【🌏チキュウノコトバ】Vol.71
■『脱炭素に1京円強…金融機関有志連合、投融資で変革促す』
投融資先を含めた温暖化ガス排出量の実質ゼロを目指す金融機関の有志連合は今後30年間で脱炭素に100兆ドル(1.1京円)を投じる方針だ。▶︎脱炭素社会への転換には設備投資や研究開発など巨額の資金が必要になる。▶︎金融機関が投融資を通じて変革を促す構図が強まるが、実効性は注視する必要がありそうだ。▶︎金融機関の有志連合「GFANZ(ジーファンズ、グラスゴー・ファイナンシャル・アライアンス・フォー・ネットゼロの略称)」は2021年4月に🇬🇧英イングランド銀行(中央銀行)前総裁のマーク・カーニー氏が提唱して発足した。▶︎2050年までに投融資先の温暖化ガス排出量の実質ゼロを目指す銀行や保険、資産運用会社など450社・団体で構成する。▶︎🇯🇵日本からは3メガバンクのほか日本生命保険や野村アセットマネジメントなど19社が名を連ねる。▶︎450社が抱える金融資産の合計は130兆ドルと世界全体の4割を占め、発足時点(約70兆ドル)から半年強で2倍近くに膨らんだ。▶︎これまでは「脱炭素の姿勢をアピールする側面が強かった」(運用会社幹部)が今後は具体的な取り組みを求められる。
参加機関は今後、①10年間で50%前後の排出量削減②5年ごとの目標見直し③計画の進捗とファイナンスによる排出量の年次開示――などに取り組む。▶︎金融機関は投融資を排出量削減につなげる必要があるため、融資や投資を受ける企業にとっては自社の排出量や削減計画の開示圧力が強まることになる。▶︎最も取り組みが進むのが資産運用会社だ。▶︎設立当初から参加する約30社が10月中旬までに2030年までの中間目標を策定した。▶︎🇯🇵日本勢ではアセットマネジメントOneが運用資産の5割超を排出量実質ゼロか、それに向けた計画を掲げる企業への投資に振り向ける方針を掲げた。▶︎企業が対話(エンゲージメント)などに応じない場合、投資撤退(ダイベストメント)も視野に入れる。▶︎国際エネルギー機関(IEA)によると、パリ協定の目標達成には2040年までに世界全体で約8000兆円の投資が必要になるという。▶︎有志連合が掲げる1京円強の投融資の着実な実行は、目標達成の大きな原動力になり得る。▶︎ただし金融資産が2050年までに確実に脱炭素化するかは現時点で不透明な面もある。
金融資産の5割(66兆ドル)を占める銀行分野では「企業から融資を引き揚げるといった手荒なことはできない」(メガバンク幹部)ためだ。▶︎脱炭素を重視する資金の出し手(アセットオーナー)の意向を反映して企業に投資する運用会社に対し、銀行は融資先企業に脱炭素の取り組みを求めなければならずより慎重な対話が必要になる。▶︎脱炭素への移行を急げば温暖化リスクは減らせるが、性急すぎてついていけない企業が増えれば社会は不安定になる。▶︎「バランスをどうとるかが非常に難しいポイント」(三菱UFJフィナルシャル・グループの亀沢宏規社長)だ。▶︎もっとも、GFANZを巡っては非政府組織(NGO)などから批判もある。▶︎90を超えるNGOなどが10月、金融機関がGFANZを「(環境対策を装う)グリーンウォッシュに使っている」と公開書簡で批判した。▶︎加盟後も石炭火力発電などへの融資を拡大していることなどを理由に挙げる。▶︎野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは「脱炭素に果たす金融機関の役割が大きくなっている。▶︎不信感が残るのであれば、金融機関が透明性を高める取り組みも必要になる」と指摘する[*日経新聞 2021.11.07付記事抜粋]
▶️こういった「金融ムラ」の巨額な投融資話を聞くたびに、「晴れた日には傘を貸し、雨が降れば傘を取り上げる」大手金融機関の話を思い出す。こと環境問題に関しては、最後まで傘を取り上げることがなきよう、各金融機関の覚悟に期待したい〆
■COP26:『「数字並べただけ」…🇧🇷ブラジルの気候変動目標に厳しい見方』
[伐採されたブラジルの熱帯雨林]
🇬🇧英国北部グラスゴーで開催中の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)において、2030年までに森林破壊に終止符を打つことを宣言した国は100以上に及ぶ。その中でも特に大きな歓迎を受けた国が、🇧🇷ブラジルだ。▶︎世界最大規模となるアマゾン川流域の熱帯雨林の60%が🇧🇷ブラジルに存在しているから、というだけではない。2019年1月に極右のジャイル・ボルソナロ氏が大統領に就任して以来、🇧🇷ブラジル領アマゾンの破壊が急速に進行しているためだ。▶︎「2030年までに森林破壊停止」という目標の達成を目指すのであれば、🇧🇷ブラジルの参加は不可欠だ。▶︎だからこそ、🇺🇸米国で気候変動問題を担当するジョン・ケリー大統領特使は、🇧🇷ブラジルの環境担当大臣が11月1日、COP26の席上で2年前倒しとなる2028年までに違法な森林破壊を止めさせるという野心的計画を発表したことを称賛した。▶︎「今後の協力が楽しみだ」とケリー氏はツイッターに投稿した。▶︎だが、科学者や非営利団体(NPO)関係者、先住民グループは懐疑的だ。
◆「環境対策のリーダー」、復権は程遠く
「この3年間、森林破壊は進む一方だ」。▶︎🇧🇷ブラジルの国立宇宙研究所(INPE)に所属し、グローバルな気候変動におけるアマゾンの役割を研究する科学者ルチアナ・ガッティ氏は語る。▶︎「規制の執行状況と環境破壊に対する罰金制度を根本的に見直さなければ、そうした目標の達成は非常に困難だろう」とガッティ氏は言う。▶︎同氏はさらに、たとえ🇧🇷ブラジルがこの新しい目標を達成できるとしても、アマゾンの一部地域ではすでに大規模な森林破壊によって大量の枯死現象が生じているとみられ、手遅れかもしれないと警告する。▶︎ボルソナロ大統領の環境問題に関する論調がこれまで敵対的だったことから考えれば、2021年のCOP26に臨む🇧🇷ブラジルの姿勢には変化がうかがえる。▶︎だが、かつて「環境対策のリーダー」だった同国が復権するにはほど遠い状態だ。▶︎グローバルな気候変動を巡る交渉全般の基礎を確立した1992年の国連環境開発会議(「地球サミット」)は、🇧🇷ブラジルのリオデジャネイロで開催された。▶︎さらに🇧🇷ブラジルは2010年代初頭、森林破壊を大幅に減らして世界に模範を示すことで声望を高めた。▶︎だが、気候変動枠組み条約に署名した大半の国々の首脳と違い、ボルソナロ大統領はグラスゴーに姿を現さなかった。▶︎🇧🇷ブラジルが示した目標への批判について大統領府にコメントを求めたが、回答は得られなかった。▶︎なるほど、今年のCOP26での🇧🇷ブラジルの存在感は非常に大きい。▶︎政府・企業ロビー組織共同で設置した緑の葉で覆われたブースには巨大な双方向性スクリーンが設置され、外務、エネルギー、環境各省の当局者が定期的に一般向けのスピーチを行っている。▶︎だが、ブースに掲げられたアジェンダからは、🇧🇷ブラジルの立場の変化はほとんど見えてこない。▶︎11月3日、コーヒーを楽しむ訪問客を前に、当局者はバイオ燃料政策の宣伝に終始した。▶︎農業ビジネス界から強く支持されているバイオ燃料だが、専門家の見解では、温室効果ガス排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するためには、バイオ燃料とは決別する方針転換が必要だという。▶︎イザベラ・テイシェイラ元環境相によれば、🇧🇷ブラジルの森林破壊防止案は細部が煮詰められておらず、現実味を欠いているという。▶︎「数字が示されているだけで、戦略がまったくない」と同氏は言う。
◆求められる変化は
環境活動家が根本的な変化を期待している国は🇧🇷ブラジルだけではない。▶︎温室効果ガス排出量が世界第4位の🇷🇺ロシアには地球上の森林の約5分の1が存在しているが、ここ数年、大規模な山火事に見舞われている。▶︎🇷🇺ロシアによれば、国内の森林による年間炭素吸収能力は二酸化炭素換算で約6億トン相当だが、山火事と伐採により約半分が失われているという。▶︎グリーンピース・🇷🇺ロシアに参加する環境問題専門家ミハイル・クレンドリン氏は、🇷🇺ロシアは森林火災の消火、火災予防、さらには火災監視能力にもっと投資することが必要だと話す。▶︎「🇷🇺ロシアにおいて最も重要なのは、原野火災の面積を大幅に減らすことだ。▶︎ここ数年、その面積は着実に増加しているからだ」とクレンドリン氏は語る。▶︎🇧🇷ブラジルでは2020年、アマゾン川流域からレバノン1国に相当する面積の森林が消失した。▶︎2021年の森林消失面積は前年比では微減となるものの、依然として、2008年以来の規模であることに変わりない。▶︎ボルソナロ政権下で、伐採業者や牧場主たちは大胆になっている。▶︎ボルソナロ大統領がこれらの業界を公然と支持し、環境規制、あるいはアマゾンの広大な領域を破壊から守っている先住民保護区域に批判的であることが、彼らを勇気づけている。▶︎先住民のタウレパン族出身で、🇧🇷ブラジル・アマゾン先住民女性連合のコーディネーターを務めるテルマ・タウレパン氏は、🇧🇷ブラジル政府の声明や国際社会全体にわたる協定が森林破壊を食い止め、温室効果ガスの排出量を削減できるとはほとんど信じていないと語る。▶︎COP26に参加したタウレパン氏は、グラスゴーで「各国政府は嘘をついている。▶︎排出量を削減すると言う一方で、大豆増産やアグリビジネスに補助金を出し、鉱物資源の採掘を助成しつつ、先住民の意見に耳を傾けないのだから」と語る。▶︎アマゾンを研究する著名な気象学者の1人カルロス・ノーブル氏にとって、ボルソナロ大統領はとうてい信用しがたい。▶︎「大統領がこれまでの政治的立場を変えたと信じるべき理由はない」と同氏は話した[*REUTERS 2021.11.07付記事抜粋]
■『脱炭素で国滅ぶであってはいけない…基幹産業・製造業の構造改革待ったなし』
🇬🇧英国ではCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)が開催され、世界中で気候変動対応に意識が向いている。▶︎また、気候変動の影響は先進国、新興国などにかかわらず、その対応策に対しては待ったなしの状況である。▶︎🇯🇵日本においても気候変動に対しての動きは確認できる。▶︎2021年10月22日に閣議決定された「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略」。▶︎その中で策定されたわが国のカーボンニュートラル、いわゆる脱炭素を目指した内容は各産業や企業に影響を大きく及ぼすものだ。▶︎しかし、この状況に関して企業の一部の経営者や経営企画担当者が敏感に反応しているにとどまっている印象だ。▶︎今回はその閣議決定の中で、特に製造業がどのような影響があるのかについて考えてみたい。
◆我が国の産業からの温室効果ガスはどの程度か
同閣議決定の資料から産業別の二酸化炭素排出量をみてみよう。▶︎産業部門のエネルギー起源二酸化炭素排出量は2019年確報値で3億8400万トンである。▶︎その内訳は以下のとおりである。
△鉄鋼業…1億5500万トン(40%)
△化学工業…5600万トン(15%)
△機械製造業…4000万トン(10%)
△窯業・土石製品製造業…2900万トン(8%)
△パルプ・紙・紙加工品製造業…2100万トン(5%)
△食品飲料製造業…2000万トン(5%)
△プラスチック・ゴム・皮革製品製造業…1000万トン(3%)
△繊維工業…810万トン(2%)
△他製造業…2100万トン(5%)
△非製造業…2400万トン(6%)
このような内訳となっている。
◆鉄鋼業と化学工業で産業の二酸化炭素排出量の半分以上を占める
この内訳をみると、鉄鋼業と化学工業で半分以上を占め、その製造プロセスから致し方ないという印象、果たしてこのプロセスを電化できるのか、また生産工程上避けられない二酸化炭素の排出をCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)などで対応できるのかといった疑問が出てくる。▶︎この点に関して、同閣議決定のレポートでもすでに把握しており、以下のようにコメントしている。▶︎高温の熱利用や還元反応などの化学反応によって発生する大量の二酸化炭素排出の存在である。▶︎金属や化学、セメント産業をはじめとする多排出産業の多くは、数百~1千℃を超える高温の熱利用が必要である。▶︎そのエネルギー源となっている化石燃料は多くの場合、経済的・熱量的・構造的な理由によって容易に二酸化炭素フリー電力等によって置き換えられない。▶︎さらに、還元などの化学反応については、既存の工業プロセスを前提とする限り、原理的に二酸化炭素の発生は避けることができない。▶︎よほどの技術革新がない限り、🇯🇵日本国内での生産量を大きく引き下げるといった状況という、あまり考えたくないシナリオなしでは、大きくは二酸化炭素排出量を引き下げるということが難しいというメッセージがうかがえる。▶︎また、同閣議決定レポートは続く議論も先読みする形で、この製造を国内から海外に移した際のケースも次のように想定している。▶︎輸出入を通じた海外との取引が可能であるため、国内で生産の減少とそれに伴う温室効果ガス排出量の減少が生じても、その分の生産を他国に移転すれば、そこでの生産とそれに伴う排出を増加させることとなり、地球規模での根本的な課題解決に資さず、むしろ国内で一層効果的な排出削減を図りながら生産を継続した方が有効である可能性もあるという点についても留意が必要である。▶︎繰り返しになるが、生産量を仮に一定にしながら二酸化炭素排出量を削減しようとすると、生産プロセスの変更やCCSの展開が必要となる。▶︎ただ、こうした施策も直接的な二酸化炭素排出量を減らすことはできても、それらを維持するための電力が必要で、その電力の電源は何かというループに陥ってしまう。
◆国内の産業界の対応はどうか
一般社団法人日本経済団体連合会(経団連)も2020年6月に「チャレンジ・ゼロ」を開始している。▶︎脱炭素を目指して、二酸化炭素排出量を、「省エネ」「燃料転換・新エネ」「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」、またグリーンファイナンスや技術の海外展開支援などを通じて、「ネット」でゼロエミッションを目指している。▶︎こうした中では、省エネ、燃料転換・新エネ、CCUSの順にベースライン(特段技術進展がなく、排出削減対応も取らない場合の排出量)に対して削減量を積み上げていかなければならない。
◆脱炭素か企業収益のジレンマなのか
先ほども触れたように、生産量が減少するような状況になれば、それに比例する形で二酸化炭素排出量も減少するであろうが、生産量の減少は、特に製造業の場合には売上高の減少にもつながるし、また生産設備のキャパシティが一定の場合には稼働率の低下も招き、収益にとっては大きくマイナスに働く。▶︎経団連を中心とした「チャレンジ・ゼロ」は今後も努力は続いていくであろうが、パリ協定における2030年、2050年という時間軸においては、🇯🇵日本の産業構造そのものを転換していく必要があるのではないだろうか。▶︎10年後、20年後と時間を経るにしたがって、少子高齢化というトレンドもあり、国内の産業構造をそのまま維持していこうというのにも無理がある。▶︎こうした観点からさらに議論が進む必要があろう[*LIMO 2021.11.07付記事抜粋]
■『環境問題が後押し、欧州「2大国際列車」の合併計画…ユーロスターとタリス、コロナ禍鎮静で再始動』
2019年9月、ヨーロッパの鉄道界に気になるニュースが流れた。▶︎英仏海峡トンネルを通り、🇬🇧英国とヨーロッパ大陸を結ぶ国際列車として有名な「ユーロスター」と、🇫🇷フランス・🇧🇪ベルギー・🇩🇪ドイツ・🇳🇱オランダの4カ国を走る国際列車として知られる「タリス」の合併だ。▶︎この計画は、両社の株主である🇫🇷フランス国鉄(SNCF)と🇧🇪ベルギー国鉄(SNCB)、ユーロスターの株主であるパティナ・レイル(Patina Rail LLP、🇬🇧英国政府が保有していた株を購入した🇨🇦カナダのケベック州投資信託銀行とエルメス・インフラストラクチャーによる合弁会社)によって進められていた。▶︎当初は2020年4月を目指して進んでいたものの、コロナ禍によって計画は延期に。▶︎だが2021年10月、再び動きがあった。▶︎合併が正式に決まれば、ブランド名は「ユーロスター」に統一され、「タリス」の名は姿を消す予定だ。
◆飛行機に代わる魅力的交通手段に
この合併話は「グリーン・スピード」という愛称の下、以下の5つの目的で2社を合併させようという計画だ。▶︎「グリーン」とは、もちろん環境に優しいという意味だ。
1:飛行機に代わる魅力的な交通手段を提供し、2030年までに年間3000万人の利用者を増やすこと
2:再生可能エネルギーを最大限に活用し、列車のエコドライブ、廃棄物管理、プラスチックの除去などに関する意欲的な環境政策を導入すること
3:1枚のチケットでネットワーク上のすべての旅程をカバーし、列車間の接続を改善することで、お客様にシームレスな旅を提供すること
4:魅力的な特典やお客様専用のロイヤリティプログラムを導入すること
5:高水準のサービス品質を提供すること
合併によって情報システムや物流システム、車両の管理が統合され、運営コストの削減が可能となる。▶︎ただし、タリス用の車両は英仏海峡トンネルの厳しい安全・運用基準を満たしておらず、トンネルを通過する🇬🇧英国方面の列車で運用できないため、車両は従来通りそれぞれ用意することになる。▶︎2019年の計画発表時、🇫🇷フランス国鉄社長兼CEO(当時)のギヨーム・ペピ氏は「気候変動の問題と環境に配慮した旅行への要求は、野心的な対応を必要としている。▶︎ユーロスターとタリス、それぞれの持つ強みを結集することは、この課題に対する強力な回答となる。▶︎統合された新しい高速鉄道会社が誕生することで、より多くのお客様に対して道路交通や航空機に代わる魅力的な選択肢を提供し、高速鉄道サービスの発展に新時代の到来を告げるものとなるはずだ」と述べた。▶︎また、🇧🇪ベルギー国鉄CEOでタリスの会長も務めるソフィー・デュトゥドワ氏は、「タリスとユーロスターが手を組むには今が適切なタイミングであり、すべての旅行者にとって有益である。▶︎鉄道に関する専門知識と、それぞれの安定した株主同士を結びつけることができる。▶︎ブリュッセルはさまざまな路線のハブとして、このプロジェクトの中心的な役割を果たし、運行するすべての都市との間を結ぶことになるだろう」と語った。
◆環境問題が追い風だったが…
両社の合併は環境問題を追い風に競争力を強化し、鉄道の優位性をさらに高めるというポジティブな考えに基づいており、2020年4月には完了する計画だった。
[フランス・ベルギー・オランダ・ドイツの4カ国を走る高速列車「タリス」]
しかし、まもなく世界中を震撼させたコロナ禍によってその計画は狂い、両社の合併話は延期されることとなった。▶︎コロナ禍以前、両社の列車は🇬🇧英国、🇫🇷フランス、🇧🇪ベルギー、🇳🇱オランダ、🇩🇪ドイツの各国を結び、1日に計112本を運行。▶︎年間で1900万人近い乗客を輸送し、2018年の売上高は両社合計で16億7000万ユーロ(約2206億円)に達していた。▶︎ユーロスターは、ロンドン―アムステルダム間直通列車の運行を開始するなど、順調に業績を伸ばしていた。▶︎しかし、コロナ禍による外出や移動制限で鉄道業界は大きなダメージを受けることになった。▶︎🇫🇷フランス国鉄は2020年上半期、TGV、タリス、ユーロスターを含む長距離旅客事業の運輸収入が2019年上半期の45億ユーロ(約5944億円)に対し、57%減の19億ユーロ(約2510億円)にとどまったと報告した。
[疾走するユーロスター。コロナ禍で乗客数は最大99%減少した]
中でもユーロスターは、英仏間の厳しい出入国規制による移動禁止が続くなど、コロナ禍の影響を非常に大きく受けており、12カ月以上にわたり1日わずか1往復だけに減便され、乗客数が最大で99%減少した。▶︎危機的状況となった同社は🇬🇧英国政府へ財政支援を求めたが、🇬🇧英国に本社を置いているものの、株式の55%を保有する最大の株主が🇫🇷フランス国鉄で、ほかの株主もパティナ・レイル(🇨🇦カナダ)、🇧🇪ベルギー国鉄と純粋な英国企業ではないことから、再三の要請にもかかわらず政府は財政支援を拒否。同社は苦境に立たされることになった。
◆コロナ禍の状況変化で再浮上
その後、ワクチン接種が進んだことによるコロナ禍の鎮静化や、それに伴う🇪🇺EU圏内の移動制限が基本的に解除されたことで、乗客数は徐々に回復。▶︎現在はロンドン―パリ間で5往復、ロンドン―ブリュッセル間はアムステルダム行きを含めて3往復が運行されるまで回復し、経営もどうにか持ち直すことができた。▶︎そんな中、再びこの合併話に動きがあったのは、コネクティング・ヨーロッパ・エクスプレスがブリュッセルに到着した2021年10月4日のことであった。▶︎🇧🇪ベルギー国鉄CEOのデュトゥドワ氏は同日、合併に関わる各社の株主がこの合併に同意することが次のステップで、株主の同意により計画が進んだ場合、欧州委員会の承認がその次のステップになるとの見解を示した。▶︎欧州委員会の承認とは、独禁法などに抵触する恐れがないかの確認である。▶︎これらのすべての合意と承認が得られた段階で、初めて正式に両社が合併することになり、その後は2つの事業者の輸送計画や車両の配置計画、それぞれの販売チャネルで得られる相乗効果などを検討することになる。▶︎そして最も重要なブランド名については、2023年をメドにユーロスターのブランドで統一することが明かされた。▶︎1996年以来親しまれてきたタリスのブランドは、合併が正式に決まれば27年目にして姿を消すことになる。▶︎合併が成立した後、これまで両社の列車が運行してきた各国間の移動は、どのように変化するだろうか。
◆合併後の国際移動はどう変わる?
合併とブランドの統一があったからといって、それまでの運行系統に大きな変更が生じることはなく、当面は今の状況が維持されるはずだ。▶︎ただ、冒頭で紹介した「グリーン・スピード計画」の5つの目的で述べられているチケットの統一により、両方の列車を乗り継ぐ場合でも1枚のチケットで利用が可能になり、また乗り継ぎがスムーズにできるよう、ダイヤが調整されるだろう。▶︎また将来計画として、ユーロスターはいったん白紙となった🇬🇧イギリスから🇩🇪ドイツへの直通列車での乗り入れを諦めてはおらず、再び両国を結ぶ列車運行の可能性を模索することになるはずだ。
[ドイツ鉄道のICE3(手前)と顔を並べたタリス]
だが🇪🇺EUを離脱した🇬🇧イギリスは、加盟国間で出入国審査なしの国境越えを認めるシェンゲン条約にも加盟していないためパスポートコントロールが必要不可欠で、現在もそれが大きな足かせとなっている。▶︎ユーロスターの🇳🇱オランダ乗り入れが計画された際、出入国管理の面で🇬🇧イギリス・🇳🇱オランダ両政府の折り合いがつかなかったことが、🇳🇱オランダから🇬🇧イギリスへの直通列車運行の妨げとなり、長らく「🇬🇧イギリスから🇳🇱オランダへの片方向乗り入れ」という、中途半端な状況を生み出す原因にもなった。▶︎🇬🇧イギリスから🇩🇪ドイツへの乗り入れ実現のためには、🇩🇪ドイツ国内の停車駅構内に出入国管理事務所と制限区域を設けなければならない。▶︎これが今後の課題となってくるのではないだろうか[*東洋経済ONLINE 2021.11.07付記事抜粋/橋爪智之氏・欧州鉄道フォトライター]
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[掲載日:2021年11月7日(日)11:45]
復活の呪文は…ゆうていみやおうきむこうほりいゆうじとりやまあきらべべべ…






