ダンスオブヴァンパイア・徒然 | シャオ2のブログ

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最近は着物と舞台に夢中

ダンスオブヴァンパイア、以前から疑問だったことの一つに、クコールの死があったんですよね。

彼、死ぬ必要なくない?って。

だって、彼はせむしで醜い外見を持ってはいても人間の男で、吸血鬼じゃない。吸血鬼と分かっていて伯爵に仕えているのは非難される点かもしれないけど、それだけのことだ。

いやまあ、劇中では言及されていないだけで、もしかしたら城に住む吸血鬼たちの食料として生きた人間を攫ったり、伯爵を退治しようとしてきた人間を返り討ちにしたり、そういう悪事を働いたのかもしれないけど、そのへんは私たち観客には分かんないし。

なのになんで狼に殺されなきゃいけないんだろう。いくらなんでも可哀想じゃない。

そう思っていたんですよね。

 

それが5日に観て、あ、そうか、と私なりに腑に落ちたんですよ。

クコールは人間ゆえに死ななくてはならなかったんだ、って。

あの場面、時間軸的に言えば夜明け前というか未明ごろなんですよね。
真夜中に舞踏会が始まり、サラが登場して伯爵に嚙まれる→嚙まれたサラは少しの間気を失うけれど、すぐに意識を取り戻し、ダンスが始まる→ダンスの間すれ違いざまに、色々な会話が交わされ、最終的に鏡に映ったことで人間であることがばれて逃げ出す→逃げ出す際、教授が燭台を使って巨大な十字架を作り、吸血鬼たちが追ってこれないようにする→必死に十字架を壊そうとヘルベルトが燭台を掴むも、壊すことができず倒れる→唯一動けるクコールに「追え!」と伯爵が命ずる、という一連の流れと時間の経過、森の中で一息ついたアルフレートがいう「もうすぐ夜明けだ」という台詞、それらを考えると、クコールが狼に襲われ絶命した時間帯というのは、まさしく夜明け前の一番暗い時間帯だと思われます。
そう、夜明け前、なんですよ。
夜が明けてしまえば、吸血鬼たちは動けません。しかも大広間の出口には巨大な十字架があって、彼らを閉じ込めている。
その十字架を壊せるのも、昼間に動けるのもクコールだけ。
彼が生きていれば、もし教授たちが無事森を抜け出して逃げおおせたとしても、後々吸血鬼たちが追いかけることが可能になる。
そういう余地を残さないために必要なのはクコールの死なんですよね。
そしてあそこでクコールが死ぬことで、観ている私たち観客は、吸血鬼たちは城から出られず、この世で自由に動ける吸血鬼はサラとアルフだけだと思うことが出来るわけです。
いや、十字架が怖くない吸血鬼=シャガールがいますが、彼はマグダと共に入っている棺おけをクコールに投げ捨てられて早々に退場してしまい、以降カーテンコールまで出てこないし、どうもその言動からして伯爵の臣下ってわけでもなさそうなので、彼が他の吸血鬼たちを助けるとは考えにくい。
というわけで、演繹的にはクコールは死ぬ必要はなかった。が、帰納的にクコールは死なねばならなかった。
そういうことなんだ、と腑に落ちたわけです。
ま、あくまで個人的に、ってことなんですけどね。