世界に再び平和が戻ったが、事態はとんでもない方向に向かっていった。
2046年11月1日、世界連合政府は、今回のアンドロイドによる人間支配を繰り返さないために「アンドロイド禁止法」を採択した。
現在のアンドロイドを1カ月以内に処分することが決まった。
従わない場合は、アンドロイドとともに死刑となる。
また、アンドロイドを隠し持っている人の密告通報が義務付けられた。密告を怠った場合は禁固刑となる。
人間に家族制度を復活させることも決まった。DNA鑑定により親子関係が明らかになる。子どもを通して、見知らぬ男女が夫婦となることが可能となった。
しかし、当然ではあるが、夫婦となる人は少数で、90%以上の人が独身の道を選ぶことになる。子どもは父親のもと、母親のもとを自由に行き来できる。どちらも合わなければ親子関係を結ばないことも出来る。幼児の場合、母になる女性が育てる希望者が多かったが、当然未経験者がほとんどなので、施設に預けられる子どもも多くいた。
人工培養による人間の生産は中止された。人工培養とアンドロイド製造会社は密接に繋がっていたのである。
恋愛も自由となる。恋愛から結婚、出産の自由が認められる。男女にかぎらず同性愛・同性婚も自由となる。
釈とネルも1カ月以内に別れなければならなくなった。
出会ってからわずか3カ月での別れである。
釈もシュウも、「アンドロイド禁止法」が決まったときの衝撃は計り知れなかった。なんとか法律の撤回を日本州政府に要望したが、世界連合政府が決めたことに異を唱えることはできなかった。
ネルは、最後にどうしても伝えたいことがあるという。
そのためには、ある場所をこの目で見てみたいと言った。
それは、長崎県の五島列島である。
(続く)