ともえ先生

 社一は、あたしも3点よ。空欄Cを【⑭自立した日常生活】、空欄Eを【⑫初診日から65歳に達する日の前日】にして間違えたわ。空欄Dは、基本知識だから正解できて当然だとして、問題は、空欄Aと空欄Bね。あたしが、知識以外で、どうやって空欄Aと空欄Bにどう対応したかを説明するわ。

 

まさ

 いきなり船員保険法はキツいよ。国保、介護、後期高齢、社労士法とかであればそれなりに細かい知識もインプットしているけど、船員保険法の個別の給付についてまで正確に暗記なんてしないじゃん。

 

ともえ先生

 そうね。だから、これは「推理問題」よ。まず、基本知識は、船員保険法の法的位置付けよ。さきちゃん、船員保険法は労災法や健康保険法とどういう関係にあるの?

 

さき

 健康保険法の知識ですが、船員保険法の被保険者は健保法の適用除外です。だから、船員保険法は、健康保険法が適用されない船員のための特別法です。

 

ともえ先生

 そうね。船員保険法は、船員のための医療保険法よ。まさ君、労災法との関係は?

 

まさ

 船員も労災保険法の適用労働者になるよね。その上で、労災保険法の給付とは別に、特別に船員を保護するための法律だね。たとえば、行方不明手当金とか、労災保険法にはない給付があるよ。

 

ともえ先生

 そのとおり。まとめると、船員保険法は医療保険という観点からは「健康保険法の代わりの法律」で、労働保険という観点からは「労災保険法に加えて労働者を保護するための法律」よ。健康保険法の代替給付、労災法の上乗せ給付、みたいなイメージね。

 

さき

 船員保険法は、「健康保険法が適用されない船員のための特別法」と「労災保険法が適用される船員のための特別法」という二面性があるんですね。そこまでは基本知識ですか?

 

ともえ先生

 そうね。船員保険法は、健康保険法や労災保険法の「特別法」よ。じゃあ、何が特別なの?

 

まさ

 傷病手当金が3年間支給されること(健康保険法では1年6か月)、待機期間がないこと。

 

さき

 あと、行方不明手当金もあります。

 

ともえ先生

 できればもう一つ。

 

まさ

 療養の給付の種類が、健康保険法は5つだけど、船員保険法は更にもうひとつ「自宅外生活費(宿泊及び飲食)」があるね。

 

ともえ先生

 そうよ。船員保険法で重要な知識は、その3つね。あとの細かい給付は知らない。

 

、、、

 それでいいのよ。それだけで。空欄Aと空欄Bは推理できるのよ。

 

さき 

 空欄Aは、「資格喪失後の葬祭費」ですね。健康保険法だと「資格喪失後3か月以内」が要件です。でも、船員保険法でどうなっているかは分かりません。知識として覚えていません。解けません。

 

ともえ先生

 だからそれでいいのよ。「知識として覚えていない」ということは、「知識として覚える必要がなかった」ということでしょ。船員保険法で覚えておくべき知識は、「傷病手当金3年、待機期間なし」「行方不明手当金」「自宅外生活費(宿泊及び飲食)」の3つよ。逆に言うと…

 

まさ

 この3つ以外は、健康保険法や労災保険法と同じ内容だから覚えておく必要がない、ってこと?

 

ともえ先生

 そのとおり。厳密にいえば、これら3つ以外にも相違点はあるのかもしれないけど、試験の現場で推理するために重要なのは、「これは覚えていない→覚える必要がなかった→よって、健康保険法や労災保険法と同じ内容だろう」と推理することよ。

 

さき

 健康保険法と同じと言われれば、空欄Aは【⑯資格喪失後3箇月以内】、空欄Bは【②50,000円】しかありえないですね。

 

ともえ先生

 そうよ。あたしはそうやって推理したわ。この解法で空欄Eにも挑戦したわ。確定拠出年金の障害給付金。「覚えていない→覚える必要がない→よって、障害基礎年金や障害厚生年金と同じはず」。こうやって推理した。その結果、空欄Eは【⑫初診日から65歳到達日の前日】と解答したのよ。

 

まさ

 でも、正解は⑫ではなく⑪だよ。ともえ先生の解法だと、解けない問題もけっこうあるよね。この前の労一もそうだし。

 

ともえ先生

 そうね。悪いけどあたしの解法では、これが限界ね。でも、大切なことは「それでも3点を確保できている」ことよ。たしかに、たまたまかもしれないし、確実性はない。後付けと言われると反論は難しい。それは認めるわ。

 

、、、

 でも、じゃあどうするの? 出題される可能性が極めて低い船員保険法の給付についてもしっかり暗記していけばよかったの? 確定拠出年金法の障害給付金や遺族給付金についても、正確な知識を押さえておくの? あたしのテキストには障害給付金の給付内容は載っていないわよ。

 

、、、

 もちろん、知識で解けるなら、それが一番確実よ。でも、この問題を知識で解くことはできたの? それは実現可能なの? あんたたちも仕事をしながら社労士試験にチャレンジしているんでしょ。だったら可処分時間なんてたかが知れているじゃない。合格できない理由を知識不足と考えるのは楽だけど、本当にそれでいいの?

 

、、、

 あたしはいつも言っている。社労士試験は知識だけで合格できるような簡単な試験ではない。得点順に合格者が決まるような公平な試験ではない。だから、知識に頼らない解法、高得点は取れなくてもなんとか3点を死守できる解法をあんたたちに教えている。あたしのスタイルを取り入れるかどうかは、あんたたちの自由だけど、あたしはこれが最も合格可能性の高い解法だと思っている。今ある知識で基準点を突破することができなかったかどうか、もう一度真剣に考えなさい。敗因は本当に知識不足なの?

 

 

なお、社一の救済は確実なので、空欄D以外にどこかひとつ正解できれば基準点突破です。

事前に合格基準点が「3点以上」と告知されている以上、救済とは問題が「不適切」であることを意味するものです。人生を掛けて受験している受験生もいます。試験委員さんには「適切な問題」を作成していただきたいです。