この間届いたCD。「エレクトロニカ」や「ノイズ」に相当する音楽ゆえ、「ブログのタイトル」に反するが、(仮)がついてるし、先回も取り上げたし、「ま、いいか」―と思い、再び取り上げた。

 

 

前のブログで取り上げた「ovalcommers」と同時に注文したのに、「commers」が先に届いた都合で、今回のブログ紹介となった。

 

 

 

ところで「英語」にcommers」という言葉は存在しない。だが、「commerce」は存在する。

commerce

【名】

  1. 〔大規模な〕商業、交易、貿易
  2. 〔学問としての〕商科、商業学
  3. 〈古〉〔知的・社会的〕交流、交際
  4. 〈古〉性的交渉
 

なかなかに「意味深」である―。あの作品に「エモーショナル」な側面が感じられた理由の1つの説明にはなるかもしれない(ま、本来説明はいらないのだが)。

 

 

 

 

ではこの度はどうか―。「ovalprocess」である。

process

  1. 〔ある目的に向けた〕一連の行為[変化・作用・過程・作業]
  2. 〔製品の〕製造[処理]過程[プロセス]
  3. 〔時間や過程の〕進行、経過、推移
  4. 《法律》訴訟手続き
  5. 《法律》召喚状、訴状
  6. 《生物》突起
  7. 《印刷》写真製版
  8. 〔化学薬品による〕ストレート・パーマ
 

クラウディオ・アバドはBPOとの共同作業について、「最善の中間報告」という趣旨のコメントを残したと記憶している。

 

「プロセス」は必要不可避なのものように感じられる。いきなり「結果」には結びつかない。

「過程」を省略できるのは「天才」の所業なのかもしれないが、「彼ら」は「本当に」一握りの人々である―(あの「シャーロック」ですら、「観察」という「プロセス」を経由する)。

でも僕たち「庶民」は、「プロセス」を何度もこなすことで「ショートカット」が経験上可能になる。それは「直感」という姿で現れてくることだろう。

 

僕たちは生きている限り、人生という「移行期」の「只中」にいるのだ―。

 

 

 

 

「ovalprocess」は2000年リリース作品。もう20年以上経つのか―。

でもその「斬新さ」は失われてはいない―僕が、この音楽を支持する所以である。

 

 

全10曲。日本盤のみボーナストラックが5曲収録されている。「シークレット」はないようだ。

 

1曲目はいきなり「ノイズ」で始まる。ただ不思議なゆったり感がある。

電子音の「唸り」は相変わらずだ。「ゴリゴリ」の「アンビエント」音楽。

 

「untitled」。この曲だけタイトルが付いている(「アンタイトル」だが)。

 

 

2曲目。グリッチ音が耳を引っ掻く。「プリペアドCD」の効果か。背後で何かがうごめいている。

 

 

3曲目では、さらに「エラー音」が強調されている。「逆回転再生」とかもしてそうだ。

プレーヤーの故障すら「楽しめ」そうだ。本当に「故障」してても気づかないかもしれない。

 

「Track 3」。これが「音楽」として聞こえるのが不思議で仕方ない。

 

 

4曲目は6分近くある、アルバム中「最長」の楽曲。マーラー/交響曲第9番第1楽章冒頭の「アウフタクト」に似た雰囲気のフレーズを見出せる。「緩徐楽章」の性質を特に感じる曲だ。

もちろん、アルバムの中で僕が好きな曲の1つだ―。

 

「Track 4」。穏やかな中に、ちゃんと「起伏」も用意されている。5分55秒。

 

 

5曲目。さらに「穏やかに」曲が進む。オルガンのようにも聞こえるフレーズが興味深い。

そこに「ノイズ」が絡む。この曲展開は意外だ―。

 

 

6曲目ではエレキ・ギターのような「うなり」で始まる。「音飛び」によるグリッチ音がリズムを刻み続ける。「うなり」も続く―。

 

 

7曲目。「電子音」通しのおしゃべり―。何を語ってるかは不明。

 

 

8曲目は「シンフォニック」な印象だ。何故そう感じるかは僕にもわからないのだが―。

ただ、スケールの大きさを感じる。壮大な風景が心のスクリーンに映し出される思いがする。

もちろん、モノクロームな風景ではあるが―。

 

「Track 8」。確かに「空間性」を感じる―。

 
 
9曲目ではライトな印象になる。ドローンのように鳴り響く「中高音」が心地よい―。
後半、結構「カオス」気味になるが、再び冒頭のアンビエンスが戻る。構成感がある。
 
 
最後の10曲目は不思議と「ジャズ」のテイストに近いものを感じた(果汁1%未満)。
「落ち着いた大人の音楽」の印象だ―。この曲もかなり気に入っている。

 

「Track 10」。グリッチ音がビートを刻んでるように聞こえる。静かな音楽だ。

 
 
 
続いては日本盤のみの特典ボーナストラック。
 
11曲目は電子音楽らしい「キャッチ―さ」を感じる。だが、バックでは叙情的なメロディが鳴っているような気がする。やがてそれが前面に現われる―。
 
12曲目。少し「民族音楽」的なイメージを抱かせる曲。「アフリカ」あたりで鳴ってても違和感ないかも。そう思うと、電子音の「うなり」が「生物」のように感じられてくるから不思議だ―。
 
13曲目は途中、「レーザービーム」を受けたような感覚に陥る。まだやられたくない。
 
14曲目。「打ち込み」が奇妙にオシャレ。
 
15曲目はボーナストラックで一番長い4分台。少し「ラスボス」の雰囲気がある。
 

 

「海外盤」にはシークレットトラックが存在した。これがその音源―。

 

 

 
 
全体的に「コマース」より「アンビエント色」が強いアルバムだった、と言える。
この「プロセス」を経て、翌年あの「コマース」へ至ると思うと、感慨深いものがある。
 
もちろん、それは完成された「プロセス」、極めて高度な「中間報告」なのだ―。
 

 

 

 

 

マーカス・ポップへのインタビュー動画。コンピューターでの「作曲」も披露。

 

 

2003年リリース。「SO」。豊田恵里子(vo)とのコラボレーション。