芸術高校・玄関
先生が追いかけて来ないと解りホッとするチェギョン。
途端、目の前に二人の男性が立ちふさがった。
えっ、と立ち止まる。
見覚えある二人にシンのことばを思いだす。
嫌な予感。
![イメージ 3](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/c6/a5/j/o0852048014639463632.jpg?caw=800)
キム内官:「今日から入宮の予定です。
お迎えに上がりました」
チェ:「まだ、授業もおわってませんし…
ああ、荷物も
」
![!!](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/176.gif)
随行員②:「お持ちいたしました」
その手にはチェギョンの靴と鞄。
驚くチェギョン。
そして、あきらめのため息。
![イメージ 5](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/0a/cc/g/o0380001014639463633.gif?caw=800)
美術科・教室
![アート](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/237.gif)
相変わらずにぎやかな教室。
戻ってこないチェギョンが心配なガンヒョン。
新聞で知ったチェギョンと皇太子の婚約。
![イメージ 2](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/89/07/j/o0852048014639463635.jpg?caw=800)
ついつい冷たくしてしまったのだ。
休憩時間もたった一人で教室をでたままだった。
その時、教室の扉が開いた。
チェギョンかと思って振り返るガンヒョン。
しかし、入ってきたのは担任の先生。
しかも後ろから知らない男の子がついてきた。
その容姿にざわつく教室。
先生:「まったく、少しは静かにしなさい。
注目!!!
今日から私たちの星に新しい宇宙人が移住してきたわ」
生徒たち:「「「きゃぁ~」」」
拍手と歓声。
担任の紹介にも面食らうがクラスメイトにも戸惑う。
しかし、落ち着いた様子で担任をみる。
担任:「わかっているわよ。
名前は、イ・ユル。![イメージ 1](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/f7/0c/j/o0852048014639463637.jpg?caw=800)
![イメージ 1](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/f7/0c/j/o0852048014639463637.jpg?caw=800)
どう、イケメンの宇宙人でしょ?」
相変わらずの調子の担任に苦笑するユル。
またもや、嬉しい歓声。
照れくさくなるユル。
担任:「みんな、よかったわね。
彼はしかも5歳のときからイギリスで暮らしていたの。
だからいろいろ知らないことも多いから
仲良くしてあげるのよ」
学生:「はぁ~い」
担任:「じゃ、授業を始めるわよ。
ユル君、あそこの席ね」
ユルはさされた席に向い座る。
ヒスンがすかさず席を寄せると教科書を見せる。
ユル:「あ、ありがとう」
綺麗な笑顔にヒスン、真っ赤な顔。
担任が呆れたように見るがそのまま授業を始める。
ガン:「先生、チェギョンが戻っていません」
担任:「ああ、チェギョンなら早退したわ。
みんなも知っての通り、色々大変みたい。
しばらく休むようだわ。
ほらほら、そんなことより教科書を開いて」
ガンヒョンは黙ったまま空いているチェギョンの席を見る、
一人だけ沈んだ表情のガンヒョン。
![イメージ 4](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/69/2f/g/o0249001714639463638.gif?caw=800)
宮殿・東宮
![](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/332.gif)
学校から帰ったシン。
コン内官が待機している。
手帳を開きスケジュールを確認しようとする。
それを遮るように
シン:「コン内官、ユルが帰国ようだ。
今日学校で会って驚いた」
コン:「編入の手続に参られたのでしょう」
シン:「芸術高校に?」
コン:「はい。
実は、義誠大君のご希望もあって
陛下も殿下がご一緒で心強いであろうと
許可されたようです」
シン:「後でここに挨拶に来ると言っていた」
コン:「積お話もございましょう。
今日のご予定を変更いたしましょうか?」
シン:「ああ、そうしてくれ。
それから、急ぎの仕事がなければ
探したいものがあるので時間を空けてほしい」
コン:「特に急ぎの執務はございません」
シン:「では、ユルが来たら連絡を頼む」
![イメージ 9](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/f0/30/g/o0249001714639463640.gif?caw=800)
コン内官が部屋を出ていくのを見届けると
シンは、急いで暗室に向かう。
学校でチェギョンに「シン君」と呼ばれ
浮かび上がった記憶。
まだ、ぼんやりしたものだった。
それを確かめたかったのだ。
シン:「確か…ここに」
暗室の机の前に座ると引き出しを開けた。
そこにはH・Rと書かれた箱がある。
手に取り蓋を開けようとして躊躇うシン。
しかし、小さくため息をつくとそのまま机の上に箱を除けた。
シンは更に引き出しの奥に手を伸ばすと小さな箱を取り出した。
先ほどの箱より小さく見るからに古びた箱。
シンはフッと微笑むと箱を大事そうに手に取った。
そして、暗室からでてソファに座る。
小さな箱を包むように両手で優しく撫でる。
そして、記憶の扉を開けるかのようにゆっくりと蓋を持ち上げた。
中には色あせた写真と小さな折り鶴がいくつも入っている。
そっと写真を取り出すシン。![イメージ 6](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/f2/44/j/o0852048014639463642.jpg?caw=800)
![イメージ 6](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/f2/44/j/o0852048014639463642.jpg?caw=800)
シン:「クスッ…、やっぱりあの時の…。
お団子頭はそのままか?」
懐かしさと切なさがシンを襲う。
折鶴にたどたどしい文字が書いてある。
習ったばかりの文字だろうが
書道家の祖父譲りのしっかりした筆跡。
シン:「シン・チェギョン」
![イメージ 8](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/73/89/j/o0852048014639463644.jpg?caw=800)
つい口ずさんだ名前。
胸がキュンと締め付けられた。
すると…シンの脳裏に今度ははっきりと
あるシーンが浮かんできた。
![イメージ 10](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/4a/fa/g/o0300004314639463645.gif?caw=800)
~シンの回想~
![イメージ 12](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/0a/37/j/o0852048014639463648.jpg?caw=800)
イ・シン5歳。
聖祖皇帝に呼ばれ久しぶりに宮殿に来たシン。
おじいさまからユルと一緒に遊ぶように言われ
ユルの居る東宮に急ぐ。
途中、シンは廊下でユルを見かけ嬉しそうに走り寄る。
シン:「ユル!ユル!!」
しかし、ユルはそんなシンを見て顔を顰めると![イメージ 13](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/1b/70/j/o0852048014639463651.jpg?caw=800)
![イメージ 13](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/1b/70/j/o0852048014639463651.jpg?caw=800)
近付いてきたシンの頭をいきなり叩いた。
ユル:「こいつ、![ドンッ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/280.gif)
![ドンッ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/280.gif)
皇太孫殿下と呼べよ。
言っただろ、皇太孫殿下だ!!」
ユルの剣幕に驚きで泣きそうな表情のシン。
傍にいる女官も驚くものの何も言えず黙ったままだ。
シン:「…」
ユル:「ほら、黙ってないで言ってみろ!!」
![イメージ 14](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/6a/ef/j/o0852048014639463652.jpg?caw=800)
更に威圧的なユル。
シン:「皇太…孫…殿下」
シンの声が震えている。
ユル:「今度ユルって言ったら許さないからな」
その時だった。
チェ:「ユル君でいいわよ。
だって、シン君はユル君の家族なんでしょ。
家族なのに皇太…孫???殿下?
なんか知らないけど…
そんな名前で呼ぶのおかしいわ」
まるでシンを庇うようにユルの前に仁王立ちした女の子。
ユル:「チェギョン?」
驚きで目を見開くユル。
女官も思わぬ展開にオロオロしている。
チェ:「いつもいつもそんな偉そうにするもんじゃないわ」
ユル:「ここは宮殿だ。
そう呼ぶのが当たり前なんだ」
チェ:「ふ~ん、じゃ私もそう呼ばなきゃ」
ユル:「チェギョンはいいよ。
でも、シンは違う、
僕はシンより偉いんだ」
チェ:「だったら私もそんな偉い人と遊べないわ。
行こう、シン君」
再び『シン君』と親しそうに呼ばれ驚きながらも
内心、言い負かされたユルを見てすっきりしたシン。
チェギョンは、突っ立っているシンの手を取ると歩き出した。
二人の背中から
ユル:「チェギョン?
チェギョンは僕と遊ぶんだろう?」
チェ:「3人で遊びなさいって言われたのよ」
ユル:「…」
チェ:「じゃ、シン君に誤って」
女官:「チェギョンさま…なんということを」
慌てて止めようとする女官。
するとユルがむっとして
ユル:「無礼者。
僕は皇太孫だ。
謝るなんてできない。
それに、母上が言ってた。
チェギョンはお行儀が悪いから困るって」
チェ:「ふう~ん、だったらいいわ。
行こう、シン君」
そのまま二人はユルを残して庭にでた。
繋いだ手が温かく、柔らかく…意識がそこに集中する。
チェギョンのお団子頭が妙に可愛い。
楼閣の外れまでくるとチェギョンはシンの手を離した。
チェ:「シン君でしょ?」
シン:「うん」
チェ:「私、シン・チェギョンっていうの」
シン:「僕を知ってるの?」
チェ:「皇帝おじいちゃんがユル君の…いとこ?
シン君が今日は来るから一緒に遊びなさいって」
シン:「僕は知らなかった。
でも、ユル…じゃない皇太孫殿下はいいの?」
チェ:「家族にあんな意地悪いうなんて。
謝るまで知らないわ」
シン:「でも、おじいさまに叱られない?」
チェ:「あのね…内緒よ」
チェギョンはそういうとシンに近寄ると
内緒話をするように耳に口元を寄せた。
それが妙にくすぐったくてドキドキする。
チェ:「ユル君はちょっとわがままで困ってるんだって。
いつもチヤホヤされてるから
だからね、ユル君が間違ったことをしたら
私はユル君を叱ってもいいんだって」
シン:「ふう~ん」
チェ:「それより、シン君。宮殿を探検しよう」
シン:「いいよ」
二人は手をつないで駆け出した。
時間も忘れ、二人で宮殿のあちこちを歩き回り
探しに来たコン内官に見つかったときには迷子になっていた。
チェギョンのおじいさまにも初めて会った。
そのおじいさまにユルを一人残して行ったことを叱られたが
聖祖皇帝が二人を庇ってくれた。
![イメージ 15](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/43/0c/g/o0600002014639463653.gif?caw=800)
しかし、シンはその後宮殿に呼ばれることはなかった。
たぶん、ユルのご機嫌をそこねたからだろう。
シンはもう一度、チェギョンに会いたくてたまらなかったが
当時のシンにはそのすべも解らなかった。
時々、ユルと遊んでいるチェギョンを想像し
胸が妬きつくような痛みを感じた。
それが辛くていつの間にか考えないようにした。
それから、暫くしてユルの父が交通事故で急死。
恵政宮とユルの突然のイギリス渡航。
シンの父の皇位継承。
シンたちは宮殿に移り住んだ。
シンは、帝王学と称し毎日厳しい教訓の日々を過ごす。
いつしか笑顔が消え、感情を表に出さなくなっていた。
相次ぐ不幸なできごとに聖祖帝の体調が悪化し床に伏した。
ある日、お見舞いにとチェギョンのおじいさまが宮殿に来た。
たまたま、秘密の部屋からその姿を見たシンは堪らず走りだした。
しかし、寸でのところで…その人はすでに門外であった。
いよいよ皇帝が最後の時を迎えた。
枕元に一人呼ばれたシンは、皇帝にそっと小箱を手渡された。
お菓子の箱のような小箱には綺麗な紙が貼ってある。
聖祖帝:「これを…お前にあげよう。
寂しくなったら…これを見なさい」
シン:「なに?」
聖祖帝:「見ればわかる…。
いつか…また…必ず…会える日がくる」
シン:「…?」
聖祖帝:「そして…そなたを…きっと…支えて…くれる。
コン内官…この願い…必ず…叶…え…」
それが最後のことばだった。
意味の解らないままただ小箱を握りしめて悲しい別れを告げた。
しかし、慌ただしく執り行われる崩御の儀式。
そして、父の皇帝、シンの皇太子への継承式と
シンは手渡された小箱をみる余裕もなかった。
しばらくしてシンは家族と離れ東宮に移り住んだ。
広い屋敷にぽつんといるといっそう寂しくなった。
おじいさまからいただいたアルフレッド相手に寂しさを紛らわす。
葬儀の時、見かけたチェギョンのおじいさま。
悲しみに打ちひしがれた姿に声もかけることもできなかった。
シンは孤立しさらに寂しくなっていた。
それから数年、シンは7歳になった。
自室の隣に誂えた暗室。
その暗室でおじいさまからもらった小箱を見つけた。
机の引き出しから取り出し、丁寧に風を開けた。
なかから出てきたのは一枚の写真と折鶴。
すっかり忘れていた。
シン:「あっ」
心臓が飛び跳ねた。
あれほど会いたかったチェギョンの写真。
折鶴には一文字ずつ文字が書いてある。
糸で繋いだ折鶴を辿っていくと「早く元気になって」と綴られていた。
きっと皇帝の治癒を祈ってチェギョンが書いたのであろう。
シンは写真を見ながら涙を流していた。
すぐにコン内官にチェギョンの消息を聞く。
チェギョンのおじいさまも先帝の崩御から
しばらくして亡くなったと言う。
チェギョンもきっと悲しんでいるだろう…と思ったが
先帝もシン先生も亡くなり、皇太子となったシンには…
もう手の届かない人になっていた。
思い出すと悲しくなる…。
人はそういうとき…無理にでもその追憶を封印するらしい。
シンも写真を小箱に入れると暗室の机の奥深くにしまい込んだ。
![イメージ 11](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/46/d7/g/o0331003414639463655.gif?caw=800)
![イメージ 7](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/70/92/j/o0852048014639463656.jpg?caw=800)
漸くつながった記憶。
胸の閊えが取れた。
チェギョンに対して抱いた不思議な感情。
巡りあう運命の予感だったのかもしれない。
シン:「おじいさま…やっと会えたよ。
あいつ…いまだにシン君だって」
シンは写真に語り掛けた。
シン:「おじいさま…ありがとう」
その時、ドアがノクされコン内官とともにユルが部屋に入ってきた。
シンは小箱を気づかれないように棚に戻した。
![イメージ 16](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/ce/d3/g/o0367002714639463657.gif?caw=800)
東宮・シンの部屋
![](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/332.gif)
部屋にユルが入ってきた。
懐かしそうにシンの部屋を見回すユル。
なんとなく寂しそうだ。
ユルが席に座るのを待って、
シン:「じゃ…今回、完全に帰国したってことか?」
ユル:「そういうことになるね」
シン:「それにしてもなんとなく雰囲気がかわったな」
髪を染め、流行のファッションで身を固めたユル。
その微笑みは柔らかだ。
ユル:「そういうシンだって」
シン:「最後にあったのは5歳のときだった」
![イメージ 17](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/e1/74/j/o0852048014639463658.jpg?caw=800)
ユル:「そうだったな」
二人ともなんとなく気まずい。
しばしの沈黙。
ユル:「それはそうと…
結婚するんだって?」
シン:「ああ。いきなりそういうことになった」
ユル:「今のお前の性格ならこんな強制的な結婚なら
拒否すると思ってた。
氷の皇太子…イギリスでも評判だった」
シン:「そうなのか?」
ユル:「ああ、本当だ。
もしかして…余程美人だったとか?」
シンは黙って記事が載っている新聞を差し出す。
ユル:「この子?」
ジッと写真を見入るユル。
そんなユルの様子を見つめるシン。
シン:「ああ、そうだ」
もしかしたらユルも
チェギョンを思いだすかもしれない。![イメージ 19](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/44/64/j/o0852048014639463659.jpg?caw=800)
![イメージ 19](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/44/64/j/o0852048014639463659.jpg?caw=800)
ユル:「可愛い」
にっこり微笑むユル。
予想外のことばに驚くシン。
シン:「はあ?
可愛い?」
ユル:「ああ、そう思わない?」
シン:「いや、一目見て可愛いっていうタイプじゃないけど…」
改めて写真を見る二人。
シン:「…」
ユル:「…」
暫しの沈黙…。
シン:「ユルとは合わないと思う」![イメージ 18](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/21/16/j/o0852048014639463660.jpg?caw=800)
![イメージ 18](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/21/16/j/o0852048014639463660.jpg?caw=800)
ぽつんと呟くシン。
ユル:「はあ?
どうして僕がでてくるの?」
シン:「いや、なんでもない」
慌てて手を振る。
ユルは、思い出してないようだ。
ユル:「シンはどこが気にいったの?」
ユルのことばに小さい頃のチェギョンの笑顔が浮かぶ。
そして、不思議に今のチェギョンに重なった。
シン:「ああ…自分でも旨く言えないんだが…
いつも素のままでまっすぐ、本音で言葉がでる。
打算や駆け引きなどなく心のまま行動する。
だから…つい、こっちも本気にさせられる」
そういいながらフッと思い出し笑いをするシン。
シン:「感情がコントロールできず言葉がでるなんて初めてだ。
彼女といると皇太子であることを忘れてしまう。
そこが…どうも琴線に触れた」
ユル:「なんだよ、それ。
でも…確かに…彼女なら解る気がする」
ユルのつぶやきにシンの神経が尖った。
シン:「彼女ならってどういう意味?」
ユル:「写真を見て思い出した。
今日、学校で先生に追いかけられてた」
シン:「先生に?」
ユル:「服装を注意されてたようだ」
シン:「あのバカ…。
あれ程ジャージを脱げっていったのに」
ユル:「個性的でいいんあじゃない」
シン:「個性的?
どこが?
品位がない」
ユル:「そう?
可愛いと思うけどな。
でも、僕の前で慌てて脱いだよ」
シン:「なっ![ドンッ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/280.gif)
(あのバカ…俺以外の前で、ったく
)」
![ドンッ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/280.gif)
![むかっ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/034.gif)
![むかっ](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/034.gif)
ユル:「クックックッ」
面白そうに笑うユルにムカッとくるシン。
シン:「おい、彼女は俺の許嫁だからな。
間違っても好きになるなよ」
シンのことばに驚くユル。
ユル:「シン?
もしかして、嫉妬してるの?」
シン:「嫉妬?
そうか…こういう感情を嫉妬っていうのか」
ひとりブツブツ言うシンに怪訝な表情のユル。
ユル:「おかしなやつだな。
っと…皇太子に奴はないな」
シン:「俺たち家族だろう?
呼び方なんか気にするな」
ユル:「…ああ、ありがとう」
そのことばも意外というようにシンを見るユル。
ユル:「家族…?」
なんか考え込むユルに深く追求されるのを避けるように
シン:「そ、それより、お前美術科に編入だって?」
ユル:「う?ああ」
シン:「彼女もそうなんだ」
と写真を指差すシン。
ユル:「そうなの?
教室で見なかったけど…?」
シン:「入宮の準備のため早退した」
ユル:「そうか…これから色々教えて貰えそうだな」
楽しそうなユルの表情に胸騒ぎを覚えるシン。
自然と眉根を寄せる。
ユル:「どうした?」
シン:「いや、いい」
頭から不安を振り払うようにはあ~と息を吸い込むと
いつもの皇太子スマイルを浮かべる。
シン:「それより…
普通の女の子の好きなものってなんだ?」
ユル:「はあ?なんだよ。
さあ~チョコとかキャンディーとか甘いものじゃない?
でも、イギリスの子とは違うからな?」
シン:「だよな」
ユル:「いきなりなんだ?」
シン:「彼女が明日からここに来る。
家族と離れるから…寂しいと思うから…その…
表敬訪問っていうか…」
ユル:「クスッ、なんだ、すっかり気にいってるんじゃないか」
シン:「…」
図星のユルの指摘に憮然とするシン。
ユル:「おめでとう」
しかし、ユルのことばに相好を崩すシン。
シン:「ありがとう」
素直にでたことばだった。
東宮・執務室
![](https://stat100.ameba.jp/blog/ucs/img/char/char2/332.gif)
コン内:「殿下?」
シン:「はっ?」
先ほどか手に取っている書類がめくられない。
何かを考えているようだ。
シン:「ああ、すまない」
コン:「本日は…集中できないようですが?」
シンは書類を机に戻す。
そんなシンに頬を緩め乍ら…
コン:「殿下、もしや何か思い出されたのですか?」
シン:「宮殿で小さな女の子と遊んだ記憶がある。
それがシン・チェギョンだったという確信はないんだが…」
コン:「殿下…、それはチェギョン様でございます」
感慨深げに今度ははっきり肯定するコン内官。
シン:「やはり…そうだったか」
コン:「初めてこられたのは、
まだ、お父上が皇位継承される前でございます」
シン:「…」
コン:「先日、宮殿に来られたチェギョン様には、
昔の面影が残っていました。
あの時。お二人は言葉では反発されておられましたが
殿下は楽しんでおられるように感じました」
シン:「あの時はまだ…解らなかった。
でも、今日学校でチェギョンから『シン君』と呼ばれた。
その時、心の扉を開かれたような衝撃を受けた」
コン:「もしかして、チェギョン様は殿下のことを
思い出されたのでございますか?」
![イメージ 21](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/85/51/j/o0852048014639463662.jpg?caw=800)
シン:「そうではなかった。
無意識にでたようだ」
シンはそういいながら苦笑する。
コン:「そうですか。
当時もそのように無邪気にお呼びになって
シン先生が窘めておられました」
そういいながらコン内官は、懐かしそうに目を細めた。
シンの脳裏にもぼんやりと小さな女の子が浮かんだ。
コン内官は、決意をしたように真剣な目でシンを見るとコン:「殿下…聖祖皇帝陛下は始めから
殿下の許嫁にチェギョン様を…と
シン先生にお願いされたのでございます」
シン:「えっ?」
コン:「当時…義誠大君はご両親の方針もあり
帝王学を受けられ早くから皇位継承者としての自覚を
持っておられました。
しかし時には、目に余る行動も見受けられ
そのことを聖祖皇帝陛下は
好ましく思っておられなかったのです。
それで、シン先生にお願いして
同年代のチェギョン様と接する機会を設けられました。
チェギョン様は子供らしい素直な澄んだ心で人を判断し
誰にでも対等に接することができたからです」
シン:「…」
コン:「しかし、恵政宮妃はそのことを心よく思われなかったようです。
それで、聖祖皇帝はある時、
シン殿下も一緒に宮殿にお呼びになりました」
シン:「そうだったのか。
その時のこと…思い出した。
あの後も…チェギョンは宮殿に?」
内心気になっていた。
コン:「いえ、あれからは…。
皇室もいろいろ大変な事情もありましたし…」
シン:「そうか」
ホッとするシン。
シン:「僕は、とんでもない勘違いをしていた」
コン:「…」
シン:「明日、チェギョンが入宮してくるんですね」
コン:「はい、そのご予定です」
シン:「明日の予定を変更してほしい。
それと準備してほしいものがある」
![イメージ 20](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/f4/b9/j/o0852048014639463663.jpg?caw=800)
コン:「はい?」
シン:「いや、まずい」
コン:「…?」
シン:「とんでもないとこ見られたし…
その上にかなり酷いこと言ったし…、
今更…なんて説明したらいいんだ?」
青くなるシン。
そして、頭を抱え込む。
コン内官は優しく微笑むとそっと部屋を出て行った。
つづく
![\?\\? 3](https://stat.ameba.jp/user_images/20191114/09/symy1026/2c/83/g/o0050005014639449795.gif?caw=800)