「九州横断特急」は、別府・大分から豊肥本線経由で熊本へ、そして肥薩線を通って人吉まで走る特急だ。
多くの乗客は熊本で入れ替わるので、「別府~熊本」「熊本~人吉」の2つの特急が直通しているような印象を受ける。時間帯の都合で、「熊本~人吉」だけ走る列車が「くまがわ」として走る。
赤いディーゼル特急は、普段は指定席1両と自由席1両を連結して2両編成で走る。多客期は、増結して3両編成になることがある。
上の写真では、「ワンマン」となっている。運転士一人で運行する日がある。もちろん、特急券を拝見したり車内販売をしたりする客室乗務員も乗車する。
座席は、派手さはないがリクライニングシートだ。テーブルもあって、特急車両として充分通じるものだ。もともと肥薩線は、比較的揺れる路線だから、テーブルにコーヒーを載せると、こぼれないか少し不安になるが。
「九州横断特急」は、「ゆふいんの森」「A列車で行こう」「指宿のたまて箱」などと異なり、車内に車内販売のカウンターなど特別な設備がない。列車の造りは、普通の特急と同じと言える。
しかし、観光特急である。写真撮影用のボードも用意されているし、記念乗車証も用意されている。他の特急と違って、丸い形をしている。
車両が共通運用の「くまがわ」も、撮影用ボードが用意してある。同じデザインだ。
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今まで10回近く乗車してきたが、今年2015年の2月にも乗車した。始発駅別府から豊後竹田までの1時間16分、「九州横断特急3号」に乗った。別府から自由席に乗った客は、私を含めて2人だけ。
運よく先頭の見晴らしの良い席を確保できた。間にデッキはあるが、よく見える前面展望抜群の最高の席だ。降りるのがもったいない気持ちになった。
熊本か人吉まで乗り続けようかなと思った理由は、もう一つあった。
客室乗務員の方が、非常に親切だったからだ。
★特急券拝見で回る時も、笑顔で丁寧。これは気分良い。到着時刻の放送も、声だけで笑顔が感じられた。
★日差しが強くなってきたら、直射日光が当たっている客に「まぶしいようでしたら、カーテンご利用になりますか?」と声掛け。
★どちらからお越しですか?と聞かれて「関東からです。車内販売を利用しに来ました」と答えた。話のきっかけをつくる定番だ。
★記念撮影ボードを持って「記念撮影いかがですか?」と回ってきた。私はお願いした。しかし、近くの席の会社員風の2人組には、記念撮影の声掛けをしなかった。ボードを持って「いかがですか」というジェスチャーを軽くしただけだった。地元客に毎回声かけたら、うっとうしいだろう。
★私が豊後竹田で降りると知って、乗車記念証を持って来た。普段はこの区間では配布しないようだが、私のために持って来た。
★どちらかといえば、終着駅に近くなって配布することが多い「あめ」を、大分駅を発車してまもなく配り始めた。(比較的早く降りる私のために・・・と考えたくなる)
こんなしっかり仕事して親切な客室乗務員だったので、車内販売を思いっきり利用したくなった。荷物になるお土産を、初日に買うわけにはいかないから、弁当しかない。
自由席車には、大分発の時点で5人しか乗っていなかったが、笑顔満載で、3段ワゴンがやってきた。
観光シーズンでない平日だから、弁当の種類は限られていた。この時に買ったのは、幕の内630円だ。特別な目玉はないが、630円と安いから得をした気分になる。コーヒーも頼んだ。
豊後竹田駅が近づき、列車は減速した。私が立ちあがり、扉の前に立つと、客室乗務員さんが見送りに来てくれた。空いている列車とはいえ、さすがだ。弁当の空き容器を入れたビニール袋を持っているのに気づき、お預かりしますと持って行ってくれた。至れりつくせりだ。
「九州横断特急」は、観光列車扱いだから、3月以降も車内販売は残る。でも、このような立派な客室乗務員さんが、活躍する職場が減ってしまうのは、残念でならない。
昨年3月に「くまがわ1号」を利用した時にも、親切な客室乗務員さんから車内販売を利用した。
私の席の2列前の80歳くらいのお年寄りが、コーヒーを頼んだ。すると、「ミルクと砂糖、お入れしてよろしいですか?」と聞いていたのである。「この路線は、列車が大きく揺れれますからね」と、年齢のせいでなくて路線のせいにする説明もつけていたのは見事だ。
わたしは面白くなって、「私もコーヒーください」と頼んだ。「砂糖とミルクお入れしましょうか?」と尋ねてきたので、お願いした。
この方も、常に笑顔で、列車に乗っていて気分良かった。もし地元の住民なら、高速バスよりJR!と思うだろう。
この昨年3月の九州横断特急で買ったのが、肥後のうまか赤鶏めし。↓
基本的に客室乗務員ひとりで、全部こなさなくてはならない。特急券を拝見して、持っていない客からの料金を徴収する。放送で、停車駅などの案内をする。乗車記念証をスタンプと共に客に持っていく。車内販売を行うなどなど。実に多岐にわたる。
更に熊本で、客室乗務員が交代することが多いようで、熊本が近くなると、次の客室乗務員に交代するための片付けのような作業も入る。
特に別府行きは、熊本や水前寺からの短距離客が特急券を持たないで乗ることが多い。料金の徴収と特急券の発券に追われるから、熊本→肥後大津間は、車内販売などのサービスは困難だろう。(去年乗った時は、立野まで特急券の発券などに追われて、車内販売はできなかった)
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「九州横断特急」「くまがわ」で特筆すべきなのは、景色が良い場所を走るということだ。阿蘇を通り抜け、球磨川沿いを走るのだ。
写真は、くまがわ1号の車窓。進行方向左側に、球磨川の風景が広がる。
もう一つ、阿蘇の山々は、良い景色だ。立野駅のスイッチバックは、鉄道ファンのあいだでは、有名だ。
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私が、車内販売のマニアになったのは6年前で、濃いマニアになったのは2013年の6月ごろだ。
ただ、今から20年ほど前も、車内販売大好きな時期があった。3両編成の急行「火の山」で、熊本から大分まで乗り通したのだが、途中から指定席は私一人だけになった。がら空きでも車内販売のワゴンは、何度も私の横を通る。たいして腹へってなかったけど弁当を食べ、コーヒーを2杯も飲みたくなった思い出の路線だ。車内で「買う」そして景色を見ながら「飲む食べる」、これが実に気分良いと実感したわけだ。
時代は変わって、列車名も変わったが、この思い入れのある路線で、車内販売が続くことを願う。