イメージ 1


皇帝は場の空気が和んだことを感じ、一旦話を切ることにした。
ファヨンも穏やかな表情を浮かべ、ユルたちのやり取りを見ている。
ユルも陰りのない笑顔でシンをからかっている。
皇帝は、そのようすに大きな荷物を下ろした気がした。
ふと、皇后と目が合う。
 
皇后:「…(ご苦労さま)」
 
皇帝:「…(ありがとう)」
 
まるでそのことばが聞こえたように互いに思いやり優しく微笑みあう。
皇帝は、ゆっくりとコン内官を振り返る。
コン内官も感慨深げにシンたちを見ていたが
皇帝の視線を感じ皇帝に視線を移す。
満足げな様子の皇帝にコン内官も軽く目礼して応える。
そんな2人の様子を見ていた皇后。
 イメージ 3
皇后:「コン内官。    
     デザートはあちらのテーブルでいただきましょう。
     すぐに準備を…」
 
コン:「承知いたしました」
 
コン内官は、皇后にも優しく微笑むと部屋をでていった。 
内官が部屋をでてしばらくするとベランダのテーブルに
女官たちがデザートを並べ出した。
並べ終わると尚宮が
 
チェ尚:「準備ができました」
 
その声に一同はテーブルに移動した。
自然に大人たちと子どもたちが2つのテーブルに別れて座った。
皆の表情が穏やかでどこか晴れ晴れとしている。
 
イメージ 4
  
先ほどとがらっと変わった家族の雰囲気に尚宮も女官たちも驚いている。
~いったい何があったのだろうか?~
しかし、誰も口には出さないが安堵したように明るい笑みを浮かべて見守っている。
ただ、ソ尚宮とクァク尚宮だけが
腑に落ちないというようにファヨンをチラチラを盗み見ていた。
皇帝はそのようすを見ながら
まだ、終わっていないか?最後の仕上げが必要だ」と心の中でため息をついた。
 
 
イメージ 7
 
 
~テラス~ 
その時、運ばれてきたケーキをほおばったチェギョンが
思わず大きな声をだした。イメージ 2
 
チェ:「うふ~ん、美味しい」ラブラブ!
 
ヘミョ:「うん。ほんとうね」
 
チェ:「やっぱり最後はデザートよね。
    幸せな気持ちになるわ」キラキラ
 
そんなチェギョンの笑顔に
一瞬、愛しげに目を細めたシン。
しかし、次の瞬間、
呆れたように口角をあげると手を伸ばす。
 
シン:「ほら!!
    ゆっくり食べろよ。
    口の周りににクリームが付いてる」
 
シンがサッと指でクリームを拭う。
そして、その指を自分の口に持っていくとペロンとなめた。
 
チェ:「エッ?」目
 
そして、ポケットからハンカチを取り出し口を拭こうと再度チェギョンに手を伸ばす。
思わずのけぞるようにしてその手から逃れようとするチェギョン。
 
シン:「動くな。まったく子供みたいに」
 イメージ 5
固まるチェギョン。
シンが優しくチェギョンの口元を拭く。
 
チェ:「ウッ、シン君…?」
 
集中する皆の視線に 
チェギョンがみるみる真っ赤になる。
 
ヘミョ:「う・ううん」シラー
 
ヘミョンの咳払い。
 
ユル:「(呆れたように)まったく…」
 
そこでシンもようやく自分がしたことに気づいて頬を染める。
 
シン:「…」あせる
 
ヘミョ:「あ・あら?シンたら、なに赤くなっての?
     もしかしたら私たちのこと眼中にもなかったの?」
 
さすがにヘミョンも隣のユルが気にかかる。
シンの態度にハラハラしていた。
しかし、すぐに
 
ユル:「それは問題だな。
     独身者が2人もいるんだからちょっとは気を使えよ」
 
ちょっとシンを睨むユル。
しかし、顔は笑いをこらえている。
 
シン:「コホッ、すまない」汗
 
チェ:「…」
 
皇帝も皇后もユルを気遣っていたようで
ユルの言葉にホッとしたようにため息を漏らした。
ファヨンは、思いもよらない家族の気遣いに胸が熱くなる。
そんなファヨンに皇太后がそっと膝の上のファヨンの手を握った。
ハッとして顔をあげるファヨン。
皇太后が優しく微笑んでファヨンに頷いた。
 
皇太后:「もう、大丈夫じゃ」
 
皇帝:「これからはこうして時々皆で食事をするようにしよう」
 
皇太后:「そうじゃな。
      これからはいろいろなことを話し合おう。
      皇室もこれからの時代を生き残っていくために
      皆で知恵を出し合い、支え合っていこうではないか?」
 
皇后:「…そうですね」
 
皇后は頷きながら同意を求めるように…イメージ 6
ファヨンに微笑む。
 
ファ:「…ええ」
 
ファヨンも小さく頷く。
その途端、ソ尚宮の表情が固まる。
信じられない…」と言うようにファヨンを見つめる。
その視線に気づいたファヨンは
戸惑ったように視線を伏せた。
今度もその様子を皇帝は見逃さなかった。
ここまできてまたファヨンの気持ちを揺さぶられては堪らない。
皇帝は意を決して一同を見渡す。
 
イメージ 8
 
皇帝:「今日は、色々なことがあったが実に嬉しい日になった。
     実は以前から、私はシンとユルとこれからの皇室について
     ゆっくり話をしてみたいと思っていた。
     そなたたちもこれまで私の公務を共にする機会があり、
     ある程度皇室の役割も実感してくれたのではないだろうか?
     ユルは英国王室もみてきたであろう?
     どうだ?」
 
皇帝は先にユルに問いかけた。
 
ユル:「はい…」
 
ユルは少し考えてから
 
ユル:「皇室は君臨すれども統治せず…これが立憲君主国制の基本的な精神です。
     勿論、イギリスでも皇室はそのように徹していました。
     しかし、言いかえれば有名無実の存在」
 
ファ:「ユル!」
 
慌てて嗜めるファヨン。
しかし、皇帝は笑みを浮かべたまま
 
皇帝:「続けなさい」
 
ユル:「国民の税金で着飾り、幸せな振りをしていればいいが
     私生活まで知りたがり、少しでも羽目を外すと叩かれ…
     それでも抗議するまででなんの力もない。
     宗社に尊厳に恥じぬ皇室の尊厳を取り戻すため
     私はもう少し皇室は強くあってもいいと感じました。
     父上が望んだ皇室はそういうものであったと理解しています」
 
皇帝:「なるほど…。
     シンはどうだ?」
 
シン:「ユルの考えは解らなくはないが時代の流れに逆行している。
    というか…、過激な方法だと思います」
イメージ 9 
ユル:「どういう意味だ?」
 
シン:「実は以前は、俺も同じことを思っていた。
    ずっと、イ・シンという個人を封印していた。
    だから、いつか…自由に空を飛びたいと思っていた」
 
シンはそこでフッと笑みを漏らす。イメージ 10
チェギョンは、何度もそう言うシンを見てきた。
「自分の意見が言えるようになったら離婚してやる」
「辞めるんだ。皇太子を…」
「俺には秘密がない」
きっとシンはその時のことを思い出しているのであろう。
チェギョンもちょっと辛そうにシンを見上げた。
 
シン:「しかし、チェギョンと結婚して考えが変わった」
 
一同が一斉にチェギョンを見る。
シンもゆっくりチェギョンを見下ろす。
そして、優しく微笑みかけた。
チェギョンも微笑み返す。
 
シン:「いつだったか…チェギョンに言っただろう?
    皇室は国民が望むしあわせの象徴、偶像だ。
    だから時には、ショーマンシップが必要だ。
    そのために、行事では無理にでも微笑み、手を振る。
    時には頬にkissして愛し合ってるような夫婦の振りをする。
    それで国民は満足し安心する…と」
 
チェギョンはコクンと頷く。イメージ 11
 
シン:「そしたら…
    それはあなたが勝手に思っているだけで
    国民をばかにするな…
    とチェギョンに睨まれた」
 
一同が驚いたようにチェギョンを見る。
 
チェ:「睨む…なんて…そんな…
 
皆の視線を感じ戸惑うチェギョン。
 
シン:「あのことばは衝撃的だった。
    そして、私たち国民は心から皇室を愛し、皇帝陛下を尊敬しているの…って。
    未来の国王たるあなたを誇らしく思っていたいのに…。
    そんなふうに言われて俺は恥ずかしかった。
    皇太子妃らしくしろなんて言ってのに
    ずっとチェギョンの方が解っているって思った。
    それから、考えるようになった。
    自分の立場や役割…そして、チェギョンの存在を…」
 
シンは愛しそうにチェギョンを見下ろす。
 
シン:「今はこんなふうに言える。
    例え、実質的な権限はなくとも皇室は全国民の尊敬の対象だ。
    そして、伝統と平和を愛する韓国国民の代表でもある。
    だから、皇室は実質的な権力よりも伝統の守り手であり、
    国民統合の求心力としての役割の方が重要なんだと思う。
    権力はなくとも僕らが発するメッセージの影響は大きい。
    だからこそ、国民と共に歩む皇室であらねばならないんだ」
 
皆がなるほど…というように頷いている。
 
ユル:「かなわないな」
 
ユルが苦笑する。
 
皇帝:「いや、ユルも将来の皇室について考えてくれていたことは嬉しいことだ。
     しかし、決められた憲法を守り、尊重することもまた我々皇室が持つべき道理ともいえる。
     世界にある王室は君臨するより、国民と共に歩む皇室を目指しているのであろう」
 
ユル:「はい。家族の集まりということで考えたことをいったまで。
     陛下のことば胸に刻みます」
 
皇帝:「うむ」
 
ユル:「それにしてもシンは立派な皇太子だよ」
 
シン:「俺だってそうは言っても実際どうしたらいいのかなんてまだまだ解ってない。
    だけど…チェギョンが一緒だったらなんとかなりそうに思う。
    なっ?」
 
チェ:「エッ?
    そんな…無理だよ」
 
ヘミョ:「大丈夫よ。
     なんと言ってもチェギョンは国民の代表、代弁者だし、
     すでにシンはチェギョンと共に歩んでいるし…
     というか引っ張られているし」
イメージ 12 
チェ:「ええぇ~ぇ、そんな…」
 
シン:「姉上、もういいですよ」
 
皇后:「ヘミョン、からかう状況でないでしょう?
     あなたって本当に…」
 
眉根を寄せている皇后。
しかし、笑いをこらえているのが解る。
 
皇太后:「オホホホ…、良いではないか?
      世間もそういう風潮にあるのではないか?
      妃宮のご両親も…それで上手くいっておる」
 
そう言っていかにも楽しそうにクスクス笑う。
 
皇帝:「これで私も安心してシンに皇帝の座をまかせることができる。
     そして、義誠大君には、シンと共に皇室を支えていって欲しいと思っている。
     姉上…、ユルも立派になった。
     姉上もこれからはゆっくり自分のために余生を過ごされてはいかがでしょう?」
 
ファ:「…はい」
 
ファヨンはもう反論する気もなくなっていた。
チェギョンの偉大さを見せつけられた気持ちだった。
ソ尚宮もクァク尚宮もそんなファヨンを諦めたように見つめていた。
皇帝はようやく胸を撫で下ろすことができた。
 

                                                          \¤\᡼\¸ 3素材は、『kissme…』のAKKOさんに頂きました。
                               http://blogs.yahoo.co.jp/kissme_0516