by love
もう一つの家族
チェギョンの家
シンは車をチェギョンの家の前に停める。
さすがに今日は取材陣もいなくて以外にすんなり家の中に入ることができた。
チェギョンが元気よくドアを開けて
チェ:「ただいまぁ〰〰っ」
パパ:「姫〰おかえ…り」
パパが走る様に玄関に飛んできた。
そして、チェギョンの後ろに立つシンを見て言葉を飲み込む。
シン:「こんばんは。
お邪魔します」
パパ:「アッ、今夜は殿下が送ってきてくださったんですか?
わざわざ…」
シン:「はい、昨夜はチェギョンが父を心配してきてもらって
本当に心強かったと家族も喜んでいますし、私も安心して公務を終えることができました。
直接お礼も申し上げたくて今日は私が送って参りました」
パパ:「それはご丁寧に…」
そう言いかけるパパを押しのけてママがでてきた。
ママ:「あら、やっぱり殿下のお声だと思ったら…。
(パパに向い)いつまでこんなところで…?
(シンに向かって)まあ、殿下が…送ってくださったのですか?
チェギョン、ほらあがっていただかなくては…」
パパ:「いや、しかし、もう遅いし…」
チェ:「シン君、あがって」
パパ:「…」
シン:「(気まずく…)はい。
お邪魔してよろしいでしょうか?」
パパ:「しかし…グッ」
そんなパパに肘鉄をしてから
ママ:「なにを遠慮しているのですか?
さあ、どうぞどうぞ」
チェ:「シン君、ほら…」
チェギョンに引っ張られてシンが慌てて靴を脱ぐ。
パパは端っこに押しやられている。
そんなパパを気の毒なまなざしで見ながらシンが頭を下げ前を通りすぎる。
ため息をつきながら皆の後ろからリビングにはいるパパ。
チェギョン家・居間
ソファにチェギョンと並んでシン。
向いにパパとママ。
横にチェジュンが座っている。
ママ:「昨夜は皇后陛下直々にご容体を知らせていただきましたが、
その後皇帝陛下のご様子はいかがですか?」
シン:「はい、すっかり気分はよくなったようで
今日は家族と食事ができるほどになっております」
チェ:「ママ。シン君のお姉さまも帰ってこられたの」
パパ:「お姉さまって…ヘミョン皇女さまか?」
チェ:「そうなの。お父様のことが心配でっておっしゃってた。
昨日は一緒のお部屋でお話をしたのよ。
凄く素敵なお姉さまだった」
パパ:「いや〰以前テレビで拝見したことがありますが
ボーイッシュな感じの知的な美人でしたねぇ〰。
いや〰いや〰生で拝見したいものです」
チェジュン:「生っていうか?」
チェ:「そうよ。皇女様なのに」
ママ:「あら〰、すみませんね。
実は、ファンらしいんですよ」
シン:「へ〰ぇ。そうなんですか?」
パパ:「いや、ファンというか…
アハハハ…」
チェ:「今度、お目にかかれるわよ。
ねえ、シン君」
シン:「勿論ですよ。
姉もユーモアがありますのできっとお父様と気が合うと思います」
パパ:「アッ、そうなんですか?
いや〰、これは楽しみです」
ママ:「…」
ニヤニヤしているパパをみて呆れている。
シンは、『今だ』と思い、居住まいを正しパパとママに向き合う。
シン:「実は…、今日は折り入ってお願いがあって伺いました」
チェギョンが緊張してシンの傍でかしこまる。
パパ:「ヘッ?折り入って?」
ママ:「お願…い?」
パパとママが顔を見合わせて『何だろう?』というように首を傾げる。
シン:「チェギョンさんとの結婚を少し…
いや、かなり早めたいと思っているのですがお許し願えないでしょうか?」
パパ:「…」(絶句)
ママ:「かなり…とは?」
シン:「高校卒業と同時ぐらいに…」
パパ:「そ・そ・それは早めすぎです」
シン:「…」
パパ:「ま・前は急がないと…婚約だけというので…」
ママ:「パパ、理由を聞かないと…」
パパ:「いや、理由は何であれダメだ。早すぎる。
チェギョンだってこれからまだまだしたいこともあるはずだ。
なんのために芸術高校にいったと思ってる。
デザイナーになるっていって…張り切っていたのに。
せめて、少しは…その夢・夢を…。
皇室なんてとんでもない格式のあるところに嫁ぐんだ。
苦労は目に見えている。
なにもそんなに早く…グッ」
怒りと共に目が潤み言葉が詰まる。
シン:「…」
チェ:「パパ」
パパ:「すぐに会いに行くこともできないし、帰ることもできないんだぞ?
食べ物だって違うし…そりゃ、豪華なディナーかもしれないが、そんなのはすぐに飽きるんだ。
しきたりや行儀だって厳格で…家みたいにパジャマでウロウロしたり、
寝ころんで漫画よんでお菓子食べてなんてできないんだぞ」
シン:「…(はあ?)」
チェ:「ちょっとパパ…」
チェジュン:「皇室でなくてもそんなことしたらだめだろうが…?」
ママ:「あなた、ちょっと落ち着きなさい」
パパ:「うるさい
俺の言ってること、なにか間違っているか?」
ママ:「そうじゃないわよ。たしかにそうよ」
シン:「…(ええっ!!納得するのかい?)」
ママ:「でも、なにか理由があるんでしょう?
それを聞いてからでもいいじゃない」
パパ:「理由があることぐらい…そんなことはわかってる。
それでも、だめだ」
シン:「…申し訳ありません。
お父様のおっしゃること…よくわかります」
パパ:「じゃ、話しはこれで終わりだ」
シン:「…」
チェ:「パパ!!
一方的にそんなこと言わないでよ!!!
早く結婚したいのシン君だけじゃないんだよ。
私もはや」
シン:「チェギョン」
シンがチェギョンを止める。
目で「それ以上言うな」と語っている。
シン::「取り敢えず、この話は…もういい」
パパ:「…エッ?」
いきなりシンが話しを終えたのでちょっと良心が痛む感じのパパ。
喜んでいいのか…チェギョンの顔色をうかがう。
唇を尖らし不服そうなチェギョン。
それをなだめるようにシンが明るくチェギョンに
シン:「そうだ。
チェギョン、前に家族でするゲームがあるとか言ってなかったっけ?」
チェ:「はあ?」
ママ:「殿下?」
パパ:「ヘッ?」
突然のシンの話にあっけにとられた感じの3人。
チェジュン:「ククク…どういう作戦?」
そんな3人にお構いなくさらに明るく
シン:「ほら、言ってたじゃないか…。
ユン…なんとかだっけ?」
チェ:「ちょっとシン君。なんで今それなの?」
シン:「いいから、みんなでしたいんだよ」
チェ:「うん?ユン?ユンノリのこと?」
シン:「そう、それそれ」
そのことばにちょっと気まずかったパパが顔をパッと輝かせた。
パパ:「ユンノリ…か。よし、やろう。
いや、殿下もなかなか庶民的な遊びをしっているではありませんか」
いそいそと隣の部屋に入って準備を始めるパパ。
その後を
シン:「お手伝いします」
とシンがついていく。
ポカンとしているママとチェギョン。
チェジュンはニヤニヤしている。
隣の部屋でパパと一緒に道具を並べだしたシン。
シン:「お父さん、これはどうするんですか?」
パパ:「それはそこの床に敷いて。
これの棒(ユッ)投げて…これが駒だ」
その様子を居間から3人は見守っている。
チェ:「シン君…」
チェジュン:「兄さん、やるな〰。
しっかりパパの心を掴んだみたいだよ」
ママ:「殿下、侮れないわね。
下心がありあり感じるんだけど…?」
そう言いながら隣の部屋に入っていくママとチェジュン。
ママ:「ねえねえ、これってチーム戦でいきましょうよ」
パパ:「そうだな。チェギョンと殿下。
そして、私たち3人だ」
シン:「いいですね〰チェギョン?
ここにきて。
よし、気合いを入れるぞ」
チェギョンの肩を組む。
チェギョンもなんとなくシンの気持ちがわかり
チェ:「よ〰し、負けないわよ」
がっしりシンの方に体を寄せ腕を組む。
シン・チェ:「アジャアジャファイティン!!」
パパ:「何を…言うか」
3人もスクラムを組み
3人:「「「アジャアジャファイティン!!!」」」
パパ:「さあ、先行を決めるぞ。
ジャン・ケン・ポン」
いきなり手をだされとっさに手を出すシン。
シン×パパ
パパ:「勝った」
シン:「はあ〰そんないきなり…」
チェ:「シン君、いいからいいから」
真剣な表情のみんな。。
ゲームが開始した。
パパ:「よ〰し、それ」
4本の棒が転がった。
いわゆるサイコロと同じやくわりで4本の棒の裏表をたして駒をすすめるのだ。
パパ:「よ〰し」
抜きつ抜かれつ接線の2チーム。
どんどん加熱していく。
チェ:「キャ〰、シン君。全部裏だ。4点だよ」
思わずシンに飛びつくチェギョン。
そのようすにムスッとするパパ。
気づかない二人はさらにハイタッチした後さらに抱き合う。
パパ:「よ〰し、見てろ」
気合いが入る。
所が…でたのは裏表2つずつ。
パパ:「ありゃ、2点?」
シン:「イエ〰ィ!!」
ママ:「あと1回ね」
チェ:「最後よ。シン君」
シン:「お父さん、僕たちが4点まけてますよね」
パパ:「ほほ〰そうなだ。
もう、勝ちも同然」
シン:「もし、僕たちが勝ったら?」
パパ:「4点といえば勝ちはこっちのもんだ」
シン:「それはわかりませんよ」
パパ:「よ〰し、しっぺなんてのはどうだ?
こうして、ペシペシっと叩くんだ」
シン:「いや、それより…。
僕のお願きいてください」
パパ:「…なに?」
チェジュン:「ヤッター、そういうことか?」
パパ:「じゃ、まけたらあの話は無ってことでいいのか?」
シン:「しょうがないですね」
チェ:「シン君、ダメだよ。勝ち目ないよ」
パパ:「そんな簡単にあきらめられるものだったということだよね。
チェギョン、解ったか?」
チェ:「シン君」
シン:「チェギョン、お父さんだって本当は僕らのこと、理解しようとしてくれてるんだよ。
でも、なにか自分に納得する機会がいるに違いないんだ?
もし、今回がダメなら次に解ってもらう方法を考えるだけだ。
あきらめるんじゃない。
それに俺はこんなふうな家族の雰囲気が欲しかったんだ。
今日は、凄く楽しかった。
それを経験できただけでもいいんだ。
無茶言ってるのは俺たちだよ」
チェ:「シン君…」
パパ:「…」
シン:「でも、お父さん。
もし、僕たちが勝ったら考え直してください」
パパ:「考え直す?」
シン:「はい」
パパ:「願を叶えよ…ではないのか?」
シン:「まさか…。いくらなんでも大事なチェギョンとの結婚を
こんなことで決めたくありませんよ」
パパ:「…」
シン:「さっき理由といったでしょう?
こういうことを宮の家族ともしたいんですよ。
まあ、無理でしょうが…。
でも、チェギョンならできそうな気もするんですよ」
パパ:「皇帝陛下が?ユンノリ?
皇帝が?…ククク…皇后が?…ククク」
シン:「想像していただくのは構いませんが…人に言わないでくださいよ」
パパ:「ウホン、解って…(ククク)…おります」
シン:「では、いいですか?」
パパ:「仕方ない」
シン:「よし、じゃいきます」
全員が固唾をのんで棒(ユッ)を見守る。
コロンコロン…
全員:「「「「「あ〰あ〰あ〰っ」」」」」
ようやく止まった。
表が3本、1本がぐらぐら重なり揺れている。
すべてが表でないと勝ちはない。
誰かのゴクリと唾を呑む音が聞こえる。
グラグラしていたのが裏になりそうに動いた。
チェ:「え〰〰ダメ〰」