「いよいよ皆さんとともに憲法改正に取り組んでいきたい。戦いは終わった。これからは一致協力して、新しい日本を造っていこうじゃありませんか」

 安倍晋三首相(自民党総裁)は20日、総裁3選が決まった後のあいさつでこう呼びかけた。総裁選勝利をてこに、憲法条文に自衛隊を位置づける改憲推進に弾みをつけたい考えがにじんでいた。その姿に6年前、平成24年9月の総裁選で新総裁に選ばれた際の首相の姿が重なってみえた。

 当時は、首相は下馬評で石破茂元幹事長を含む5人の候補のうち、本命どころか3番手がいいところだとささやかれていた「挑戦者」だった。

 現職の首相として臨んだ今回は立場も条件も違うし、「横綱相撲」を狙ってもいただろう。だが、何とか目指す国家像と政策の実現に近づこうと懸命な姿は、ずっと挑戦者のまま変わらないように見える。

 6年前、野党自民党の新総裁就任あいさつで、首相はこう強調していた。

 「まさに日本を取り戻す。日本人が日本に生まれたことを幸せと感じ、子供たちが誇りを持てる日本を造っていくためだ」

 この時の首相の総裁選公約を読み返すと、政府・日銀の連携の下での格段の量的緩和政策を推進▽日米同盟をより強固に▽集団的自衛権の行使を可能に▽幹部公務員の官邸主導人事など国家統治機構を改革-などの政策を着実に実行に移してきたことが分かる。

 一方で、北朝鮮の拉致・核問題の早期解決や憲法改正といった重大な約束は、まだ果たせずにいる。筆者は、首相が新総裁に就いた翌日(9月27日付)、産経新聞にこう書いた。

 「前途は必ずしも平坦(へいたん)ではなく、むしろ遠く険しいいばらの道だ」

 これは何も特別な見方ではなく、当時は大多数の記者や識者の観測も大同小異だったはずである。

 持病の悪化により、わずか1年で政権を手放した弱い首相というイメージが、まだ世間にも政界にも根強かった頃のことだった。野党幹部からは「総裁候補の中で安倍氏が一番やりやすい」という声も聞かれた。

 そんな状況下で出発しながら少しずつ地歩を固め、一つ一つ掲げた政策課題を片付け、今では「安倍1強」と言われるようになり3選も達成した。

 ところが今回の総裁選で首相は議員票で8割を獲得したものの、党員票では石破氏を突き放せなかった。合計でもダブルスコアでの勝利であり、一般的には「圧勝」だといえるが、首相とすれば一抹の不安も残っただろう。

 総裁選で石破氏が掲げた政策は、実現性が薄かったり、抽象的だったりするものだと感じたが、それでも自民党内で一定の支持を得た。これが現実である。

 首相は、一部マスコミや野党が揶揄(やゆ)するような「独裁者」では決してない。常にその時々の世論や自民党の声、経済状況や国際情勢に目配りしつつ、匍匐(ほふく)前進するようにここまできた。

 「同志の皆さんと力を合わせて、子供たちの世代に希望にあふれ、誇りある日本を手渡していくために、全力を尽くしていきます。どうぞ皆さん、よろしくお願いします」

 首相は20日のあいさつでこうも述べた。6年前から、いや第1次政権時代から、あきらめずにこつこつと積み重ねて目的に近づく挑戦者である首相の本質は、何も変わらない。(論説委員兼政治部編集委員)

 

引用元:http://www.sankei.com/premium/news/180921/prm1809210005-n1.html