伊予灘ものがたり、2回目(接客) | 車内販売でございます。

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「伊予灘ものがたり」の記事は他にも多数あります。こちら↓もご覧ください。

 『伊予灘ものがたりQ&A


 ダイヤ改正と、一部列車の車内販売廃止があり、「伊予灘ものがたり」の魅力の続きが、途中で止まってしまっていた。

 「車両編」「食事&販売編」に続いて、今回は主に「接客」の魅力について、まとめる。


【1】丁寧な出迎え

 2月に乗車した時も、昨年8月につづいて、丁寧な接客に何度感激したことか。

 始発駅から乗る時は、車両の色に合わせたじゅうたんを敷いて、アテンダントさんが乗客を出迎える。アテンダントさんは、左足を少し前に出して立っていて素敵だ。乗客としては、乗る前から気持ち良い。

 

【2】手を振ってくれる


 「伊予灘ものかたり」は、沿線から様々な人が、列車の乗客に向かって手を振ってくれる。

 ↑上の写真は、松山駅から発車しかけた「伊予灘ものがたり」に向って、JR四国の職員の方が手を振っている光景。「伊予灘ものがたり」とは直接関係ない職員も、一緒になって歓迎してくれるのはうれしい。


 

 ↑これは、地元の住民の方が、タヌキの絵を振って歓迎してくれる様子。昔、駅にタヌキが住んでいたのだそうだ。

 JR四国の最新の観光列車が走るわけだから、地域の方たちは「地元の自慢」になると受け止めると思う。



 ↑大洲城を望遠で撮った様子。地元の方や観光客が、用意されている「のぼり」を振ってくれていた。列車の時刻に合わせて、城の観光客も巻き込んで歓迎してくれるわけだ。


 これだけ手を振ってくれると、乗っている観光客も手を振り返したくなる。普段と違った非日常の時になっていく。


【3】感謝の品

 この日は2月8日で、バレンタインの週だ。小さいチョコレートが乗客に配られた。このチョコは「八幡浜編」で配られたもので、「道後編」は別のチョコが配られた。



 

 そして、アテンダントさんの似顔絵が描かれたカードを渡された。このハガキ大のカードの裏は、こう↓なっている。



 ≪ご家族、恋人、お友達、お世話になった方へのメッセージをアテンダントが車内で読ませていただきます≫

 残念ながら、私が乗った列車では、みんな遠慮してしまってメッセージは読まれなかったが、他の日だと気持ちを伝えるメッセージが読まれたのだろう。


【4】成長の姿

 今回、私は変わったところで感動した。

 昨年8月末に「伊予灘ものがたり」に乗車した時は、運転開始から約1か月。アテンダントさんたちは、まだまだ慣れていなかった。

 八幡浜編の折詰をワゴンに乗せて運ぶ時は、激しく揺らすと料理が見栄え悪くなるため、慎重に運んでいた。アテンダントさんの表情は、真剣そのもので、余裕は全くなかった。「今、話しかけないで!!絶対揺らしちゃいけないもの運んでるから!!」というようなオーラが出ていた。これは無理ない話だが。

 今年2月に乗車した時は、もちろん料理を揺らさないように細心の注意を払っているのは同じだが、笑顔で余裕が出ていた。

 ずいぶん成長したな、と感じたものだ。

 首都圏の普通列車グリーン車のアテンダントでも、同様に立派になる様子を見てきた。最初は「何だ、この新人は?」とあきれた人が、やがて凄腕アテンダントになっていったのを見てきたマニアだから、こんなこと感じるのだろうけど。


【5】自分たちの工夫を「登用」

 「伊予灘ものがたり」のアテンダントさんたちは、あらかじめ決められたサービスをこなすのではなく、様々なところで、自分たちの工夫を取り入れていると思う。たとえば・・・・

◆私が「車内販売のマニアです」と言うと、「この列車で何を販売すると良いと思いますか」と質問してきた。自分たちが積極的に提案しようという表れだろう。

◆喜多灘駅のホームは、2つの市にまたがっている。市の境界を分かりやすく案内しようと、看板をアテンダントさんたちが描いた↓。

 現場で働く人たちに、広く裁量をゆだねると、現場は意欲を出すものだ。JR四国は初の観光列車なのが幸いして、上層部が細かな指示をしにくかったのが、結果的に幸いしたのかもしれない。

 そして案外大きいのは、一部の人か全員かは知らないが、元々JR四国の職員が、アテンダントをしていることだ。普通列車の車掌などJR四国の職員として働いていた人がアテンダントをしているのだ。外部への業務委託なら、無難な仕事になりかねない。元々職員だった人なら、簡単に退職しないから、ノウハウが継承されていく。アテンダントさんが新人車掌だった時に面倒見た先輩社員なら、「あいつがアテンダントしてるなら、全力で応援しよう」という想いが強くなり、列車に手を振るのも、言われて仕方なくでなく、身が入るハズだ。

 これは、JR四国の他の部門にも、良い影響を与えそうだ。

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【6】水戸岡車両ではない~独断と偏見で~

 観光列車のデザインで有名なのは、水戸岡鋭治氏だ。JR九州の「787系リレーつばめ車両」「あそぼーい」「ゆふいんの森」などを設計した。この他、しなの鉄道「ろくもん」、富士急「富士登山電車」、北近畿タンゴ鉄道「あかまつ」など多くの観光列車をデザイン・設計した。

 この「水戸岡車両」は、観光列車の要素が多数散りばめられており、人気がある。私も、何度感動したことか。

 ただし、問題点もある。

 全国に同じコンセプトの車両が広がってしまい、結果的に独自性が弱まっていること。そして、完成度が高くて、丸ごと受け入れるしかなく、鉄道会社側が改良する余地がないことだ。

 たとえば、ハロウィーンの時期に、水戸岡車両にハロウィーンの装飾をつけ加えるのは、「無し」だろう。水戸岡車両の雰囲気に、ハロウィーンのような別の要素を加えるのは違和感がある。

 車両をデザインする水戸岡氏側の「コンセプトを壊すような改造は、勘弁してくれ」という意図も一定の理解はできるが。(詳しいことは知らないが、勝手な改造を制限していると聞いたことがある。)


 このように水戸岡車両は、私のようなマニアにとっては、他の地域の列車と同じような没個性車両になっている。

 そして、現場で働く人たちが、創意工夫をしにくいシステムに結果的になっていそうだ。


 私が「伊予灘ものがたり」を一押しにする大きな理由が、ここにある。

 観光列車を走らせるなら、水戸岡氏に依頼するのは、実績があり確実だ。JR九州で使用したデザインをほぼそのまま各社で使うから、デザイン・設計の費用が安くて済むそうだ。水戸岡車両は、リスクがなく、無難な選択と言えるのだ。

 しかし、既にまとめたように、水戸岡車両は多くの地域で走っていて、個性があるのか無いのか、分からなくなってきている。そして、完成度が高いから、どうしても、あまり考えずに「おまかせ」になりがちだ。


 「伊予灘ものがたり」は、2月はさすがに空席が目立ったが、3月下旬から4月中旬の指定券は、満席か、空席は残りわずかとなっている。混雑すると、私が次に乗る時に困ってしまうが、盛況なのはうれしい。


 「伊予灘ものがたり」が盛況で成功すると、こんな良い影響が出ると勝手な推測をしている。

(1)他の鉄道会社が「水戸岡車両でなくでも、しっかり作れば成功するぞ」と感じて、独自の個性的な観光車両が広まっていく。制作段階から、多くの社員の考えを取り入れることができる。

(2)JR四国が「伊予灘ものがたり」の成功に続き、他の路線でも観光列車の運転を目指すようになる。

(3)観光列車が走る地域の活性化にもつながる。大きく言えば、鉄道会社の「社内ベンチャー」で、鉄道会社そのものに刺激を与える存在になりうる。


 このようなわけで、私は観光列車の中で「伊予灘ものがたり」が最も好きだ。「伊予灘ものがたり」の成功は、他の様々な方面に良い影響を及ぼすと思う。  頑張れ!伊予灘ものがたり!