釈とネルは、朝早く羽田空港を飛び立った。
「離陸のときは、何度乗っても緊張する」と、釈は言った。
「コウさんと最後の思い出作りになるんだね」と、ネルは笑った。
長崎空港まで約2時間のフライトである。
二人は時間を惜しむように手をつないだ。
「見て!雲が下に見えるよ!ふしぎ~」
ネルは子供のようにはしゃいだ。
ネル「着いたね」
釈「はあ、落ちなくてほっとした」
二人は、長崎市内へと向かった。
もう一つの目的は原爆資料館である。
ネルは絶句した。そして、涙ぐんだ。
100年前に、広島と長崎に原子爆弾が落とされたのである。
1945年8月6日、
続けて8月9日、
2046年、世界は連合政府となり、
二人は心から戦争のない世界を願った。
例年にない寒さで、11月の平和公園は枯れ葉が舞っていた。
二人は長崎市内をあとにして、五島列島を目指した。
長崎空港から福江空港まで飛行機で移動すると約30分で着くが、
五島列島は、フェリーとジェット・フォイルという高速船がある。
釈は船酔いしやすいというので、ジェット船に乗った。約90分の船旅だった。
五島で最大の福江島に着き、
もうすでに、夕日が沈むところだった。
(続く)