最果て旅情    昭和38年8月

・最果ての 国に行くぞと 我は今 真っ黒き顔して バイトより帰る

・汽車の中 アイヌメノコと 語りしに 真ッ黒き瞳 真っ黒き睫毛

・白老の 浜辺に漁夫と 二人して アイヌの悲話を 語り聞きしも

・襟裳岬 遊び盛りの 童らも 家族と共に コンブ採る

・納沙布より 間近に見える 千島をば 帰れ帰れと 只熱くなる

・我行かん 摩周湖よ君は いかならん 顔して我を 迎えまつらん

・摩周湖よ 無限の紺碧(あお)み 湛えれば 力ムイの小島 一人厳しく

・君一人 何故か全裸を 見せはせぬ 三度も通いし 摩周の女神は

・夜の湖上 小さき灯火 燈し出で 岩魚釣るとて 櫓の音低く

・室蘭の 母恋岬 悲しけれ 青き海原 母何処ぞと

・屈斜路の 湖岸に一人 佇むば 白き砂石 透きて望めリ