by love
シン君
映像科・教室
シンは、教室に帰ってからも思い出すのはチェギョンの表情だ。
驚いたり、怒ったり…でも、最後は、しっかりシンの話は聞いてくれていた。
あの涙はどんな意味があるんだろう?
「こんなこと言われて嬉しくない子なんていない」
たしかにそう言ってくれた。
チェギョンは他の女の子とは雰囲気が全く違う。
シンをみて驚くことはあってもあの一種独特の憧れるような瞳はない。
寧ろそれはユルに対して向けている視線のように感じる。
だから、シンのいう「皇太子ではなくてイ・シンとして見てほしい」という言葉の意味を
理解し、受け止め考えてくれそうな気がする。
悩んだ末の行動だったが、「あれでよかった」と思いたい。
「チェギョンは、いったん決めたことは諦めないところがある」…ユルは確かそう言った。
仮に…断られたとしてもユルのいうようにジタバタせず受け入れよう。
『天命を待つ』その心境だ。
シン:「…(さて、つぎの行動に移さなければ…。きっと今頃混乱しているだろうな?)」
心の中で呟きながらチェギョンに触れた頬の感触を思い出し胸が熱くなった。
学校の食堂
食堂で昼食を食べているチェギョン、ガンヒョン、スニョン、ヒスンの4人組。
チェギョンは、やはり「心ここにあらず…」といった感じで箸を口にくわえたままボーとしている。
ヒスン:「ちょっと、チェギョン?」
チェ:「…」
スニョン:「ちょっと、変じゃない?(ヒスンに耳打ちする)」
それを耳に挟んだガンヒョン。
眼鏡をきりっと手であげながら
ガン:「シン・チェギョン」
チェ:「ヘッ?何々?」
ガン:「まったく。ビシッとしなさい。
まあ、先生に叱られるのはいつものことだけど…」
チェ:「失礼ね(ニヤニヤ)」
ヒス:「何よその顔。嫌味言われてるってのにニヤニヤして」
チェ:「顔?」
両手で頬を挟んでごしごしこすっている。
ヒス:「ほんと、考え事してるかと思えばニヤニヤ…」
スニョ:「なにかいいことでもあった?
今日は…ユル先輩の来る日だったけ?」
ガン:「こないよ」
これだけ言われてても言い返す気もなさそう。
しかも嬉々とした表情で3人を覗き込むようにして、
チェ:「ねえ、あんたたち結婚のことって考えたことがある?」
3人:「「「結婚???」」」
チェ:「声が大きいわよ」
ガン:「あんたまさか…?熱でもあるの?」
そういってチェギョンの額に手をあてる。
その手をはらって
チェ:「熱なんてないわよ」
ヒス:「なんか夢でも見た?」
チェギョンの目の前で手をヒラヒラしている。
スニョ:「春でもないのに浮かれたこと考えてからに」
まだニヤニヤしているチェギョン。
つきあってられないって感じで3人は食事を始める。
チェ:「まだ、高校生だから早いわよね〰」
チラッと横目でそんなチェギョンをみるガンヒョン。
スニョ:「まだ言ってる。
でもまあ、凄く素敵な人が現れてプロポーズされたら別だよね」
ヒス:「そうよね〰例えば殿下とかユル先輩とか…(うっとり)」
チェ:「ええ、そう?皇太子殿下にプロポーズされたら考える?
そうよね?(ニタニタ)」
ガン:「なにバカなこと言ってるのよ。ばかばかしい。
あり得ないことよ」
チェ:「…(そうでもないのよね)でも、もし、もしものことよ」
ヒス:「OKにきまってるでしょ」
スニョ:「だけどさあ…皇太子ってことは皇室に嫁ぐってことだよね。
それって一般庶民じゃむりでしょ?」
チェ:「エッ?」
ヒス:「だよね。ユル先輩の方が可能性はあるのかな?」
ガン:「…はあ、あんたたちって本当に暇ね。そんなこと考えてどうするのよ」
チェ:「そう…なのね(ガックリ)」
ガン:「…」
ヒス:「はあ〰、って、でもなんでこんな話してるんだろ?」
スニョ:「チェギョンが変なこと言いだすから…早く食べよ」
急に考え込んだチェギョン。
ガンヒョンはやっぱり探る様にそんなチェギョンをみていた。
食べ終わらるとスニョンたちは、次の授業の当番だからと
アトリエに行ってしまった。
ガン:「チェギョン、あんたなんか隠してない?」
チェ:「ヘッ?」(ドキッ)
ガン:「はあ…まあ、いいわ。
いつでも相談に乗るからね」
ガンヒョンは、そういうとポンと肩を叩いた。
チェ:「ガンヒョン?」
チェギョンは、思わず「相談に乗って」といいそうになり慌てて俯いた。
ガン:「…」
それでも黙ったままのチェギョン。
言いそうにないと思ったガンヒョンは気分をかえるように
ガン:「そろそろ、行こうか?」
そう言って立ちあがった。
チェギョンは切羽詰まったような表情でガンヒョンの腕を掴んだ。
チェ:「ガンヒョン、今はまだ言えないの…
でも、一人では解決できそうにない問題が…できたの。
相談に乗ってね」
ガン:「いいよ。いつでも言って」
チェ:「うん、ありがとう」
チェギョンは、すごく心強かった。
授業を受けていても体育館の裏でのシンとの出来事が頭から離れなかった。
アトリエ室から渡り廊下にでると手すりにもたれるとぼんやりしていた。
すると反対側の扉が開いてヒョリンがでてきた。
互いにハッとしてなんとなくチェギョンは頭をさげてしまった。
ヒョ:「…」(ただ黙って見つめかえず)
チェ:「???」
なんとなくヒョリンの視線は揺れてるように感じる。
先に視線をそらしたのはヒョリンだった。
気のせいかフッと口元に笑みを浮かべたような…。
そうして、体をひるがえすと教室に入って行った。
チェ:「なんだろう?何か言いたかったのかな?」
チェギョンは、シンと二人が音楽室で話していた情景を思い浮かべた。
チェ:「(不思議だな…こんどは私が皇太子の秘密の恋人になるの?)」
そんなことを考えるとなんだか憂鬱になってくる。
ため息をつくと教室に入って行った。
チェギョンの部屋
家に帰ってからもチェギョンは悶々と考えていた。
しかし、どう考えてもどう返事をしていいのか検討もつかない。
チェ:「はあ〰〰〰ぁ」
ため息ばかりがでてくる。
チェ:「だって…結婚しようかっていわれたけど…
会うこともできなくて?
話もできない?
でも、お互いを知り合う?
じゃ、どうやって???」
そこに携帯の着信音が鳴り響いた。
チェ:「誰?」
ディスプレイのナンバーに見覚えがない。
チェ:「はい?」
シン:「イ・シンだ」
チェ:「イ・シ…ン?(ハッとして)嘘?
皇太子?殿下?
どうして私の番号を?」
シン:「ユルに無理やり聞きだした。
大変だった。
許可なく教えられないって。(苦笑)
でも、プロポーズしたこと話したらしぶしぶ…だからユルを責めないで」
チェ:「え〰そんなこと話したんですか?」
シン:「ああ、しかたない。
あとで連絡先も聞いてないことに気がついた。
時間がなくて十分話ができなかったから…まずかった?」
チェ:「いや、その…」
シン:「もしかして、前にいった憧れっての人ってユル?」
チェ:「えっ?ああ、その…です」
シン:「わるかったな」
チェ:「いえ、それが別に…単なるあこがれで」
シン:「どうせ、片思いなんだろう?」(シンは、チェギョンの憧れの人がユルだとしってホッとした。
このようすじゃ、あまり深刻に考えなくてもよさそうだ)
チェ:「そんなことわからないじゃない」
シン:「でも、思われてる方がいいだろう?」
チェ:「…」
シン:「どうした?」
チェ:「殿下のイメージが…なんだか違うんです」
シン:「だろうな、自分でも感じてる」
チェ:「はあ?」
シン:「おい」
チェ:「はい?」
シン:「名前」
チェ:「名前?」
シン:「皇太子殿下は、却下。シンでいい」
チェ:「そんなこと…無理です」
シン:「じゃ、オッパ?」
チェ:「…」
シン:「おい?聞いてるのか?」
チェ:「それは…ちょっと」
シン:「普通、恋人にってそう呼ぶんだろう?」
チェ:「恋人って」
シン:「クスッ…ちょっと早すぎか」
チェ:「はい」
シン:「じゃ、殿下以外だったらなんでもいい」
チェ:「う〰ん、シン様」
シン:「だめ」
チェ:「シンさん」
シン:「いまいち」
チェ:「う〰ん、シン…シンくん。うん
シン君」
シン:「…」
チェ:「あの〰」
シン:「シン君、OK」
チェ:「クスクス…シン君」
シン:「うん、いいな」
チェ:「はい」
シン:「ところで、こっちは、チェギョンって呼んでいいかな?」
チェ:「あっ?はい(もう、すでに呼んでたと思うけど…)」
シン:「それで肝心の話なんだけど…
あのままじゃ多分、どう返事をしていいか困ってるんじゃないかと思って。
あの時も言ったようになかなか会うことも話をすることもできない。
そこで二人が付き合ういい方法を思いついたんだけど…」
素材は、『kissme…』のAKKOさんに頂きました。