街のいたる所で火災が発生している。大学の講義中に停電にあった釈と学生たちは、教室から出ないように指示を受けた。職員たちが手分けしてラジオの情報を伝えている。ラジオ局は自家発電により、かろうじて情報を発信している。

街では消防士たちが必死に消火活動している。アンドロイド消防士も一体となって協力している。本部と通信できないことで、アンドロイドたちは、本来のプログラムである人間のために働くことを選択しているのだ。しかも自分の体を犠牲にする覚悟で人命救助にあたっている。

ネルは自宅で何の情報もないまま途方に暮れていた。隣に住んでいるナナミが訪ねてきた。「早く逃げないと危ないよ。街中が火災に遭っているよ」と言った。ナナミはラジオを持っていた。頼れる隣人いやアンドロイドだ。

大学では、緊急職員会議が始まった。落ち着くまで大学に留まること、そして帰宅できるものは帰宅すること。学生たちは寮が火災に遭っている可能性があるので、今日は大学で宿泊させることなどが決まった。非常食は十分に足りていた。

シュウは、この事態を予測していたので落ち着いていた。田端教授からあらかじめ知らされていたからである。「ユリナが心配だから、歩いて帰る」と言った。釈も同様にネルのことが心配で徒歩で帰ることにした。

釈は、3時間かけて歩いて帰った。もう日は暮れていた。街中で火の手が上がり、避けながらの徒歩は普通に歩いて帰るよりも時間がかかった。自宅にネルはいなかった。彼女はどこに行ったのだろうか。

(続く)
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