オーディオに関する記事
レコードカートリッジの修理記録です。


AT-14Eは1974年に発売されたVM型のカートリッジ16000円
当時の大卒初任給が78000円くらいだそうで、つまり給料の20.5%
現在の大卒初任給が230000円くらいらしいので現在の価値に換算して47000円くらい
VM(MM)型カートリッジ単体としてはなかなかの高級品ですね。
audio-technicaの中では上位のAT-15Eはボデーがダイカスト・メタル製、AT-14Eはプラスチック製の違いのようでハイエンドな製品でした。

今回は本体OKだけど片チャンネル音が出ないというジャンクを見つけたので
直せるものなら直してやろう!という感じで安く入手しました。

ちなみに1976年発売のAT-15EをリニューアルしたAT-15Eaは持っています。
たいへんいい音出してくれるお気に入りのカートリッジなのですが
なんせ交換針が希少すぎて普段使うのをためらいがちです。
針先が同じ超微粒子研磨の楕円針なので、弟分であるこのAT-14Eも期待の音を出してくれるのでは?と淡い期待で格安で入手してみました。

入手したAT-14E
お借りした写真(入手当時のもの)

あれ!針カバーもしないで針面地下につけておいてる・・・
針は無いのかな?と思いましたが

カンチレバーはありますが、針先はどういう状態かわからない・・・
しかも全体的にすすけて汚い!!
まあ最悪ヘッドシェルだけでも使えればそれでいいかな(^^;
くらいの軽い気持ちで入手
※7,8年前だったらたぶん100円とかで入手できましたけどね、安いといっても今は20倍以上はしますよ・・・あー悲しい時代だ( ノД`)シクシク…

まずは掃除
交換針は外して
カートリッジ本体もヘッドシェルから外し配線も全て外してから掃除開始

カートリッジ本体はこの「キイロビン」と綿棒で磨きました。
キイロビンは本来自動車のヘッドライトの油膜取りが目的の商品ですが
これが細かくいいコンパウンドでオーディオ周りの繊細な部分の汚れ取りに重宝します!軽いものなら錆び取りもできます。


10分かからずに磨き終わったのがこれ、ピカピカになりました(^^)v

 

ヘッドシャルやライン、針のプラ部分もカンチレバーも
こちらは綿棒にかんたんマイペットをつけて掃除しました。
カンチレバーは特に繊細な部分なのでかるく撫でるようにやさしくやさしく
 
いよいよ修理
まずは針先、問題ないみたいですね。
 
  ※VM型の簡単な説明(私の理解)
  
  これは手持ちの廉価版AT-10の針ですがこれでご説明
  VM型というのはカンチレバーがプラの土台に刺さっていて
  その土台にカンチレバーと90度の角度で小さな永久磁石が
  左右V字型に2本ついてます。カタツムリの角状のものがそれ。
  それら一式がダンパーといわれる柔らかいゴム(写真の白いと
  ころ)にはめ込まれていて交換針のベース(緑の部分)に
  セットされてます。
 
  針先で拾ったレコード盤の凹凸でカンチレバーが振動し、
  振動が左右のV時の永久磁石に伝わって
                     ※これはAT-14E
  
  カートリッジの2枚の板はコイルに繋がっており、
  コイルの横で磁石が動くと電流が発生する
  つまりフレミングの左手の法則でしたっけ?たしか😅
 
  まあ簡単に言うとそういうVMカートリッジです。
 
そこで今回の問題点なのですが
このV時の永久磁石の片側が取れちゃってたんですね~
そりゃ片側音が出ないはず!!
そしてその取れた永久磁石は上の緑矢印のコイルに繋がる板にくっついてました。
永久磁石なんでね、手近な強磁性体についてたんでしょうね(笑)
※一瞬でどう修理しよう!?と動揺して写真撮り忘れました・・・
 
ちなみにこの磁石は長さ1.5mmくらい太さは0.2mmくらいの角形の超微細なもの
正直言って顕微鏡で作業したいくらいのものです。
近くのものが見にくくなってきた私の眼には非常に厳しいもの(^^;
 
トライ1:穴を開けて突っ込んでやる!
なぜ取れたかはわかりませんが、取れたんなら元に戻してやる!
磁石の刺さっている土台はプラスチック、取れた穴が見当たらないのでマチ針の先を熱して
プラに穴をあけてそこに突っ込もうと思い何度もトライ。
しかし何故か全然穴が開かない・・・
 
トライ2:ダメもとで接着剤で着けてやる!
こんなに細いものが思い通りくっついてくれるのか?
やや面倒くさくなってきて、もうどうにでもなれ気分でピンセットでつまみました。
もちろん金属のピンセットはだめですよ!
ただ、彼(永久磁石)は簡単にピンセットの先から跳ねてどっかに飛んでいき
あまりにも小さすぎて二度とお目にかかれなくなりました(´;ω;`)ウッ…
 
どっかに使えなくなったVM型の針無かったかなぁと探したところ
ありました!カンチレバーが折れたSONY VL-37Gの交換針ND-137Gです!
こちらの永久磁石は丸型です。まあいいか
これから永久磁石だけ取るという作業がまた難関
ND-137Gからダンパー部分ごと無理やりもぎ取って
その数ミリのパーツの一部をプライヤーで挟み、別のプライヤーで永久磁石をつかみ
グリグリ回してみたところ抜けません!そんなに生っちょろいものではないです。
「どうせプラ部分に埋め込まずに接着するだけなので根元から折っちゃお」
というわけで抜けないのでボキッと折ってもぎ取ったやりました。
※ダメなら永久磁石もう一本あるしね(笑)
 
トライ3:期待できる?接着剤で着けてやる!2
こんどは飛んでいかないようにめちゃくちゃ慎重に
ピンセットでつまんだ永久磁石を接着剤は付けずに試しに取り付ける予定の位置まで持っていってみました。
もう一つの正常な方ももちろん永久磁石なので、そちらに引き寄せられたりしてなかなかむつかしい作業です。
 
苦戦しつつも接着するべき位置まで持っていくとあら不思議!
磁石が勝手に引っ付いて立つんです!!しかもV字型に
なるほど~もともと抜け落ちてたと思っていた磁石は根元から折れてたんですね(^^;
土台には磁石のかけらが付いているので新しい永久磁石をうまく引き付けて立たせてくれてる。
なんかこれはいけそうな予感ですね!!
 
今度は接着剤をほんの微量、0.2mmの断面だけに着けて所定の位置に持っていき
なるべくきれいなV時でカンチレバーと直角になるようにつまようじで微調整
 ※これは磁石断面がまっ平というわけでもないのでなかなか難しい。
 ※使用した接着剤はメタルロックという金属用の2液混合協力接着剤です。
 
これで良し、と丸一日乾かしました。
指で触ってもガッチリと確実にくっついてます。
矢印の方が取り付けた永久磁石、①は作業面から、②はひっくり返して
乾燥中にちょっと微妙に傾いたようですね(^^;
 
さてテスト
いよいよ本体に取り付けてテストです。
取り付けた永久磁石が正確にコイルに繋がる板の間に収まるように確認しながら
じわりじわりと取り付けました。
ちょっと歪んでる分きれいにど真ん中ではなくよく見ると板に接触してるようなしてないような??
まあでもカンチレバーをつまようじの先で軽くつつくと自由に動くので大丈夫かな?
 
レコード盤の上に針を落とすと・・・
見事にきれいな音が左右チャンネルから聴こえてきます!感動の瞬間でした(^^)v
これはいい音です!AT-15Eaに近い繊細だけどダイナミックで広がりを感じる納得の音!!
 
これが本来のAT-14Eの音かどうかはわかりませんが
替えの針が入手できるまで、この修理品で十分楽しんでいけそうです!
 
最後までありがとうございました。