今年初の観劇は、梅田芸術劇場で1月15日まで上演されていた「モーツァルト!」
そういや、前回、2011年もその年最初の観劇は「モーツァルト!」だったな~
1/14のマチネだったので、主役のウォルフガングは井上芳雄くん、コンスタンツェは平野綾さん、ヴァルトシュテッテン男爵夫人は春野寿美礼さん、というキャストでした。
観た直後は魂抜けたみたいな感じで、全然冷静になれなかったくらい、素晴らしいウォルフガングでした。
数日どころか十日以上、体の中から楽曲があふれ出してくるような感じで。日常生活送ってるんだけど、頭の中は常にモーツァルト!の音楽がリピートしてる状態でした。
今も思い出すとあふれてきます。
これが最後、というだけあって、井上くんの迫力は凄かった。
感動すらする暇がなくて、もう全身全霊を取り込まれました。
幕が降りた後の虚脱感の半端なさから顧みて、多分、文字通り、ワタクシは全身耳になっていたはず。
その勢いで、DVDも予約しちゃった。春に完成だそうで、到着したらリピートするんだ。
めっちゃ楽しみ!
さて。時間もたって、多少冷静さが戻ってきたので、思うことを書いてみましょうか。
2011年との比較で言うと、2011年の時はアマデとウォルフガングは全く別物という感じを受けたのに対して、今回は同じ人間の一部同士なんだという感じ。
分かりにくいな…
2011年は、ウォルフガングっていう、ちょっぴり甘えたでかなり自信過剰で誘惑に弱くて何か夢中になることができたらほかの事は放り出しちゃう、どこにでもいる普通の男の子と、その男の子と身体を共有してはいるけど、彼自身とはまったく別の生き物であるアマデが、別々に存在している感じだったのね。アマデは<才能>が視覚化した存在だから、他の人には見えないんだけど、ウォルフガングとは別に確かに存在していて、彼の自信の源になったり圧迫して追い詰める存在になったりするわけですが、別の生き物だから、ウォルフガング自身にはコントロールすることも消し去ることも出来ない。ある意味、この作品中一番のモンスターというかデヴィル。
今回は、それとはちょっと違っていて、二人は同一人物の表と裏で、たまたま表になったウォルフガングが現実の世界と関わっているけど、根っこは一体なんだ、という感じ。アマデはモンスターでもデヴィルでもなくて、自分の中にある可能性とかあふれ出る何かの化身だという印象。
だから、「僕こそミュージック」や「影を逃れて」といった歌が、同じだけど全然違って聞こえる。
2011年の前者が別々に存在する二人の蜜月の歌で、後者が逆に片方が片方から逃げたいと願う歌なら、2015年の前者は無邪気に自分を信じる歌で、後者が自分の限界を超えたいと願う歌に聞こえてくるのです。
キャストが変わると役の解釈も歌唱も変わるのがダブルキャストの醍醐味ですが、同じキャストでも年月が経つとこうも変わるのだなぁととても興味深かった。
あと、コンスタンツェですが、前回の島袋さんとはこれまた全く違っていて、これはこれで魅力的。
あのね、島袋さんの「ダンスはやめられない」は、天才の夫を愛していて理解したいんだけど理解しきれない妻の哀しみ、っていうのが、めっちゃ前面に出てたんですよ。
逆に平野さんのは、そりゃね、夫は好きよ、けどダンスはもっと好きなの、っていう甘えん坊の末っ子のわがまま娘がそのまんま大人になった感じ。
だから、ラストの「インスピレーション、与えなくては」のフレーズが、島袋さんは胸が苦しくなるほど切なくて、平野さんはやらなきゃいけないのよね、分かってるよ、でもね、って我侭娘が唇とがらせてる感じに聞こえてきたのです。
これ、ソニンさんだとどうだったのかなぁ…
ミュージカルでのソニンさん、何回か見ていますが、中々に迫力のあるドスのきいた(失礼)役作りをされてることが多かったので、とても気になります。DVDのコンスタンツェは彼女なので、見るのが楽しみだわ。
あとはヴァルトシュテッテン男爵夫人。香寿さんは、包み込むような母性というか優しさの感じられる男爵夫人でしたが、春野さんは硬質で骨太な感じでしたね。香寿さんがその優しさでウォルフガングを導いた、あるいは追い詰めたのに対して、春野さんは圧倒して思うようにウォルフガングを動かした感じ。これはこれで、貴族のパトローネスとしてはありだな。
個人的には、歌声は香寿さんの方が好きですが、これはあくまでワタクシの個人的趣味。春野さんの方が好きって人ももちろんいるはず。
個人的趣味といえば、姉のナンネールが高橋さんから花總さんに変わったのが残念。単純に高橋さんファンだからですので、あしからず。
感じとしては、花總ナンネールは、高橋ナンネールより性格が弱いように思えました。
あと、すごく心配かつ楽しみだったのは、市村パパ!
ミス・サイゴンを病気で降板されて、大丈夫かどうかはらはらでしたが、無事復帰されて良かった!超がつくほど安心しました。
そして病気をしたからか、父親になったからか、強いだけではない、父の弱さみたいなものまで感じさせてくれる素晴らしいパパ振りに感動でした。
これなら、ラカージュは安心して見られるわ!市村ザザ、楽しみすぎです♪
そんでもって、いつものキャスト、コンスタンツェの母親・セシリア役の阿知波さん、コロレド大司教役の山口さん、シカネーダーの吉野さん、安定の素晴らしさ。
山口さんはコミカルな場面と高圧的な場面とのコントラストが更に際立って素晴らしかった!
セシリアのこすっからさとずるさもいい味が出てて、この母親じゃ、ウォルフガングもコンスタンツェも勝てないよな~としみじみ。
そして、大好きな吉野さん!
相変わらず華やかでお洒落でうさんくさくて、素敵過ぎました。
吉野さんが出てくるだけで舞台がパッと華やかになるんですよね。
ステッキクルクルも相変わらず決まってて、かっこよかった。
次の舞台でもシカネーダーだけは変えないで欲しいわ……
とにかく、素晴らしい舞台でした。
その年最初の舞台がいいものだと、なんだか幸先がいい気がするワタクシ。
なので、今年はきっといい年です!