雪国の植物

低木、地を這い生きる

 

ユキワリソウ。

早春、

雪を割って花開くので、

春の前触れとして愛される。

雪の消えた地に敷き詰めたように咲くこの花を、

大佐渡の外海府ではヂザクラバナ(地桜花)と呼ぶ。

深紅・紅・紫・紅紫・青・桃・白色と、

鮮やかな千変万化の花の色。

 

花になりたや

ヂザクラバナに

たけはこようても

器量がよい

 

と外海府で歌われる。

太平洋側のものは花も白色、

桃色で、

花も小さく目立たない。

それに対し日本海側のユキワリソウは、

花は大きく、

花の色も変化に富み、

花弁と蕋の色の組み合わせも様々で、

見事である。

太平洋側のユキワリソウ(和名ミスミソウ・スハマソウ)に対し、

日本海側のものはオオミスミソウと名付け、

別種とされる典型的な雪国植物である。

 

日本海側の多雪地だけ分布し、

太平洋側の山地には分布しない植物の一群があり、

これを日本海要素・雪国要素の植物と呼ぶ。

これらの植物は新潟県内におよそ150種あるが、

そのうちおよそ100種が佐渡に見られる。

 

佐渡はシダ植物以上の高等植物の総数1700余種、

そのうち100種が日本海要素であるが、

これも佐渡の植物相の特徴となる。

 

小木の宿根木で嫁の春の山入を告げる花ナニワズ。

この花が咲くと嫁の顔はきりりと引き締まる。

嫁の山仕事である。

島でヨメナカセと呼ばれるこの花は2月から咲き始める。

太平洋側のもの(和名オニシバリ)は花も小さく、

色も暗黄緑色、

日本海側のものは花も大きく、

色も鮮黄色で強く香る。

ヨメナカセもまた日本海要素である。

 

ユキツバキも典型的な日本海要素。

不思議なことに大佐渡にはみられず、

小佐渡の山中にだけみられる。

小佐渡の山村のハイツバキ(新穂村)は、

雪圧に適応し、

地を這う椿の『這い椿』すなわちユキツバキの群生地である。

 

雪圧に適応し茎が地を這い斜上する佐渡の山に最も多い

モミジであるヤマモミジもまた日本海要素。

山を彩る美しい花のエゾアジサイ、

タムシバ、ムラサキヤシオツツジ、

スミレサイシン、オオタチツボスミレなども日本海要素。

 

私はこれらの花に接するたびに日本海側の雪国に

これらの美しい花を配してくれた自然の摂理に思いを馳せる。

日本海要素の植物は次の3つの特徴を持つ。

 

1,常緑樹は低木化し、

地を這うが雪に対する適応である。

()内は太平洋側の対応種。

ユキツバキ(ヤブツバキ)、

ハイイヌガヤ佐渡方言ヒョウビ(イヌガヤ)、

ハイイヌツゲ・方言ビンカカ(イヌツゲ)、

チャボガヤ(カヤ)。

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ユキツバキ

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イヌガヤ

 

2,落葉樹は葉は広く肉うすとなるが、

日照量の少ない事に対する適応である。

オオバクロモジ・方言クロモンジャ(クロモジ)

マルバゴマキ(ゴマキ)、

マルバマンサク(マンサク)、

ヤマモミジ(タカオモミジ)、

ブナもヒロハブナの異名があり、

太平洋側のブナより肉は薄く葉は広い。

クロモジ

3,日本海側のブナ林床に

深い雪に保護されて生き残った固有種が存在すること。

 

シラネアオイ、サンカヨウ、イワナシ、

タヌキランなどである。

シラネアオイ

タヌキラン

 

「佐渡自然と草木と人間と」(2003)

著:伊藤邦男

引用させて頂きました