田端教授は、寒冷期が訪れると予測していたが、一方その反動で太陽が「スーパーフレア」を起こすのではないかと予測していたのである。

太陽が爆発することを「フレア」という。これは、毎日のように繰り返されている。これが起きると強い紫外線やX線が放出される。また、激しい爆発によって太陽表面にあるプラズマが宇宙空間に飛び出ていく。原子核と電子がバラバラの粒子になってしまう状態のことを「プラズマ」いい、太陽のプラズマの場合は高温が原因でそのような状態になる。紫外線やX線、プラズマの一部が太陽表面の爆発によって大量に地球にもたらされ、時々大きな被害を与える。

たとえば、送電線に大量の誘導電流が流れ出し、送電設備などに障害が起きる。また、長距離通信は電離圏と呼ばれる場所のプラズマを利用しているため、それが乱され通話などが難しくなってしまう。カーナビも機能しなくなるし、携帯電話も通じない。人工衛星は故障する可能性がある。

オーロラは磁気圏に取り込まれたプラズマの粒子が大気に降り注いで起きる現象なので、太陽で巨大な爆発が起きれば、北極や南極だけでなく比較的緯度の低いところでも観測できるようになる。1859年に起きた巨大なフレアでは、ハワイやキューバでもオーロラが見えた、という記録が残っている。

最近では1989年3月に、巨大なフレアによってカナダのケベック州で大停電が引き起こされた。600万人に影響が及び、停電は9時間も続いた。町全体が受けた経済的損害は100億円を超える、といわれている。このクラスのフレアは年に平均3回近く起きており、たまたま太陽と地球の位置関係で大きな被害につながったのだが、さらに大きなフレアは過去に何度も発生している。滅多に起きるものではないが、起きたときの影響はそれこそ計り知れない。

「スーパーフレア」は、8000~5000年に1回の頻度で起こるという。それが起きた場合、地上の各地で電波通信障害が発生、運行中の旅客機は目的地の空港と連絡がとれず立ち往生する。

国際宇宙ステーションの中の宇宙飛行士は、大量の宇宙放射線を浴びたので、非常に危険な状態に陥る。

放射線の影響は人工衛星にも及び、ほぼすべてが使用不可能に。カーナビも携帯電話も使えない。さらに、大規模な停電が発生。夜は真っ暗になる。文明の利器に頼った都市は大混乱に陥る。最も心配されるのは原子力発電所。電源が喪失してしまった状態で、どれだけの時間、持ちこたえることができるのか・・・・・・。

田端教授は、アンドロイド工学の高木シュウと同じ大学の同級生だった。すでに、アンドロイドの支配下に置かれる前に、この予測をシュウは知っていたのである。

(続く)
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