宮殿・皇帝の間  
学校から帰ったシンはすぐに皇帝に呼ばれた。
並んで座わる皇帝と皇后、そして皇太后。
その前に不機嫌そうに座っているシン。
 
皇帝:「それで決心はついたか?」
 
シン:「決心って?」
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皇后:「決まっているでしょう。
    皇太子妃を迎える話です」
 
シン:「ああ、あの話ですか…」
 
シンは、大きくため息をつく。
 
シン:「勿論、検討しました。
    しかし、婚姻の意志はありません」
 
皇帝:「誰か心に決めた相手でもいるのか?」
 
するとチェギョンの顔がシンの脳裏を過る。
ヒョリンではなく?
そのことにシン自身も驚く。
 
シン:「…」
 
皇帝:「どうなのだ?」
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イライラした皇帝の声にハッとするシン。
 
シン:「そうではありませんが…」
 
するとまたしてもチェギョンの顔が浮ぶ。
「八つ当たりせず、本命にぶち当たれ」とチェギョン。
ふとシンの口元が綻ぶ。
 
シン:「では、申し上げます。
    生涯をともにする相手は自分で決めたいと思います。
    それには…少し時間が必要です」
 
3人はきっぱりと言い切るシンに言葉もない。
いつものふて腐れた態度ではなく真摯に向き合っているからだ。
 
皇太后:「そなたにはすまないと思っている。
     しかし、この話は亡き先帝と
     たった一人の大切な友人との約束なのだ」
 
シン:「いくら先帝の大切なご友人との約束といっても
    顔も見たこともない相手との結婚、
    そんな遺言を実行するなんて時代錯誤です」
 
皇帝:「皇室とはそういうところだ」
 
さすがにブスッとする皇帝。
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皇太后:「そなたの言うことも解る。
     しかし、どうだろう?
     せめて写真を見てくれないだろうか?
     なかなか可愛い子だと思うが…」
 
そういうとシンの前に写真をひろげて差し出す。
しかし、シンは見ようともしない。
 
皇太后:「そなたと同じ高校の生徒と聞いている」
 
シン:「同じ高校?うちの学校の子?」目
 
シンが関心を持ったと感じ嬉しそうな皇太后。
 
皇太后:「そうなのじゃ。
     偶然と言うか縁と言うのか…しかも同級生じゃ」
 
皇后:「ええ、確か…美術科の生徒らしい」
 
さらに驚くシン。
まさか…と思いながらも
写真を受け取ったシンの目が驚きで丸くる。
 
シン:「!!
    許嫁ってシン・チェギョン?」イメージ 4
 
皇帝:「そうだが…、彼女を知っているのか?」
 
シンは自然に笑みが湧いてきた。
姿勢を正し3人に視線を移すと嬉しそうに宣言した。
 
シン:「この婚姻、承諾します」
 
シンのことばに唖然とする3人。
 
 
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 チェギョンの家  
学校から帰ったチェギョン。
 
チェ:「ただいまぁ~目ってなにこれ?」
 
居間に入って唖然とする。
まるでバーゲンセールのように家具や家電に赤い紙が貼られている。
紙を手に取り札を見るチェギョン。
 
チェ:「差し押さえ
    えっ、これって…」
 
次々札を外していく。
ふと庭にある台に腰かけたママをみつけ急いで外にでた。
ぼんやりとしているママ。
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チェ:「これ、どうしたの?」
 
剥がしてきた赤紙を見せるチェギョン。
 
ママ:「ああ、チェギョン帰ったのね」
 
慌てて涙を拭うママ。
 
チェ:「泣いてるの?
    まさか…また、借金取りがきたの?」
 
ママ:「…」
 
チェ:「まさか、家を出て行けって言われたの?」
 
ママ:「ううん、そこまでは…」
 
チェ:「パパは?」
 
ママ:「ショックで寝込んでる」
 
ピンポ~ン音譜
玄関のチャイムが鳴った。
するとさっと顔色が変わるママ。
 
ママ:「チェギョン、でて。
    そして、ママもパパもいないって言ってきて。
    いいわね。
    家にあげるんじゃないわよ」
 
そう言うと逃げるように家の奥に入ってしまった。
 
チェ:「まさか?
    また、借金取り?」
 
気合を入れて玄関に向かうチェギョン。
 
チェ:「はい?どちら様?」
 
男の声:「宮家から参りました」
 
チェ:「(独り言)宮…家…?
     ああ、もしかしたら出前?
     ママったら、ジャージャー麺でも注文してたの?
 
ブツブツ呟きながらドアノブに手をかけると、
また落ち着いた声が聞こえた。
 
男の声:「シンさん?
     皇室から参りました」
 
チェ:「ゲッ、皇室ってまさか…?」
 
今度はチェギョンが真っ青になる。
きっと学校でのことで来たに違いない。
 
チェ:「ど、どういう要、要件でしょうか?」
 
返事をしてしまったから居留守は使えない。
声を震わせながらドアの外に呼びかける。
 
男の声:「シン・ナムギルさんに皇帝陛下から
     親書をお預かりして参りました。
     お会いできないでしょうか?」
 
チェ:「皇帝…陛下???ひぇ~」
 
急いで扉を開けるチェギョン。
そこにはブラックスーツ姿の随行員が二人立っている。
 
キム内官:「突然、申し訳ありま…」
 
チェ:「あの…、私…逮捕されるんでしょうか?」
 
キム内:「はっ?」
 
チェ:「皇太子殿下のことですよね。
    覚悟はできてます」
 
そういうと犯人が手を差し出すように両手を突き出す。
随行員は、訳が分からず唖然としてことばもない。
そこにパパとママが飛び出してきた。
 
パパ:「チェ、チェギョン姫。
    い、いったい何をしたんだ?」
 
ママ:「どちら様が存じませんがこの子はまだ高校生です。
    未成年の犯罪は保護者である私たちの責任です」
 
チェギョンを背後に押しやり随行員の前にでる二人。
 
キム内:「一体、なんのことでしょうか?
     皇太子殿下のことには違いないですが…」
 
戸惑っているが穏やかな二人。
 
パパ:「姫?
    どういうことなんだ?」
 
チェ:「???」
 
 チェギョン家の居間 
ソファに腰かけた随行員が珍しそうに家の中を眺めている。
慌てて紙を剥がしていくパパとママ。
かしこまって座っているチェギョン。
パパとママがソファに座るのを待って
随行員は持ってきた箱を丁重に3人の前で開けた。
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中には指輪と割符が入っている。
 
キム:「お亡くなりになられた聖祖皇帝陛下が
    シン先生との約束の証に送られた品です」
 
イメージ 5パパ:「シン先生?
    うちの父ですか?」
 
キム:「はい。
    御父上は先帝の書の先生、
    そして、無二の親友でもあられました」
 
パパ:「父から聞いたことがある。
    あれは本当の話だったのか?」
 
ママ:「それで…約束の証ってどういうことですか?」
 
キム:「はい、先帝は生前友情の証に
    こちらのお嬢様を皇太子殿下の許嫁にとお約束されたのです」
 
チェ:「え~~ぇ」
 
パパ・ママ:「え~ぇ」
 
大きな叫びが居間に響いた。
随行員の前で互いに夢ではないのかと頬を抓りあう3人。
戸惑いながらも穏やかに見守る随行員。
ようやく落ち着いたママが
 
ママ:「うちがこういう状態とご存じなんでしょうか?」
 
キム:「失礼ながらすでに調査ずみでございます」
 
パパ:「それでも…婚姻を?」
 
キム:「はい、それなりに体面はこちらで…」
 
パパとママは顔を見合わす。
 
キム:「実は、皇太子殿下もご承諾されています」
 
それまで黙っていたチェギョンが叫んだ。
 
チェ:「嘘、それはないでしょう?」
 
キム:「いえ、本当です」
 
チェ:「だって…殿下には…あっと…」
 
プロポーズするほど好きな子がいる…と言いかけて口を塞ぐ。
 
チェ:「と、とにかく私はこんな話お断りです」
 
立ち上がり席をはずそうとしてパパとママが必死に止める。
 
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パパ:「姫、落ち着いて」
 
ママ:「そうよ、よく考えるのよ」
 
チェ:「パパもママもお金のために
    私に結婚しろって言うの?」
 
パパ:「皇太子妃だぞ」
 
ママ:「そうよ。
    皇太子妃になったらこんなみじめな生活から解放されるのよ」
 
チェ:「やっぱり政略結婚じゃない」
 
キム:「あの、みなさん落ち着いてください。
    決して無理強いするつもりはございません」
 
見ていられなくて口をはさむキム。
 
パパ:「無理強いしてください」
 
チェ:「パパっ」むかっ
 
パパ:「お前の幸せのためなんだ。
    解らないのか?」
 
キム:「取り敢えずみなさん落ち着いてください。
    つきましては…シン・チェギョンさん。
    これから宮殿にお越し願いたいのですが…」
 
チェ:「へっ?」
 
ママ:「今、なんて?」
 
パパ:「まさか、今すぐ婚礼なんて?」
 
キムは、苦笑しながら
 
キム:「そうではございません。
    殿下が是非、チェギョン様とお話をしたいからと
    申されておりまして」
 
チェ:「はあ?」
 
キム:「殿下が必ずおつれするようにと申されました」
 
チェ:「…」
 
シンの考えが解らず考え込むチェギョン。
 
パパ:「しかし、高校生の娘が一人で宮殿に出向くなんて…」
 
困惑気味のパパ。
 
チェ:「いいわ。直接会ってきちんと話をしてくる」
 
チェギョンは、キッと唇を結ぶと気合を入れる。
 
キム:「では、準備ができたらでてきてください。
    車でお待ちしています」
 
キムたちはそういうと先に部屋を出て行った。
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ママ:「大丈夫?」
 
チェ:「大丈夫だよ。
    そのかわり…断ってもいい?」
 
パパ:「どうしてもいやなら…
    いや、断ってこい」
 
ママ:「そうね、さっきは動揺したけど
    うちとじゃ身分が違いすぎて確かに大変だわね」
 
チェ:「パパ、ママごめんね。
    じゃ、着替えてくる」
 
チェギョンは、部屋に向かう。
廊下にあるおじいちゃんの書の作品や本棚まで
赤い張り紙がついている。
それを見つめ切なくなるチェギョン。
 
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宮の車に乗って景福宮にやってきたチェギョン。
イメージ 12宮殿の中に入るとまるで
テレビドラマのような衣装をつけた人々が
忙しく行きかっている。
しかもいたる所に豪華な調度品が並んでいる。
チェギョンは、そんな様子を珍しそうに
見ながらキム内官について進んでいく。
そして、通されたのは、接見の間。
 
キム:「こちらでお待ちください」
 
ハッとするチェギョン。
急に緊張し身を固くする。
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チェ:「は、はい解りました」
 
キムがでていくと女官がお茶を運んできた。
 
女官:「五味子茶でございます」
 
女官はテーブルにお茶をセットするとでていった。
チェギョンは、きれいなピンク色のお茶を手に取ると
ゆっくり口をつけた。
 
チェ:「美味しい」ラブラブ!
 
シン:「俺と結婚したらいくらでも飲めるぞ」
 
チェ:「ブッ」あせる
 
突然後ろから声がしてお茶を拭き出した。
 
チェ:「ごほっ、ごほっ」
 
むせるチェギョン。
振り向くとイ・シン皇太子殿下がドアに寄りかかり立っている。
口元には意地悪そうな笑みを浮かべている。
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シン:「ようこそ、景福宮へ」
 
チェ:「シ、シン君」
 
シン:「シン君?
    まったく礼儀知らずの奴だな。
    お妃教育をする尚宮が大変だ」にひひ
 
チェ:「お、お、お妃教育って
    誰が結婚するっていったのよ」
 
シン:「あれ?
    承諾したから来たんだろう?」
 
シンがチェギョンの傍に歩いてきた。
 
チェ:「馬鹿言わないでよ。
    顔も見たことない相手は嫌だっていったのそっちでしょ」
 
シン:「クックックッ…しっかり聞いていたんだな」
 
チェ:「あ、それは…ってか
    ポロポーズするほど好きな子がいるのに
    どうして私と結婚するなんて言ったの?
    もしかして、振られたからやけになっての」にひひ
 
ニヤッと笑うチェギョン。
するとシンの表情が固くなりチェギョンを睨む。
言いすぎたとドキッとするチェギョン。
謝ろうとしたが、
 
シン:「聞いてたらわかるだろう?
    彼女には夢がある。
    俺のために諦めてほしくない。
    それに好きな子を窮屈な宮に閉じ込めたくない。
    だから、別にショックでもない」
 
冷たい言い方だった。
聞いているうちにムカムカしてきたチェギョン。
 
チェ:「私にだって夢があるって思わない?」
 
シン:「フン」
 
鼻で笑うシン。
 
チェ:「やっぱり、最低な人ね。
    私に朝の仕返しでもしてるつもり?
    あなたに夢を聞いてほしいとは思わないけど
    家族のために…って一瞬でも結婚しようかと
    迷ったことが腹立たしい。
    私、はっきりこのお話お断りします」
 
チェギョンがシンを睨む。
 
シン:「家族のためって?」
 
チェ:「あのたに関係ないわ」
 
シン:「借金のことか?」
 
チェ:「ぐっ」
 
シン:「皇太子妃になるとそういうのは
    宮はなんとかしてくれると思った?」
 
チェ:「デリカシーのない人。
    そんなこと本人に普通言わないでしょ」
 
シン:「割り切った方がいい」
 
チェ:「…」
 
シン:「お互いにその方が気が楽だろう?
    どうせ先帝の遺言じゃ断れない」
 
チェギョンは悲しくなってきた。
言い換えず気力もない。
 
チェ:「…もう黙って。
    今日のことはすべて忘れるから」
 
チェギョンはポケットからおじいちゃんの指輪をだすと
シンに差し出した。イメージ 15
 
チェ:「これ、返す」
 
しかし、受け取らないシン。
チェギョンは、机の上に指輪を置く。
そしてサッと立ち上がりシンに頭を下げ
部屋を出ていこうとした。
 
シン:「待て、いや待ってくれ。
    違うんだ。
    さっきいったこと…本心じゃない。
    本当は…3度目の出会いを期待していた」
 
慌ててチェギョンの手を掴む。
そして、ポツンと呟くシン。
 
チェ:「へっ???」
 
シンのことばの意味が解らず振り返る。
 
チェ:「なんのこと?」
 
今度は真面目な顔でチェギョンを見つめている。
 
シン:「誤解があるみたいだけど、
    別にヒョリンと結婚したかったわけじゃない。
    単にこの結婚を避けたかっただけだ」
 
チェ:「はあ?そんな酷いよ」
 
シン:「だから、お前と話をしてからヒョリンに正直に話した。
    自分かってだって怒ったが
    その気がないと断ったのはヒョリンの方だ。
    これで友情が壊れてもしかなたない」
 
チェ:「…」
 
シン:「結婚する気はないと父上たちにはっきり言った。
    でも…許嫁っていう人の写真をみせられ
    心臓が飛び出すほど驚いた」
 
チェ:「なに…それ」
 
シン:「お前と靴箱でぶつかってから
    頭の中にお前のいろんな表情が浮かんでくる。
    今まで感じたことがない感情が現れて…制御できない。
    でも、それが嫌じゃないんだ。
    結婚は、生涯をともにできると思う人としたい…
    そう父上に言ったんだが
    お前の写真を見た瞬間…この人だと確信した。
    理屈じゃなく心が感じたって
    そう言ったら信じてくれるか?」
 
チェ:「…」
 
チェギョンは信じられない展開に戸惑う。
 
シン:「お前の夢…聞かせてほしい。
    叶えることは簡単じゃないかもしれないけど…
    できるだけ努力する。
    宮での窮屈な生活も二人で変えていこう。
    お前とならできそう…いや、やってみたいと思う」
 
チェ:「…」
 
黙っているチェギョンに焦るシン。
 
シン:「ほかに聞きたいことは?」
 
チェ:「バカシン」
 
シン:「はあ?」
 
チェ:「素直じゃないんだから」
 
いつの間にか涙がチェギョンの頬を流れた。
 
シン:「じゃ、いいのか?」
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チェ:「おじいちゃんに感謝しなきゃ」
 
シンの顔がぱっと輝く。
 
シン:「よし、おばあ様に会いに行こう」
 
シンがチェギョンの頬の涙を指で拭う。
そして、机の上の指輪をつまむと
 
シン:「これ、今はめさせてくれる?」
 
チェ:「プロポーズしてくれたら」
 
シン:「…」
 
チェ:「ほかの人へのプロポーズを聞いたのよ」
 
シン:「気になる?」
 
チェ:「当然」
 
シンは一呼吸すると
 
シン:「シン・チェギョンさん、僕の心を捧げます。
    だから、ずっと傍にいてくれませんか?」
 
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チェ:「キャッ、キザ~」ラブラブ!
 
シン:「バカ、人がせっかく…」
 
ふて腐れるシン。
そんなシンを見上げると
 
チェ:「シン君、ずっと傍にいます」
 
シン:「……」
 
嬉しそうに微笑むシン。
 
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数日後、二人の婚約が皇室から発表された。
婚礼の儀は、二人が高校を卒業してからだが
チェギョンはお妃教育のため、婚約後入宮した。
 
 芸術高校・玄関  
いつものように宮のリムジンが入ってきた。
群がる生徒たち。イメージ 18
車からシンが降り立つ。
悲鳴に似た歓声が生徒たちからあがった。
シンは、車を振りかえると
躊躇うチェギョンの手を引いて
車から引っ張り出した。 
生徒たちから再度、黄色い歓声が起こる。
恥ずかしそうなチェギョン。
 
シン:「大丈夫だ、堂々として。
    俺が付いてる」
 
チェギョンは、満面の笑顔でシンにコクリと頷くと
胸を張って歩き出した。
 
                          【第1話:完】
第1話は、これで完結です。
この後の二人についてはみなさんで妄想してくださいね。
 

         \¤\᡼\¸ 3素材は、『kissme…』のAKKOさんに頂きました。
           http://blogs.yahoo.co.jp/kissme_0516