ワグナー,モーツァルト,
どちらもクラシック界の超有名作曲家。
とはいえ,音楽の話ではありません。
戦争の話です。
(ワグナーWagner。現在のドイツ生まれ。1813~1883年)
(モーツァルト。現在のオーストリア生まれ。1756~1791年)
●ワグナーとロシア・ウクライナ戦争
話は「ワグネル」です。
と読んだ瞬間にピンと来た方はスルドイ!
「ワグネル」はロシア語表記で「Вагнер」。
発音は「vagner」。ぜひGoogle翻訳で発音を聞いてみてください。驚きますよ。
そして「ワグネル」をドイツ語や英語に翻訳すると「Wagner」,そう「ワグナー」です。
「ワグネル」とはワグナー,まさしく大音楽家ワグナーの名前。
民間軍事会社と大音楽家…
これは一体どういうことでしょうか
Wikipedia「ワグネル」の項などからまとめてみます。
(1)現在注目を集めているプリゴジン氏はワグネル創始者とよ
ばれているが,創始者とされる人物にもう一人いる。それ
がウトキン氏。
(2)ウトキン氏は大のワグナーファン=「ワグネリアン」。
英:Wagnerian/独:Wagnerianer」
(3)ウトキン氏は同時にヒトラーの信奉者でもある。
(4)ヒトラーもまた熱心なワグナーファン(ワグネリアン)だ
ったことは有名。ワグナーはドイツ民族主義者で反ユダヤ
的発言も多かったようです。
―― 以上の経緯からウトキン氏が大音楽家ワグナーに因んで「ワグネル」の名称を付けたというのが定説化しています(ただし,ウトキン氏やワグネルが公式に認めてはいない様子)。
少し横道に入りますが,プリゴジン氏とウトキン氏の関係はあまりはっきりしません。
ただプリゴジン氏が代表である企業グループにウトキン氏が所属して何らかの部門担当者だったようなので,プリゴジン氏を上とする上下関係にあったと思われます。
プリゴジン氏は2022年に自身のSNSで「私が集めた集団が後にワグネルとなった」と認めていたそうなので,やはりワグネル創始者はプリゴジン氏とみてよいのではないでしょうか。
ちなみに,ウトキン氏は2016年以来公の場に登場したことがないそうで…粛清されましたかね
ウトキン氏が創始した組織をプリゴジン氏が乗っ取ったってこともあり得るんですねぇ。この世界では
さて本題。
ともかくも,民間軍事会社の名称に大音楽家の名前を冠してしまうセンスはすごすぎる。
しかも,ですよ。
先ほど書いたようにワグナーは死後50年ほど後に独裁者ヒトラーに持ち上げられたおかげで「ファシズム及び反ユダヤ主義の象徴」のような扱いをうけています。
ロシアのプーチン大統領はウクライナ侵攻以来,その大義として「ウクライナにはネオナチ勢力がいる。ロシア系住民に迫害を繰り返しているので,この人々を保護する必要があった」と繰り返しています。
そのプーチン大統領に飼われて,ネオナチ勢力打倒のためにウクライナで戦っているはずの「ワグネル」。
しかし,その名称は「ファシズム及び反ユダヤ主義の象徴」であるワグナーに由来している。リーダーはナチスドイツの総帥ヒトラーの信奉者である…
もう頭がくらくらするような混迷ぶりです。
もうこの戦争はこんなことばっかり…
●モーツァルトと「ロシア・ウクライナ戦争」
もう一つ,頭がくらくらすることがあります。
ウクライナにも民間軍事会社があります。
名称が「モーツァルト」。
もちろん彼の大音楽家モーツァルトの名前を冠しています。
「ワグネル=ワグナー」との対比で命名された由。
お~~い
さらにくらくらするのは,この「モーツァルト」。本社は米国にあります。創始者は元米軍海兵隊の大佐。ソマリア,イラク,アフガニスタンなどの歴戦の雄。
ロシア・ウクライナ戦争開戦と共にウクライナの首都キエフ(キーウ)に事務所を移転,さらに現在は最前線ドンバス地方に事務所を移転。
従業員は昨年8月時点で20~30人。全員「ボランティア」。
と書いてあるけれど,同時に「元特殊作戦の隊員」とも書かれている。何がボランティアなんだか…
資金源は「アメリカの篤志家」。
お金持の寄付がたんまりあるようす。
アメリカ政府と接触や支援は「ない」そうですが…。
ちなみに「業務」に「戦闘行為は入っていない」
へぇ?
ただし「自衛戦闘は除く」
な~んだ。
「撃たれたから(撃たれそうだったから)撃ち返しました」で,すべてOKじゃないですか。
つまり,こちらもワグネル同様「民間人なのに殺人が罪に問われない集団」ということです。
(Wikipedia「モーツァルト 民間軍事会社」の項などより)
もうなんでしょうね。ワグネルにしろ,モーツァルトにしろ,
民間軍事会社ってやつは…
● 米欧のウクライナ支援と「ロシア・ウクライナ戦争」
くらくらした勢いで,これまであまり書いてこなかったことにも踏み込んでしまいます。
ウクライナには「ウクライナ領土防衛部隊外国人部隊」が存在しています。2022年のロシア・ウクライナ戦争開戦を契機に組織された。ことになっています。
しかし,「ウクライナ軍には外国人の入隊を許可する規則がある」ということです。しかも,2022年以前から「戦力の補強として義勇兵を活用していた」と書かれています。
「国軍に外国人を入隊させる」この時点で訳が分かりません
自衛隊に外国人が入隊できるわけありませんよね。
さらに「活用していた」ってどこでだれを相手に
2022年以前ですから,ロシア軍が相手ではありません。
推測するに2014年以来親ロシア勢力が占拠していたドンバス地方(ウクライナ東部,ロシアとの国境地域)しかないでしょう。
ドンバス地方では2014年以来断続的,継続的に戦闘が繰り返されていました。
その主力は,ロシア・ウクライナ双方とも正規軍ではなくて,民間軍事会社もしくは外国人部隊であったわけです。さらに「アゾフ大隊」のようなウクライナ義勇兵も介入していました。
正規軍でないということは,兵士の待遇や人権が粗末に扱われていることを意味すると同時に,国際法にもとづく本物の民間人(住民)の保護を粗末に扱えることを意味します。
なんせどれだけ非人道的な行為があったとしても
「我が国は関知しておりません」と胸を張って言い張れるのですから…
さらに付け加えましょう。
米欧はウクライナに最新式の兵器を大量に投入しています。
そのためにウクライナ兵士が扱えるようにする訓練をアメリカや欧州にある米軍基地で行っていると見聞きしたことはありませんか。ボクはずっと眉に唾をこすりつけていました。
最新のハイテク兵器を数か月の訓練で扱えるわけがない。
しかも,もしそんな新兵に最新兵器を扱われて戦果があがらなかったら,米欧の兵器産業にとっては信用失墜。そんな「企業イメージ」を落とすような使い方を許すわけがありません。
米欧としてはロシア軍と直接対峙することは第三次世界大戦の引き金となってしまうのでできません。各国国民もそこまでは望んでいません。
まさに,民間軍事会社の出番だと思いませんか。
ボクは米欧の武器と共にウクライナの戦場に赴いているのは,
米欧側の民間軍事会社の従業員であるとみています。
なんせ移民大国アメリカです。ウクライナ語やロシア語を話せる人々はいくらでも調達可能。戦場の映像などはいくらでも製造可能。民間軍事会社の従業員を「ウクライナ兵です」と偽っても気づかれません。
本物のウクライナ兵は…ロシア軍の塹壕めがけて突進させられているでしょうね。哀しい話です。
人の命は使い捨て,それが戦争です
昨日NHKでワグネル関連の特番を放映していました。
様々なデータや衛星画像を駆使した力作でした。
だがしかし,根本的に残念。
とりあげたのは「ワグネル」のみ。「モーツァルト」も他の民間軍事会社は全く扱われませんでした。
ボクたち日本人は,今回のワグネル騒動をきっかけに,ますますロシア嫌い,プーチン嫌いへと傾いたことでしょう。
でも,事の本質はそこではないのでは?
どこの国の会社であろうが,
「合法的に人殺しができる会社が存在している」
―― そのことこそが問題なのでは?
現在,民間軍事会社に関する合意や国際法の整備が国際政治の舞台で問題になっているようです。しかし,それはもちろん,民間軍事会社の活用法をめぐる議論です。
ボクからすれば根本的に方向が間違っています。
ロシア・ウクライナ戦争,この結果がどちら有利に終わるにしても,これをきっかけに「民間軍事会社」そのものを国際法で禁止できるようにしていかなくてはないでしょうか。
それこそが,21世紀の世界の平和のために,
22世紀の世界でも人類が平和に生きられるようにするために,
とても重要なことではないでしょうか。
ちょっと力が入りすぎたかもしれません。
最後までお読みいただきありがとうございます。