蔦谷でビデオを借りてきて映画を見るなんて、二年ぶりくらいです。
ジャズ スタンダードで、マイファニーバレンタインという曲があります。バラード調のじわ~~とした曲ですが、歌詞とアンマッチな気がして。
この曲が映画で使われたことを知り、どんな映画か見てみました。★4つはいける、渋くていい映画です。

「ファビュラス・ベイカー・ブラザーズ」(邦題{恋のゆくえ})

製作指揮:シドニーポラック(過去の作品:真夜中の銃声;サブリナ;ザ・ファーム)

3流のショービジネスに生きる兄弟ピアニストの愛情を現実的なパロディを駆使して、うまく渋く描いたものです。奮起して頑張れば、落ちたとしても2流だろうと思われるセンスのある弟と、才能には恵まれず生活に汲汲となる兄、それは見ている観客の私そのものの等身大です。
兄弟が転機を計り、ショーアップするために雇った女性ボーカリストはマドンナ夢見る場末のウエートエレス。
女は、昔は自分のデビューのために体を売ったこともあるけど、いまは自分の才能という誇りを胸に宿してます。そして着実にチャンスを生かして兄弟と袂を分かち、2流を目指してCM歌手に転向します。
弟と女の恋のきっかけは、彼が兄に隠れて、自分を癒すようにジャズパブでピアノのアルバイトをしていることを発見したとき。
しかし、別れ際に、これでもかというくらいの悪態をついて弟を叱咤激励します。

「あたしは売女だったけど、過去と決別していまは目覚めて、誇りを持ってるわ。あんたは能無しの兄さんの後ろで、世を恨んでいるだけの、卑怯な臆病者よ!」・・・こんな感じでしょうか?

邦題{恋のゆくえ}というのは、女と弟の恋のゆくえのことですね。それは弟の望み次第。望みって言うのはアーチストとして立ち向かう勇気で、恋のゆくえも、それ次第ってことでしょう。

兄弟の岐路の場面で、弟が兄の元を去り自分の道を選ぶまでの葛藤をリアルにしかも軽妙に描いています。

最後の字幕スーパーのところに、やっとバレンタインのボーカルが入ります。映画とはぜんぜん関係がありません。ですからこのマイファニーバレンタインという曲は生い立ちからして不思議な曲なんですね。

<http://www.h4.dion.ne.jp/~kitabosi/sampleMyFunnyVallentine01.mp3>

ちなみにシナトラは若干軽いタッチで歌っています。

<http://www.h4.dion.ne.jp/~kitabosi/sampleMyFunnyVallentine02.mp3>

そこで字幕スーパーの場面で、このバレンタインという曲を持ってきたことをもう一度考えると、一種の逆説的暗示だと想えばいいでしょうか?
「バレンタイン、あなたの、そのままの姿が好きよ。」
そのままの姿をしているときっていうのは、世を羨んだり、恨んだりしないものです。三流は三流、二流は二流、一流は一流、ナスはナス、かぼちゃはかぼちゃのありのままでいるってこと。それは妥協して流される事とは違うよ、ってことです。弟の場合は、今が自分以下に甘んじているひねた姿であって、立ち向かわないで拗ねている今を抜け出る勇気を持てということ、それ以上でもないしそれ以下でもないと。