第一章 「アイデアがひらめいた!」とは?――強固なログラインをつくる①

 

 ひとは誰でも、ネガティブな精神状態にあるとき、アイデアがひらめきにくくなります。
 これらのネガティブな感情を「不快情動」といいます。
 不快情動は自意識によって呼び起こされます。これもやはり視野狭窄や近視眼化を呼び込む感情の動きです。不快情動は「アイデアがひらめくこと」の天敵なのです。

「アイデア」を手にするためには、リラックスと嬉しさが必要だということです。

わくわくする、うきうきする、ワクテカである……

そんな気分のする方へ、心理を寄せていたかなくてはならないのですね。

 

なんらかの「外部の刺激」が影響し、あなたの内部が動き出したことで「アイデアに結びついた」のではないでしょうか?
「アイデアがひらめくようにならなきゃ!」という風に「必然としての結果」を求めていた時ではなく、意図していなかったタイミングで発生したなんらかの「偶然」が、あなたにアイデアをひらめかせる「きっかけ」として作用したはずなのです。

【ポイント】

  • アイデアがひらめくには、「偶然」と「外部からの刺激」が必要。

「偶然」に「外部」から刺激が入り、アイデアとして結実する。

これは、自らの中にもともとあった「個別の知識や情報、経験」の諸々が、「外部からの刺激」によって「偶然に関連性」を持ち、アイデアとして結実したということなのです。

 

では、ここで「偶然」をたぐり寄せるために、本書に掲載されている「物語ひらめきドリル」を使って、単純な話を作ってみました。


主人公の年齢・・・「36歳」
主人公の立場・・・休職中のサラリーマン
きっかけとなる出来事・・・思わぬ人(モノ)と出会う/再会する
主な舞台・・・街
ジャンル・・・ヒューマンドラマ


 

 例えば「23〜35歳」の「軍人」が……となると、まず反射的に主人公を「精悍な男性」だと思いこんでしまうかもしれませんが、軍人だからといって精悍だとは限りません。
 何らかの理由があって嫌々軍人になった気の弱いひとが主人公かもしれませんし、ミリタリーおたくで大好きな戦車と一日中いっしょにいられるのが嬉しくて軍人になった〈女の子〉かもしれません。
 (中略)
 反射的に「決めつけてしまった主人公の性別」を異性に変えることで、まったく異なるアイデアがひらめきはじめるはずです。
 予定調和やステレオタイプなアイデアは、無自覚な偏見や思い込みによって呼び込まれます。
 ご自分の思考を疑ったり、踏みとどまったりしながら、楽しんでキャラクターを想像してみてくださいね。

では、最後に、上記のひらめき設定をつかってログラインを書いてみましょう。

……と、その前に、ログラインを発展させるために重要な要素を見ていきましょう。

 

ログラインをつくる際に大切なのは、まずは「何の要素が、主人公にとってのドラマ(葛藤)になり得るのか」をきちんと決めることです。

どうやら、そうしたドラマ(葛藤)の数々を通じて主人公は「変化・成長」と遂げ、最終的にはスタート地点とはむしろ真逆の行動を取るようになるようです。

 

 ぼくは「教師としての行動、生徒たちと関わり合う時間」からドラマ(葛藤)を組みたいと考えました。
 つまり「どんな授業を担当する教師なのか? どんな生徒たちと関わるのか?」が葛藤のポイントとなる、と考えたのです。
 (中略)
 そこで、物語のなかの多くの時間帯を閉めるであろう「教師であること」そのものに、「主人公の葛藤」を取り入れた方が面白く展開するだろうと判断しました。

ここからすると、私の作ったひらめき設定は「休職中のサラリーマン」だったので、その中の「予定のない時間」をどう使うか、「その時間を何に潰されるか」「誰と会うか」「何を考えるか」がドラマになるということでしょう。

「休職中」ということは、それまでは忙しくしていて、「自分の時間」を仕事に潰されていたことになります。人間関係の広がりも職場の、仕事の推進のために必要な人間に限られます。そこから解放された主人公。こんどは「自分の時間」を有意義に過ごせる。しかし人というものは、時間が余ると有意義には使えないもの。そこで何かに巻き込まれて、無駄な時間消化をしている、と思うことの中に「有意義」が紛れるようにすればいいのではないか。人間関係も、思いもよらないものにするし、その展開も非合理的にする。

 

授業のモチーフが何であれ、「教師」という設定である以上、主人公の年齢と生徒たちの年齢との対比が避けられないということでした。
 (中略)
 仮に生徒を高校生にするとあまり年齢の対比が生まれません。
 近いもの同士をぶつけると、さきほどとりあげた「近視眼的な発想」の問題が生じてしまうので、なるべく離そうと思い立ちました。
 (中略)
関係性の距離感を話した方が対立や葛藤が生まれやすくなるので、「子ども嫌い」という設定にしました。
 どうせだったら、さらに離そうと考えて「35歳のひきこもり」にしました。
 普段から他人と関わることにストレスを感じている設定のほうが、「子供たちと関わらせること」で、より一層主人公を追い込みやすくなるからです。
 (中略)
 それに「コメディ」と「殺人」が真逆の要素なので、類推が働くと考えたからです。

上記のような引用から分かることは、「一つのアイデアに対立するアイデアをぶつけていく」ということです。真逆のものをぶつけて、その落差を、ギャップをつくることで、因果関係や合理主義の思い込みから逃れることが出来そうです。

 

となると、私の設定では、「休職中」=「時間が余る」「自分の時間」「新しい事が始められる」「未来に進む」などが考えられるので、対比的にしていこうとするとどうなるのか。

まず「自分の時間」を「他人の時間」にする。

つまり「他人の用事につきあわされる」。

「新しい事が始められる」は「過去のことをどうにかする」などにする。

あとは、休職中だからといって「困っているとはかぎらない」「自由とは限らない」ということです。

休職中だからこそ、不自由になる。

 

大切なのは、ノンストップで思考し続けることです。
発想が凝り固まりそうになった瞬間に「思い悩んで立ち止まる」のではなく、むしろ「発想が固まってしまったこと」に自覚的になり、すぐさま「アイデアについて考える角度や眼差し」を切り替えるようにする。
また、自らの「思い込み」に気づき、意図的に思考を反転させるようにする。
こういったアプローチは、ぼくに限らずプロの脚本家であれば誰もが日々やっていることです。

 

 

 

 

つづきはまた次回!