文さんの被災体験記(3) | 紙風船

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中学校と高校で社会科を教えています(いました)。街探検や銭湯が大好き。ピクトグラムや珍しいものが好き。でも一番の生きがいは、子どもたちに「先生の授業、たのしい」と言ってもらえることです。

文さんから(1月23日)――

 

お疲れ様です。

ブログの反響をまとめて送っていただき,ありがとうございました。珠洲市の方がお仲間にいらっしゃるのですね。

沢山の方々に読んでいただき,感謝いたします。

共有できるお仲間がいて羨ましいです。

 

それから,今日はN先生のお勤めの高校が推薦入試なのですね。

石川県は推薦入試の日程が伸びましたが,奥能登の高校は推薦入試をどうするのか,私たち一般教員レベルにはまだ伝わってきません。

 

県内各高校では,ソフトテニス,野球,レスリングなど推薦で全国から募集をしているけど,どうするんやろ?と先日副校長と雑談していました。おそらく学校も使えない,グランドがひび割れ状態かと…。

 

3月に起きた東日本大震災の際は,どうだったのだろうと思ってまわりの教員に聞いたところ,

「石川県→東北地方の高校でバドミントン推薦が決まっていたのに,特例?で地元石川県のバドミントンが強い高校に変更した子がいた」と言っていました。

もうアパートを借り,家具家電も買い揃えていたのに大変だったと。

 

確かに,地震大国なのに経験知が共有されておりませんね。

 

もっと驚きは,

勤務校は一応避難所になっていますが,

備蓄倉庫がありません。(食料も毛布もゼロ)

(写真は金沢市の備蓄倉庫ですが,文さんの勤務校のものではありません)

今回,金沢は被害が少なくすんだので良かったですが…

うちの学校に避難してきたら,みんな餓死やね…

と職員みんなで言っています。

 

珠洲の高校でさえ避難者が700名いたのだから,

金沢市にある本校は,金沢市が震源地に近かった場合は数千人が来ることでしょう。

 

東日本大震災以降,関東の学校は備蓄倉庫が整備され,石川県に来た時も当然備蓄倉庫は全学校にあるものと思っておりました。

今回の地震では自衛隊はなかなかこず,やはり避難所には数日生き延びるための備蓄はどんなに金がかかろうが必要だと感じました。東日本大震災の経験知が石川県に共有されていないと思いました。東京の学校は,人口が多い分沢山の備蓄がされているのでしょうか。

 

石川県は今晩から明日にかけて,また大雪です。

明日はJRが止まったら休校になるかもしれません…。

 

被災地では,まだ,いろんな県から来ている救助者の方が安否不明者を探して下さっていますが,この寒さは応えているはずです。

 

N先生,明日はご勤務ですか。

東京も寒さが厳しいと思いますので,くれぐれも温かくしてお過ごしください。

 

―― 以上,1月23日にいただいたメールです。

 

ボクから ――

お忙しいところ返信ありがとうございました。

石川県地方の大雪のニュースを,こちらの胸も押しつぶされそうな気持でみています。

 

道路に面したガレージで数世帯の方々が寄り集まって暖をとっています。

ビニールハウスが自主避難場所となっている方がいます。

道路の亀裂や断裂は雪に覆われています。

支援,救援の手はまた滞ってしまうでしょう。

いや,ボクがこんなことを書かずとも,文さんは先刻ご承知ですね。

この人たちに,安心安全な場所に移っていただきたい。

他の何よりご自分の命を守ってほしい。

見ていて思うのはただそれだけです。

津波が押し寄せる時には

「自分の命を守れ!」「てんでんこ」が合言葉だったはずです。

 

津波の心配が去った後でも,基本は変わっていないのではないでしょうか。もちろん,「てんでんこ」ではなく,多くの人が力を寄せ合ってではあります。でも一番大切なのは「自分の命」。

そのことに変わりはないはずです。

 

避難場所に備蓄倉庫がない!仰天しました。

だがしかし,今ここで,石川県やら金沢市の態勢を云々する気はありません。

仰天したあとすぐに,ボクもかつての勤務校にどれだけの物資があるのか見たことがなかったことに気づいたのです。

そんなボクが,石川県や金沢市を云々するのは「天に唾する」に等しい気がします。

 

今思えば,なぜ職員研修として備蓄物資をみんなで確認したり,防災訓練の時に子どもたちに公開しなかったのでしょうか。

おかしな話です。

たしかに避難所運営は教師ではなく行政の分担ではあります。

子どもたちに運営責任はありません。

でも,今回の震災では各地の情報や交通が遮断され中で

各避難所が行政との連携が取れないまま自主的に活動を行っていたことが分かっています。

 

避難所(学校)のどこに・何が・どれだけあるか。

それは地域の必要分を満たしているのか。

オトナも子どもも基本的情報として共有しておく必要があります。

 

今被災していない地域でも,

今を機会に,そんなことを共有していく。

 

そうした必要性を改めて感じました。

文さん,ありがとうございます。

 

そして結びの言葉。

「東京も寒さが厳しいと思いますので,くれぐれも温かくしてお過ごしください」

―― ボクがおくらなければいけない言葉を,いつも文さんが先に言ってくれます。有難い心に沁みる言葉です。

 

1月24日午後10時。

文さんの夫君のご家族がいる能登町は雪です。

波浪警報・風雪,雷注意報が出ています。気温は零下。

 

他の地域の皆さんも,

まずこの一夜をしのいでください。

明日(1月25日)も一日雪の予報です。

ご自分の命を守れる場所を探してください。

 

政治は,皆さんを助けるために,動いてください。