━━ 運動場 ━━

リドル:握力が、30.2kg……と。測定結果の記入漏れは……うん、無いね。

    しかし、今回の体力測定もほとんどの種目が平均以下か……。

    魔法士養成学校で、こんな数値に意味があるとは思えないね。

    はぁ。ぼやいても仕方がない。ええと、次の種目は……。


カリム:よっ、リドル!


リドル:わっ!?

    カリムか……急に後ろから飛びかかってくるなんて怪我でもしたらどうするんだい。


カリム:悪い悪い。早く話しかけなきゃと思ってさ。

    お前、短距離走の測定まだだろ? オレもなんだ、一緒に走ろうぜ。


リドル:えっ……でも、キミには一緒に走る相手がいるだろう?


カリム:ジャミルか。アイツはまだ別の種目やっててさ。な、どーせ2人1組でやるんだしいいだろ?


リドル:……まぁ、誰と走っても一緒か。


カリム:ん?


リドル:わかった、2人で走ろう。

    ただし、終わったあとに余計なことは言わないこと。いいね?


カリム:おう、よくわかんないけどわかったぜ!


バルガス:次の走者、位置に付け!


カリム:オレたちの番だな、リドル。


リドル:ああ、うん。


バルガス:では、よぉーーーい……スタートッ!!


カリム:行くぜっ!


リドル:っ……!



カリム:はぁ、はぁ……よっしゃ、ゴール! 記録は、っと……。


リドル:くっ……はぁ、はぁ……運動は、どうしてこう……はぁ……。


ジャミル:なんだ、カリム……先に走ったのか。


カリム:おう、ジャミル。お前の測定、時間かかりそうだったからさ。


ジャミル:それでタイムはどれくらいだったんだ?


カリム:え~と……あれ、何秒だっけ? でもジャミルより速いと思うぜ!


リドル:6.81秒。測定結果を覚えられないのなら走ってすぐ記録用紙に書き込むんだね。


カリム:サンキュー、リドル! もっかい走るはめになるとこだった。あはは!

    さあジャミル、勝負だ。お前も走ってこいよ。


ジャミル:リドル……なんというか、面目ない。


リドル:別に。キミも苦労するね。


カリム:ん?

    でもオレ、ちょっと安心したぜ。さすがのリドルでも運動は1位じゃないんだな!


リドル:……なんだって?


カリム:2年の寮長って、オレ以外なんでもできそうだなって思ってたんだけどさ……もがっ!


ジャミル:ストップ! ……悪いな、リドル。カリムも悪気があるわけではないんだ。


リドル:カリム……余計なことは言うなと、忠告したはずだよね……!


バルガス:測定が終わった者は、各自自習! 体を動かせ! おしゃべりしていても筋肉は育たないぞ!



カリム:自習か~。どうする、3人で踊るか?


ジャミル:それはお前がやりたいことだろ。

     そうだな……飛行術の練習はどうだ? ちょうどいいお手本もここにいるし。


カリム:おっ、それもそうだな!


リドル:お手本ってまさか、ボクのこと?


ジャミル:悪くはないだろ? そろそろE組は飛行術のテストがあるし、自習内容としても妥当じゃないか。


リドル:キミといい、ケイトといい、よくボクにそんなおねだりが気軽に出来るモノだね。

    まあいいよ。飛び方を教えたりはしないけれどそこで見ているといい。

    じゃあ、早速……それっ!


カリム:うわっ! すごいスピードで急上昇したぜ!?


ジャミル:次は旋回に捻りを加えて……ふぅん、相変わらずすごいな。制御が正確だ。

     さすがに、あの飛行術に勝てる奴は同学年にはいなさそうだな……。


カリム:わ~、あっという間に見えなく……あ、帰ってきた!


リドル:っと……こんなものかな。


カリム:やっぱりすごいな、リドルは!


リドル:別に、これくらいどうということはないよ。

    ボクは魔法士だから、体力よりも魔力のほうが優れている。ただそれだけさ。