先日―といってもけっこう前になるが、FMで「詩人の恋」を聴いた。
Bass寄りのバリトンで、もちろん移調しての歌唱。
「詩人の恋=テノール」のイメージが刷り込まれている僕としては
なかなかに新鮮な感覚だった。
ふと、ブックオフに売っていた「詩人の恋」のアルバムを思い出す―。
プレガルディエンの息子ユリアンとルサージュのデュオ。
ピアノがピリオド楽器で、歌唱も時代考証で再検証された解釈。
これは、と思いYouTubeで試聴したが、
盛り込まれたアイディアの方が音楽的感興を上回った。
例えば第4曲。
最も大切なフレーズ「Ich liebe dich」で
何と共演者のピオーが声を重ねているのだ。
クララの楽曲や詩人の恋と関わるリート、ピアノ曲、
さらに歌劇「ゲノフェーファ」での二重唱に採用されたOp.43など、
アルバム選曲が素晴らしいだけに、どこか煮え切らない思いだけが残った。
(小さな)棺桶にその思いを入れて海に流すことにしよう―。
♪
この度振り返るは、以前図書館で借りた
深水黎一郎氏の音楽ミステリー小説。
タイトルはまさに「詩人の恋」。
19世紀と現代―その時代を跨ぎ、
シューマンがこの歌曲集に込めた秘密に迫る―。
(ブラームスも重要な役で登場)
史実とフィクションが入り混じり、
その塩梅と結末にやや唐突さを感じつつも、
とても楽しめた一冊であった。