ともえ先生

 空欄Aから難しいわね。これは明らかに知識問題ではないわ。

 

さき

 ともえ先生の言うところの「推理問題」ですね?

 

ともえ先生

 そうよ。で、どうやって推理したかなんだけど、まず、「⑬技能士」と「⑭技能検定士」の二択に絞るまではいいわね。とすると、問題は「検定」の二文字が入るかどうか。まさ君、推理してみて。

 

まさ

 その検定試験の合格者は「技能を有している人」であって、「技能について検定する人」ではない。よって、「検定」の二文字は入らない。したがって、正解は「⑬技能士」かな。

 

ともえ先生

 そんなところね。あまり論理的ではないけど、そうやって推理する問題だと思うわ。少なくとも、この問題をみて「もっと一般常識のテキストを読み込んで、知識をインプットしなければならない」と考えるのは間違っている。あたしはそう思う。

 

さき

 空欄Bはどうですか?

 

ともえ先生

 これもなんとなくの肌間隔だけど、一般に「若年者=20代」とは考えないわね。一昔前は、「若者=20代」みたいな時代もあったけど、今は全然そんな時代じゃないわ。初婚の平均年齢だってほぼ30歳でしょ。よって、推理の結果、これは【⑦35】よ。

 

まさ

 「えるぼし」とか知らないよ。

 

ともえ先生

 そうね。あたしも知らなかったわ。これはあたしも間違えた。隙間時間に厚生労働省のホームページを見ておけば対応できたかもしれないけど、これは知識でも推理でも解けないわ。さきちゃん、この問題を出題した出題者側の意図は、どういう意図だと思う? 想像でいいわよ。

 

さき

 「一般的な社労士試験用のテキストには載っていないけれども、新聞等で何度か特集されたことのある国の労働政策、社会保障政策についての情報についても敏感な受験生を合格させたい」という意図ですか?

 

ともえ先生

 そんなところね。何にせよ、あたしのスタイルでは対応できない問題だった、ということね。申し訳ないわ。ただ、この問題をみて、「もっと知識を…」と考えたり、「〇〇予備校のテキストにはえるぼしは載っていなかった。〇〇予備校はイマイチだ」と考えたりするのは、違うと思うわ。一昔前の「鶏卵」とか「パネル調査」と同じね。正解する必要のない問題よ。だから今後の学習方針としては、この問題に気を取られることなく条文や判例を正確にインプットする方が、有益だと思うわ。さて、逆に、空欄Dは簡単ね。

 

さき

 あたしもこれはできました。「女性の社会進出は進んでいる」という知識がありました。その知識から素直に推理すると、女性の年齢別有業率は【⑱すべての年齢階級で上昇】していると考えることができました。

 

ともえ先生

 そうね。これは統計の数値を知識として暗記しているかどうかを問う問題ではない。「女性の社会進出は着実に進んでいる」という知識、これは基本知識よ、この基本知識から正解を推理できるかどうかを問う問題なの。この問題をみて、「マニアックな統計を含めてもっと広く正確に暗記しなければ…」と考えるのは間違いよ。これは知識で解く問題ではないわ。

 

まさ

 最後の「起業者総数に占める女性の割合」は知識問題なの?推理問題?

 

ともえ先生

 あたしは「推理問題」と考えたわ。なぜなら、あたしの推すTACの直前テキストに「就業構造基本調査」なんて載っていないからよ。そして、この問題を「推理問題」と判断し、その上で、「女性管理職割合が約1割」という知識から、「女性起業者数割合も同程度だろう」という推理をして、【①1割】を選択したわ。

 

さき

 正解は【②2割】だから、ともえ先生も間違えたんですね?

 

ともえ先生

 そうよ。これも空欄Cと同じで、あたしの「推理」では太刀打ちできなかった問題ね。結局あたしは、空欄A、空欄B、空欄Dで3点を確保しただけ、空欄Cと空欄Eは間違えたわ。

 

まさ

 でも、それでいいんでしょ?

 

ともえ先生

 そうよ。今年の労一は難関だった。知識では解ける問題はなかったし、推理によってもギリギリ3点取るのがやっとだった。空欄Cと空欄Eが対応不可能な問題だから、実質的には3問中3問を正解しなければならなかった。しかも、その3問はいずれも推理問題だった。かなり難関だったと言えるわね。

 

、、、

 でも、この労一をみて「もっと勉強範囲を広げなきゃ」と考えるのは、間違っているわ。これはあたしの意見であって、それが正しい学習方法かどうかは分からない。歯切れが悪いのも分かっているし、論理的な根拠を示すこともできない。でも、それでも「知識が足りなかった」という敗因分析は間違っている。あたしはそう思う。

 

、、、

 傾向が変わったと言えるかもしれない。でも、そうだとしても、その変化に対応するためには、せいぜい隙間時間に厚生労働省のHPをチェックする程度で十分よ。もっと細かいことを暗記しよう、と考える必要はないわ。大切なのは、そもそも知識で解く問題ではないにもかかわらず、「知識が足りなかった」という的外れな敗因分析をしないことよ。マニアックな知識が増えすぎると、基本知識がぶれる。そして、来年はそこを突かれて、また2点になる。

 

、、、

 知識以外の観点から、「どう工夫すれば今年の労一で3点を確保できたか」を一生懸命考えなさい。あたしの解法はそのためのヒントにすぎないわ。これが正解かどうかは分からない。だから、自分でその答えを見つける。そして、その答えは、かならず普遍的な「知恵」となって、あなたの武器になる。社労士試験は、知識だけで合格できるような簡単な試験じゃない。現場で対応するための「知恵」が必要なの。「知恵」が試されたという意味で、今年の労一はかなりの良問だったと思うわ。じゃあ、社一に行くわね。