2040年代に入り、地球温暖化が覆る気候変動が起こり始めた。
徐々に平均気温が下がり始めたのである。
30年代は第3次世界大戦の危機的状況にまで温暖化による災害や食糧・水不足に悩まされた世界の様子が変わり始めていた。
2046年10月、大寒波がやってきた。東京も初雪を観測し、北海道は-30℃を記録した。
世界各地で寒波による死者が続出した。
この異変をすでに予測していた研究者がいた。西京大学付属天文台教授の田端誠一である。彼は太陽研究の第一人者であった。
太陽の黒点が減少すると、寒冷期が訪れるのである。
黒点の減少による過去に起こった最も有名な寒冷期「マウンダー極小期」である。1645年から1715年の太陽黒点数が著しく減少した期間の名称で、太陽天文学の研究者で黒点現象の消失について過去の記録を研究したエドワード・マウンダーの名前にちなむ。
この時期のヨーロッパや北米大陸では、冬は激しい寒波と夏でも寒いと感じる年が何年も続いたという。
田端教授は、政府に報告を続けていたが、アンドロイドの支配下におかれたことにより、研究を報告することをやめた。
彼は、次に起こる恐ろしい事態を予測していたのである。
(続く)