「アンドロイド・ネル」第28話
2046年10月10日「スーパーフレア」が起こった。
送電線が燃える被害が世界各地で同時多発的に起こった。世界中が大停電、情報通信網はことごとく遮断された。人類もアンドロイドたちもパニックに陥った。
自動運転システムが作動しなくなり、各地で大渋滞を引き起こした。鉄道は、すべて緊急停止した。リニアモーターカーは、ほとんどがトンネル内で停止したので、乗客は闇の中に取り残された。
飛行機は空港に着陸できなくなり、空中旋回を余儀なくされた。燃料が尽き緊急着陸する飛行機が続出した。
電線が燃えたことによって、大規模な山火事が発生した。都市の至るところで火災が発生した。消火活動をしようにもヘリの数が圧倒的に足りなかった。
最も深刻な被害は、原子力発電所だった。すべての電源が喪失し、メルトダウンを引き起こした。水素爆発が各発電所で起こり、大量の放射性物質が空気中に拡散した。
この日、釈は大学の講義中だった。急に停電し、監視中のアンドロイド兵士が混乱している様子がわかった。教室のエアコンが切れて、学生たちは寒さに震えた。それぞれ、情報を得ようとゴーグルをかけ、臨時ニュースを見ようとするが、まったく情報が入らない。
ネルは、家にいた。停電したとき、ネルは本部の通信が来なくなったことを一瞬喜んだが、このまま停電が続くと動けなくなることに不安が襲ってきた。釈に連絡を取ろうにもスカイプは使えない。どうしたらいいのだろうか、ネルは泣き出しそうな気持を必死でこらえていた。