任命責任」から逃げ回る。▶︎こんな無責任なスットボケ答弁で臨時国会閉会までの約2カ月を乗り切れると思っているなら、相当におめでたい。▶︎SNSでは岸田政権がいかに不評を買っているか、可視化されている。▶︎発足1年を迎えた104日、首相官邸は公式ツイッターに「365 岸田政権の1年間」なる動画を公開。▶︎勇ましく仰々しいメロディーに乗せ、カッコよく編集された岸田首相の映像が実に757秒ーー。▶︎やたらカネがかかっていそうだが、「新しい資本主義」「新時代リアリズム外交」「核兵器のない世界」など岸田首相が掲げた11項目のスローガンをタレ流すだけで、中身は空っぽだ。▶︎エンドロールに岸田首相が参加した電話オンラインを含む首脳会談と国際会議、車座による対話の名称が200回以上分も流れて終了。▶︎これには〈で、具体的に何をしたのか成果を簡潔にまとめて示していただけますか?〉▶︎〈こういうくだらないのに税金使って さもやった感出すのやめてくれ〉など批判コメントが殺到している。▶︎「いいね」の数は841件(106日午後11時時点)。▶︎2837件(同)の「いいね」がついた菅前政権発足から1年を振り返った動画(2021916日公開)の3分の1程度にとどまる。▶︎せっかくの超大作も不人気ぶりを露呈してしまった[*日刊ゲンダイDIGITAL 202210.08付記事抜粋]

『若者は国葬や自民党を本当に支持したのか参列した20代記者が抱いた違和感』


誰のためだったのか──。▶︎927日に開かれた安倍晋三元首相の国葬。▶︎本誌記者(28)も式場に入り、4時間にわたる儀式を見届けた。▶︎国葬を支持する意見が多かった同世代の若者たちの目には、どう映ったのだろうか。

「これが果たして『国』の儀式なのか……

日本武道館の2階席に設けられた記者席からは、やや遠いが真正面に安倍氏の祭壇が見えた。▶︎参列者が着席し終えると、厳粛な雰囲気が高まった。▶︎だが、そんな印象を一本の動画が吹き飛ばした。▶︎「はい、いいですか?」そう話すのはピアノの前に座る安倍氏だ。▶︎おもむろに弾き始めた曲は「花は咲く」。▶︎安倍氏の奏でるピアノの音をBGMに、第1次政権からの功績が紹介された。▶︎安倍氏のおちゃめな姿も挟まれる。▶︎リーマン・ショックについて触れた演説で「もし、リーマンブラザーズがリーマンブラザーズ&シスターズだったら破綻(はたん)しなかったと思います」。▶︎直後、笑う聴衆の映像が続く。▶︎極めつきは、そのオチだ。▶︎曲終わりに間違って鍵盤を押してしまい音が出てしまう、恥ずかしそうにほほ笑む安倍氏が「もう一回いきます?」と言って動画は終わる。▶︎テレビの中継やニュースでご覧になった人も多いだろう。▶︎「モリ・カケ・桜問題」など負の側面に触れることなどないとはわかっていたが、仲間内でやるべきものを、国を挙げてやっているという感じを強く受けた。▶︎ほかにも、献花中にポップな曲が演奏されるなど、荘厳さをイメージさせる「国葬」という言葉と、目の前で繰り広げられる式とのギャップに、違和感だけが胸に残った。▶︎ネットニュースでは菅義偉前首相の弔辞が話題になり、コメント欄には賛美する声があふれた。▶︎その場面だけを見ると、さも素晴らしい式典だったかのように見える。▶︎私より若い人たちには、どう映ったのだろうか。▶︎若者と政治の関係に詳しい高千穂大学経営学部の五野井(ごのい)郁夫教授が言う。▶︎「(学生に)『菅さんの弔辞見た?』と質問したら、『見てないです』と言っていました。▶︎『国葬は自分にとって外野』と言う学生もいましたね」▶︎もちろん国葬に関心を払い、献花に訪れた若者もいる。▶︎朝日新聞の世論調査(91011日)では、1829歳の回答者の58%が国葬に賛成した。▶︎ただ当日の様子を見る限り、実際は大して興味がない……▶︎そんな若者たちも多かったのではないだろうか。▶︎デモクラシー論などを研究する駒澤大学法学部の山崎望教授は、現時点での仮説としながら、次のように分析する。▶︎「生まれたときから競争や自己責任を重視する新自由主義の時代を過ごしてきた若者は、社会よりも個人の目線を重視します。▶︎国全体に関わる国葬というイベントにどう応じてよいのかわからなかったのではないでしょうか。▶︎もう一つは、安倍政権が長期であったこともあり、ほかの政権と比較してどう位置づけるべきか、難しかったのかもしれません」▶︎記者が成人してから大半の期間は、安倍氏が首相だった。▶︎学生時代から安倍氏の業績については、冷静に見ていたつもりだ。▶︎だが、政治について同級生と話した記憶はあまりない。▶︎そうした話題を交わすのは、決まって一回り、二回りも年上の人たちだった。▶︎しかし、記者より若い人たちが安倍氏に共感する場面を目の当たりにすることがあった。▶︎それは、安倍氏が襲撃された事件現場でのことだ。▶︎記者も事件が起きた直後、奈良に急行した。▶︎現場近くに設けられた献花台には、多くの若者たちの姿があった。▶︎「おじいちゃんみたいで親しみがありました」と話す高校1年生や、「功績を残されて、尊敬している」と語る予備校生が目を潤ませて話してくれたことに、「これだけ若い人が熱烈に支持しているなら、自民党が与党なのも当然だ」と妙に納得したのを覚えている。▶︎安倍政権といえばネットでの広報戦略に力を入れていた。▶︎安倍氏への共感はそこから生まれたのだろうか。▶︎政治とインターネットの関係に詳しい東京工業大学の西田亮介准教授はこう語る。▶︎「自民党内では、以前から若者や女性から支持を得られていないという認識がありました。▶︎その層へリーチするためにネットの活用を進めていきました。▶︎ただ正直これがそこまで効果を発揮しているとは思っていません」

いずれ薄まる安倍氏への共感

西田氏が続ける。▶︎「野党が弱すぎたことや、安倍政権下で新卒の就職状況が上向いたことなどが自民党の支持率の高さにつながったのでしょう。▶︎広報の効果もあるとは思いますが、影響の程度は小さい印象です」▶︎前出の山崎教授は言う。▶︎「自民党を支持しているとは言っても、非常にあいまい。▶︎特定の理由があるわけではなく、彼らが強く持つ経済成長願望を実現してくれそうなのが自民党だからに過ぎません。▶︎それから、若者が権威に対して従順、というデータもあります。▶︎学生と話していると『長年、首相を務めているんだから、その人を批判するのはおかしい』と言うんです。▶︎国葬についても、『人が亡くなったんだし、悼むのは当たり前。▶︎だから賛成』という感じでした」▶︎多くの若者は安倍氏や自民党を熱狂的に支持しているわけではなさそうだ。▶︎安倍氏への共感も、国葬が終わればいずれ薄まっていくだろう。▶︎前出の五野井教授が言う。「🇷🇺ロシアによる🇺🇦ウクライナ侵攻などもあり、これからは経済の状況は悪くなっていくでしょう。▶︎その際に若者が自民党を支持し続けるかはわかりません。▶︎🇪🇸スペインや🇮🇹イタリアを見ると、極右や極左政党が票を伸ばしています。▶︎🇯🇵日本も同じ状況になる可能性がある。▶︎若者たちの一番の関心は経済ですから、彼らが『この党は私たちに何かしてくれる』と信じるに足り、政権運営能力がありそうな政党が出てきたとき、彼らはそちらに流れます」▶︎国葬を巡っては「国民を分断した」と分析する意見も多かった。▶︎だが、記者が普段つきあっている同世代にとっては、そこまで大きな関心事ではなかったように思う。▶︎むしろ賛否を争っている人々の姿のほうが、奇異に映ったのではないか。▶︎……いや、そもそも映ってすらいないのかもしれない[*週刊朝日 2022101421日合併号記事抜粋]

『狡猾な官邸官僚の原発解散戦略』


岸田文雄総理は8月に、これまで認めていなかった原子力発電所の新増設について年末までに検討するよう指示し、原発政策を事実上大きく変更した。▶︎その後も政府は、電力不足を煽り、安全でクリーンで安価だという触れ込みで「次世代原発」なるものを必死に世の中に売り込んでいる。▶︎こうした原発推進政策は、一般には、「電力不足」への対応だと理解されているが、「不足」と言っても、冬や夏の一部地域の数日間の需要のピーク数時間だけのことである。本気で節電対策などを行えば「停電」などは容易に回避でき、原発にこだわる必要はない。▶︎岸田内閣は、旧統一教会スキャンダルや安倍晋三元総理の国葬への批判、五輪スキャンダル、そして円安とインフレなどで満身創痍状態。▶︎支持率は内閣発足後最低水準だ。▶︎それにもかかわらず、不人気政策である原発推進の姿勢を鮮明にしているのはなぜだろうか。▶︎実は、9月上旬、私は岸田文雄総理の首席秘書官・嶋田隆氏が周囲に語った内容を記したメモを入手した。▶︎そのメモの詳細は省略するが、最大のポイントは、東京電力の柏崎刈羽原発(新潟県)を原子力規制委員会の最終承認や地元新潟県の同意がなくても、国が前面に出て再稼働させるという話だ。▶︎そのためには特別の法律が必要になるが、それを国会で通すという。▶︎さらに、これを東電にあらかじめ約束する代わりに、東電が来年春に行うと見込まれる電力料金値上げのうち、家庭用の値上げを止めさせる取引を行うという話も書いてある。▶︎規制委の権限を乗り越えて政府が勝手に原発再稼働を認める法律など言語道断だが、それも「一気に国会に議論してもらう」とメモにはある。▶︎経済産業省の事務方トップの事務次官まで務めた大物秘書官である嶋田氏らしい強気の姿勢だ。▶︎果たせるかな、916日に東電は、20234月から法人向け標準料金を値上げするが、家庭向けの値上げはしないと発表した。▶︎しかも、柏崎刈羽原発7号機の来年7月からの再稼働を織り込んで「顧客の負担軽減」につなげると説明している。▶︎メモに書いてあるとおりだ。▶︎何とも驚きの強引なシナリオだが、そこには、「電力不足対策」という表向きの理由とは別に、二つの隠された狙いがあると私は見ている。▶︎一つは、東電の取締役も経験し、秘書官就任前は次期東電会長の筆頭候補と噂された嶋田氏の悲願である東電再生である。▶︎すでに建設された柏崎刈羽原発を再稼働させれば、燃料費が浮き、経営の大幅改善が可能となるのだ。▶︎もう一つの狙いは、原発再稼働を国会での争点にすることだ。▶︎意外に思うかもしれないが、嶋田氏は、おそらく、「電力不足」キャンペーンで国民を騙すことができると考えているのだろう。▶︎冬や夏のピーク時に、「停電すれば死人が出る」と叫び、緊急事態に限って再稼働を認めるべきだとして、そのための法案を出せば、国民の多くは、賛成するという読みだ。▶︎野党が少しでも抵抗すれば、直ちに衆議院を解散する。▶︎「ジリ貧追い込まれ解散」に比べればはるかに勝利の確率が高まるという計算だ。▶︎国民は完全に馬鹿にされている。▶︎官邸の猿芝居に騙されてはならない[*週刊朝日 20221014-21合併号記事抜粋/文:古賀茂明氏・元経産省官僚]

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【掲載日時】2022.10.11(火)