会社のホームページでは果たしてどのようなことが書かれているか、皆さんも想像してみてください。いいことばかり書いてあるイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。もちろんそれが普通であり、むしろ会社にとって不都合な理由、失敗に終わってしまったことを赤裸々に描く理由は一切ありません。しかし、一見すると会社にとってマイナスであろう事柄を赤裸々に説明している企業があります。それが株式会社レーサムです。

株式会社レーサムを創業時から引っ張ってきた田中剛さんは、実直でマジメな経営を売りとして、レーサムの企業文化にまで仕立て上げました。ホームページではどのような失敗が書かれていたのか、そして、どのように活かされたのか、失敗と成功についてご紹介します。

ホテル事業の失敗から学んだこと

株式会社レーサムが失敗から学び、現在に活かされているのがホテル事業です。最初にホテル事業に乗り出したのが2003年でした。沖縄のホテルの運営権を取得したのが最初です。この時、運営権だけを得て土地や建物は借りるという形で費用をかけたものの、当初予定した売り上げの数分の1しか売り上げを確保できず、赤字ばかりが垂れ流しになってしまう事態を生み出してしまいます。

この失敗に伴い、翌年に沖縄の別の場所で買収したリゾートホテルに関して、せっかくいい具合に運営がうまくいったにもかかわらず、先ほどの赤字処理をしなければならなくなり、リゾートホテルを売却して対応せざるを得ない状況に追い込まれ、沖縄から撤退します。一方、札幌のビジネスホテルでは成功を収めるなど、同時期のホテル事業でも明暗がはっきりと分かれました。

それから10年以上の時を経て、2015年東京都足立区西新井にコミュニティホステルをオープンさせます。当時話題となっていたインバウンド需要を見込み、東京オリンピック開催に伴う外国人観光客の宿泊施設の確保はもちろん、地元コミュニティとのつながりなどを考慮した宿泊施設をオープン、収益不動産として機能します。

あえてユースホステルにした理由は、ホテル事業で痛い目を見た経験が大きく、景気によって旅行需要が左右される部分は避け、たとえ景気が良くても悪くてもお金をかけずに旅行するバックパッカーを対象都市、日本のコミュニティとつながりが持てるユースホステルであればチャンスはあるのではないかと考えたためです。のちに全国展開を見せるようになっており、明らかに失敗から学んでいます。

会社をけん引した不良債権市場からの脱却

1997年、田中剛さんは不良債権を買い取って新たな付加価値をつけてから不動産を販売し、収益不動産として体裁を整えていっていくやり方で業績を伸ばしつつありました。そして2000年には国有財産の証券化を実現させます。そして同じ時期にノンバンクを取得し、不動産担保ローン事業に手を出すほか、債権回収の分野において日本企業では初めて格付けをつけてもらうなど、不良債権市場で結果を出し続け、その勢いでジャスダックへの上場を決めます。田中剛さんとしてはかなり自信をもって取り組めていたことでしょう。この時から大型プロジェクトにも乗り出しており、評価額が100億円を超えるような案件を多く抱えるようになります。

不良債権という点ではゴルフ場の取得もその1つ。ゴルフ会員権が絡むため、1度経営難になってしまうとそこからの立て直しは難しいと言われていますが、レーサムはゴルフ場を再生させ、日本のプロゴルフツアーの大会が開けるようになり、現在でも多くの人に利用してもらえるゴルフ場として機能しています。そして、経営が傾いていたノンバンクを立て直し、それを売却したことでかなりの利益が出るなど、不良債権市場で結果を出し続けます。

しかし、そんな事態に水を差す出来事が起きます。それがリーマンショックです。リーマンショック前は不良債権市場は活況を呈し、不良債権の買い取り競争が起きるほどでした。ところがリーマンショックで回収がうまくいかなくなり、大変な問題を抱えるまでになります。そこからの復活を図る時に東日本大震災が発生するなど、レーサムにとっても田中剛さんにとってもきつい時だったことでしょう。

それでも不良債権の事業を続けていきますが、2018年にこの事業から撤退。当時は金融機関の貸し渋りの問題などお金を工面したくてもできない債務者が多かった中で双方に役立ったサービスだった中、現状お金を借りやすい状況となり、時代が様々な意味で好転したことも要因でしょう。レーサムにとってはプラスのことであり、田中剛さんの先見の明といってもいいでしょう。

前を見続ける田中剛さんのメッセージ

取締役会長である田中剛さんのメッセージはとても激しく、大変刺激的で、レーサムに入りたい学生に対するメッセージも非常に本気であることがわかります。ホームページでメッセージを出す際、私たちと一緒に頑張りましょうなど主語が私たちになる文面になりやすいですが、田中剛さんは違います。主語が君であり、メッセージで積極的に学生に問いかけているのです。

そして、不動産プロデューサー、もしくはスペシャリストになることを求めています。「レーサムは、このどちらかを懸命に目指す人しかいない会社にしたいと思っている。そしてお互いに切磋琢磨する中で、努力する仲間を裏切らない会社にしたいと思っている。」という熱いメッセージを田中剛さんは若者たちに贈っています。

このメッセージが示されたのは2020年9月、今から1年前のことです。現在は代表権がない取締役会長として田中剛さんは活動していますが、元々は株式会社レーサムを作り上げた張本人です。そのため、初回面談はすべて取締役会長である田中剛さんが務めており、そこから今の役員たちの面接を受ける流れになっています。レーサムにふさわしいか、ふさわしくないかを事前にチェックしているので、今の役員たちはレーサムにふさわしい人間の中からよりふさわしい人間を選ぶことができるのです。

会社のホームページでは様々なことが赤裸々に書かれていますが、田中剛さんからのメッセージも同じくらい赤裸々です。それだけに本気度が伝わるメッセージであり、やる気の高い人がレーサムを志望する形になるのでしょう。これもまた田中剛マジックなのかもしれません。

まとめ

レーサムのホームページは嘘偽りが本当にないからこそ、本当のことを書けるのと同時に、現時点では進化を遂げており、失敗はあくまでも学びであることを感じているはずです。だからこそ決して自虐なのではなく、この失敗があったから今があると堂々と言えるのです。田中剛さんを始め、経営者の人たちはすべて成功させてきたわけではなく、時に判断を間違えることもあります。それをプラスに受け止められるのが強みだと言えるでしょう。