「読書とは不親切な娯楽なのです」 | 紙風船

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中学校と高校で社会科を教えています(いました)。街探検や銭湯が大好き。ピクトグラムや珍しいものが好き。でも一番の生きがいは、子どもたちに「先生の授業、たのしい」と言ってもらえることです。

勤務校の「図書館だより」に掲載されたHaセンセイの記事です。国語科ではないのに(失礼)なかなか的を射た考え方で感心させられました。紹介します。

図書委員によるインタビュー記事です。

 

委「高校時代はどんな本を読んでいましたか?」

 

Ha「田舎の出身で,本を読むしか娯楽がない高校時代でした(笑)」「日本人作家はあまり読まず,スティーヴン・キングの『スタンドバイミー』や『タリスマン』のような,日本語に翻訳された読みづらい本をあえて苦労しながら読んでいました」

 

委「読書に対する体力がものすごいですね。本校も朝読書が行っていますが,高校生が読書をする意味や意義をどのようにお考えでしょうか」

 

Ha「ある作家が「読書とは不親切な娯楽である」と言っていました。まさにその通りだと感じています。

 

読書は,映像と違って自分の頭で情況や人の痛み・喜びなどを想像して理解しなくてはなりません。

 

場合によってはかなり振り回されます。

でも,その不親切な状態から,振り回されながらも理解するのが読書です

 

そうして培った想像力は様々な場面で役に立つはずです

現に今,私が仕事をする上で,様々な状況を想像しながらスケジュール調整をしていますが,高校生時代に読書で鍛え,培った想像力が活かせているのかもしれません」

 

委「なんだか読書をしない方がもったいないですね(笑)最後に本校生徒へのメッセージをお願いします」

 

Ha「毎日,面倒くさいという気持ちもあると思いますが,努力を続けていくと必ず成長します。今できる最大限を一生懸命にがんばってください」

 

Haさんは教務主任という立場です。

大規模校のさまざまな動きを調整していくことが並大抵ではありません。

たとえば卒業式・入学式という行事を恙なく運営するためには,すべての係の仕事に適任者を割り当て,相互の連携を調整して,具体的な人の流れをイメージする。例えば,来賓として,誰を呼ぶ,いつ来てもらう,どこを通る,どこに座る,誰がもてなす…頭の中に映像が流れなければ務まりません。

 

そうした脳内イメージが文字となって表現されるのが「式次第」であり「準備マニュアル」です。

 

そこに読書で培った想像力が活かされているのは納得のいく話でした。

 

何よりもボクには「読書とは不親切な娯楽である」というフレーズがとても印象に残りました。

Haさんは「ある作家」としか話していないので、誰なのか気になってGoogleセンセイにお尋ねしました。

しかしはっきりしません。

この本は関連性があるかもしれません。

名越康文著『良質読書』

 

これからの人生をよりよく生きるためには、読書は必要不可欠です。しかし、今の自分の能力の範囲内で読める「親切な本」だけを読むとしたらどうでしょうか?自分がラクにできる筋トレをしても筋肉がつかないのと同じように、「親切な本」を大量に読んだとしても本当の成長には結びつきません。

(略)読書で「聞く力」が育つ「不親切な本」を読むことで人は成長する。

 

なるほど。名越さんは精神科医だそうです。

読んでみたくなりました。

 

おまけ。

ゲームやアニメは,読書以上に視覚を刺激して,さらに聴覚をも刺激します。受け手の脳に与えるイメージ量の膨大さは,読書の及ぶところではないでしょう。

だがしかし,そのイメージは,すべてクリエイターの脳内イメージです。受け手は,いわば,そのイメージを刷り込まれるだけ。

自分の頭で情況や人の痛み・喜びなどを想像して理解する力(想像力)が育っていくのだろうか…

―― 活字中毒者のオジサンは,勝手に心配しています真顔