ある方のblogを読み、ある人を思い出しました。
私の中での彼女の名前は「もぐもぐさん」。
初発の術後、腸閉塞になりかけて絶食だったとき、
2人部屋の相方だったのがもぐもぐさん。
私は絶食1週間とか10日とか、何の修行なのってぐらい
食べ物が恋しかったけど、
同室の彼女のところにも朝昼晩の配膳がなくて。
彼女もどうやら絶食で、ポートから栄養点滴を受けているようでした。
そして私よりもずっと長い間「絶食」のようでした。
でも、ときどき食べ物の気配があるんですよね。
空腹で感覚がびんびんに冴えている私には、
食事から戻った母の服から香る食べ物の匂いすら明確に感じられるぐらいで。
薄いカーテンのあちら側に「何かおいしいものがある」ことは如実にわかるのでした。
食い意地が張ってるだけともいいます

彼女はどうやら、身内の方に食べ物を買ってきてもらっては
「味わって」いたようです。
最初は、食べちゃだめなはずなのに食べてる~大丈夫なのかな?と思ってたんですが
どうやら「もぐもぐ」しては「ぺっ」と吐き出してるみたいで。
空腹絶頂の私は「わー何それ、何その技!私にもできる?私もしていい!?」
と思ったんですが、どう考えてもおいしい食べ物を口に含んで噛んで、
そのうえで吐き出す、なんてことができる気がしなくて。
いや、もったいないとかそういう意味じゃなくて、欲望的に、絶対飲み込む自信しかないっていう…。
当時の私は「器用だなぁ…」とのんきに思い、おとなしく絶食に耐えていましたが、
味わう楽しみを失わないための彼女なりの方法だったんだなと今ならわかります。
私も、何ヶ月も絶食が続いたとしたなら同じ方法を試したかもしれません。
「食べる」が無理でも、「食べ物を味わう」という楽しみのために、
飲み込まないなんて無理、じゃなくて、飲み込まなければ色んなものが味わえる、って思って。
その後抗がん剤投与のための2泊3日の入院の際もたまにもぐもぐさんと
同室になることがありましたが、やはりもぐもぐぺっと上手に味わっているようでした。
あれから丸6年。
もぐもぐさん、どうしてるかな?ってたまに思うんです。
ぺってしなくてもよくなって、おいしいもの食べられてたらいいなぁって。
同室だったのにほんとの名前すら覚えていなくて恐縮なんだけれど

もぐもぐさんも「あの隣にいたおデブな子、元気にしてるかな?」って
思い出してくれてたらうれしいなぁ
