父が入院している病院から
着歴があった。
休日に電話…?
留守録を確認すると
「至急電話ください」
これは…
まさか…
ざわざわした気持ちで
電話をかけるやはり
急変の知らせだった。
意識レベルが低下
血中酸素濃度も著しく低い
今夜のうちにも…と考えられる
できれば今すぐ
来られたほうがいい…とのこと。
取り急ぎ支度して
一番早い新幹線に乗り込む
母にも電話して
先に病院に向かうか
私と合流して向かうか…を
尋ねる
「一緒に行く」というので
最寄り駅からタクシーを拾い
実家に寄って
そのまま病院に向かった。
連絡もらって数時間後
病院到着。
父はまだ息がある…!
「お父さん…! 来たよ」
血圧は96
血中酸素濃度は75程度。
当直の医師が来られて
説明を受けた。
「夕方4時ごろは、
こちらの問いかけにも
答えていらっしゃいました。
その後、巡回の看護師が
様子の変化に気づきまして…。
痰を吸入したところ、
血が混じっていました。」
そして、
胃からの逆流物が気管を塞いで
窒息状態になったこと…
肺に炎症があって、
出血していること…
などが、父の急変の可能性だと
考えると仰った。
そうこうする間にも
血中酸素濃度が少し上がり
78〜80を推移し始めた。
それを見て
母は
「上がってる! 持ちこたえるかも」
と言っていたけど…。
病院内での待機はできず…
一度退去することになった。
退去するとき
看護師さんに
「変化があれば、
すぐにご連絡します。
先のことを判断するのは
難しいですが、
覚悟はなさってください。」
そして、延命治療のことを
尋ねられた。
どちらかといえば、勧めない感じを
醸し出して…。
「無理な延命はしない、
その方向でいいよね?」
…と、わかりやすい表現で
母に問いかけたところ、
母も頷いた。
(ほつ…)
病院は実家からも
まあまあ遠いので、
近くのホテルを探して
泊まることにした。
…といっても、
病院―実家の距離を
10とすると
病院―ホテルは5くらいだが。
早目の時間にシャワーして
あがった瞬間、化粧をし、
寝るような、
起きてるような、
そんな感じで
しばらくいたが…
ふと、寝落ちしたとき
電話が鳴った。
「お父さま、
呼吸も心拍も不安定です。
すぐ来てください…!」
タクシー呼んで
時間・行き先…から
運転手さんも察知したのか…
大雨の中
めっちゃ飛ばしてくれて…
(その阿吽の心遣い、感謝…)
病院に再び着いた。
父につけられていたモニターは
全部、0 を示していて。
父の体が一切の活動を停止したことを
知らせていた。
6時間ほどまえに会ったときと
同じ表情だったけど
もう息をしている様子はなかった。
看護師さんによると
最期は苦しまずに
息を引き取ったそうだ。
体を綺麗に清拭して
霊安室に移された。
病院の霊安室は
いつかテレビで見たような
ところではなく
暖かな感じがする部屋だった。
葬儀社の寝台車が到着して
父を乗せ、私たちも載せてもらって
走り出した。
夜が明けて
雨も上がって…
雨上がりの澄んだ空気
明るい朝の陽の光の中
車は静かに走った。
病院にリモート面会するために
レンタカーで走った道を進む…
もう、この道を
走ることはないんだなあ…
と思うと、父の死が
すごく形になって迫る気がして
ものすごく悲しくなった。