それは丁度、憧れのアイドルや初恋のクラスメイトと握手をしてその手を洗うのが勿体なく感じてしまうような高揚に似ている気もするのだが、どきどきと胸が不必要な程に高鳴って、何を対象としているのかさえ解らない曖昧なものであるが、ある種期待のようなものが喉元まで競り上がってきて、
酷いときには息さえ出来なくなってしまう時がある。
二、三度繰り返し着用しては洗濯を更に重ね、洗剤や乾燥する過程で移る部屋の匂いが生地に馴染んでくるとそこで漸く己の所有物であることを実感出来る気がするのだ。
新しい物に警戒と興奮と、
マーキングの意識を抱く辺りは随分と獣地味た独占欲なものが何とも言えず、重ねる毎に目に肌に馴染み始めたのを見ると諦めと一緒に満ち足りた気分がやってくる。
清らかに、鮮やかなる物にこそ背徳あれ。
それは蓋を開けてみればチープな独占欲でしかないのだけれど、
「やですねぇ、愛し過ぎて前も後も見えません」
肩からずり落ちているケープをかけ直しながら彼の人の寝顔を視線でなぞらう。
昼の日の下と違い、真っ暗な夜の色に彩られた肌は青白くさえあり、手袋を外した手で触れて漸く生きていることを確認出来る呼吸の無さ。
その癖触れたその瞬間には、人肌を嫌ってなのか不快そうに眉間に皺を寄せていじらしく身じろくのだ。
喰らい尽くしてしまいたいと加虐心が煽られる一方で、何処まで盲目的に惹き付けられたらよいのだろうかと喰らわれる恐怖に身を震わせる。
ひたりと滑らかなその肌に手の平を寄せれば、諦めたようにそれへ寄り添われて甘美なまでの刺激に背筋が痺れてしまいそうだった。
「生きている貴方の、なんと美しいことか。
どうかそのまま、生きて生きて生き続けて……出来ることならば、私が貴方に寄り添う事を見逃してください」
欲を出し始めたらきりがない。
吸い寄せられるままに身を委ねて、重ね合わせたその唇は淡く寝息に濡れてひどく柔らかかった。
***
上手いこと夜這いを正当化しやがった…!