━━ オンボロ寮 - 玄関 ━━
ドンドンドン
フロイド:小エビちゃん、アザラシちゃん。おはよー。
迎えにきたよー。お出かけしよ。
グリム:ウッ、オマエらが来ると、またなにか取り立てられそうでドキッとするんだゾ。
ジェイド:いやですねぇ。僕らだって、契約違反をしない方に手荒な真似は致しません。
さて、本日は見事な晴天。絶好の遠足日和……ということで。
フロイド:アトランティカ記念博物館へ、遠足に行こ~!
ジェイド:アズールの手配でアトランティカ記念博物館は僕たちの貸切となっております。
アズールは先に出発し、現地で僕たちを待っているそうです。
ユウ:❶ちゃんと写真を返さないと
❷約束通り、写真に手は加えてませんね?
(❶ver.)
フロイド:小エビちゃんは真面目だな~。わかってるって。それじゃ出発~。
(❷ver.)
ジェイド:ええ、写真は僕が責任を持って保管していました。
フロイド:ほらほら、早く。出発進行~。
━━ アトランティカ記念博物館 ━━
エース:うわー、すげぇ。中はこんな風になってんだ。
デュース:伝説の海の王の像か……海の魔女以外にも海底にはいろんな偉人がいたんだな。
ジャック:この王様、なかなか鍛えてるじゃねぇか。
アズール:みなさん、ようこそアトランティカ記念博物館へ。
本日は『モストロ・ラウンジ』の研修旅行……
という名目で貸切営業となっておりますのでゆっくり楽しんでいってください。
グリム:ふなっ、出たなタコ足アズール……と、思ったらオマエは人間の姿のままなのか?
アズール:ええ。僕のようにタコ足の人魚はこの辺りではとても珍しいので……
こっそり写真を戻しに来たのに変に印象に残っても嫌ですから。
ジェイド:そんなに気にしなくても。写真に写っているまんまるおデブな人魚が貴方だとは、誰も気付きませんよ。
フロイド:せっかく帰ってきたんだから、そんな不便な姿じゃなくて、元の姿に戻って泳ぎ回ればいいのに~。
アズール:フン。放っておいてください。
じゃあ僕は写真をそっと元に戻してきますから……みなさんはどうぞ館内をご覧ください。
フロイド:あっちに人魚姫の銀の髪すきとか展示してあるよ。
エース:さっきパンフで写真見たけどあれどう見ても櫛じゃなくてフォークじゃね?
ジェイド:ふふふ……陸の人間にはそう見えるかもしれませんね。
アズール:……あなたは行かないんですか?
ユウ:❶本当に写真を返すまで、見張ります
❷ちょっと、あなたが心配なので
アズール:疑ぐり深いですね。ちゃんと戻しますよ。
……昔の写真を全て消去すれば
僕がグズでノロマなタコ野郎と馬鹿にされていた過去も消えるような気がしていたんです。
海の魔女は、悪行を働いていた過去を隠すことはせずその評判を覆す働きをして人々に認められた。
僕は、彼女のようになりたいと言いながら……
結局、過去の自分を認められず、否定し続けていただけだった。
ユウ:❶他人から能力を奪わなくてもあなたは充分凄いです
❷あなたはもう、魔法より凄い力を持ってます
アズール:え……?
ユウ:❶学園長を困らせた、稀代の努力家だ
❷努力は、魔法より習得が難しい
アズール:努力……僕が?
……ふっ。勝手に美談にするのはやめていただけますか?
僕はただ、僕をバカにしたヤツらを見返してやりたかっただけですから。
グリム:ユウ~! 向こうにでけぇ恐竜の骨みたいのが置いてあったんだゾ!
ジェイド:あれは恐竜ではなくシードラゴンという海のモンスターですね。
海の魔女の洞窟の入口は、シードラゴンの骨で出来ていた……という言い伝えがあります。
フロイド:あっちに海の魔女の大釜のレプリカとかもあるよ。
デュース:なにっ。海にも大釜があるのか。
エース:海ん中でどうやって温めんの?
フロイド:えー、わかんね。アズール、説明してー。
アズール:いいでしょう。僕のツアーガイド代は高くつきますよ。