磯釣り師なら一度は磯で怖い目に遭ったことがあるでしょう。
波に飲まれたり落ち込んだり・・・
自然の力の前では人間は無力です。たとえボーズでも無事故で帰る事がなによりです。
ある事があって以来、私は常に安全な釣りを心掛け決して無理をしない事にしています。たとえ船頭に勧められても・・・。
 
去年の6月地元の同級生Bと柏島へ釣行した時です。
港で兵庫の釣友Tさんと合流、3人で船に乗り込みます。
沖に出るとややウネリがつているようです。
私だけ底物狙いでしたので単独でアカバエ(グンカン)に上がりました。
船付けもちょっと危うい感じがしました。
 
高場に上がり釣り開始です。
しかし魚信は無く根掛りの連発で嫌になります。
おまけに一級底物場の宿命でしょうか・・底物師達が落としていった仕掛けが沢山魚の代わりに針に掛かってきます。
 
弁当も早々と食べ気がつくと上がった時よりサラシが広がりうねりも高くなっていました。
ふと見ると渡船が近づいてきて瀬に付けようとしています。
よく見るとTさんが船の先端で構えています。
私の上がった時の低場は波が被っているので無理みたいでどこから上がるのかな?と思ったら釣り座の数メートル横の傾斜になっている箇所に付けようとしています。傾斜といっても垂直と変わらないほどの急勾配です。
 
ウネリが押してきた所を見計らい潜水艦が急浮上したような姿勢でホースヘッドを傾斜に押し付けます。
黒い煙を吐き出しながらエンジンを吹かせています。
 
私は唖然としてその様子を見ていました。渡船が目一杯背伸びしてもその先からは人がとても上がっていけない距離なのですから。
 
・・がしかしそのあと無謀?にも急傾斜を勢いをつけて飛び上がろうとするTさんが・・・
とてもスポーツが得意そうでない?Tさん、案の定後一歩という所で下がるも上がる出来ない状態で堪えています。
 
咄嗟に駆け寄り、腕を伸ばしてTさんの腕を掴み力いっぱい引き上げると倒れるように上がってきました。
 
こんな怖い渡礁を見たのは初めてです。しかしこの後もっと恐ろしいことが起きようとはその時まだ二人共知るよしもなかったのでした。
 
無事上がったTさんは色々とやっています・・・がアタリは全くありません。
こちらも色々やってみますが一向に変わり無しです。
暫くするとまた渡船が近づいてきて「撤収~」「早く荷物まとめてー!」
 
二人は素早く片付けをし船に向かって「OK」サイン。
どこから船に乗るんだろう?と考えていると「先に荷物放って~」って言うんで
釣り座真下に着けている船のカジコ(ポーター)に荷物を投げ渡しました。
 
なるべく腰をかがめて腕を伸ばし、カジコに負担が掛からぬよう放り投げましたが
さすが高場というだけ相当高いと感じました。
 
実は万が一、大物が掛かった時は一人で玉入れ出来るようシュミレーションしていました。腹ばいになって玉の柄6.0mでギリギリ掬える距離でした。
 
さあ次は私たちの番、場所はどこだ?と船頭を見た途端スピーカーから信じられない言葉が出てきました。
 
「早く飛び降りろ!」
耳を疑いました。
 
「早く飛び降りろ!心配ない!!」
下のカジコを見たらカモン、カモンサインを出しています。
 
「早よ~飛び降りな◎※♀×〒∇≡・・」
ベタベタの土佐弁を興奮して怒鳴っているので全く何言っているのかわかりません。とにかく早くそこから飛べ!と言っているようです。
 
意を決っし、へっぴり腰でカジコ目掛けて飛び降りた瞬間、スピーカーから
「あ~~~~」と言う船頭の声が響き渡ったのです。
落ちていく瞬間、ほんの一瞬でしたがすべてを悟りました。
 
うねりで押し上げて付けた船がエンジンの力でその位置をキープしていましたが引き波などの影響で維持できず船の位置が下がってしまったのです。
 
あの「あ~~~」は「下がる~」という意味だったのでしょう。
キャッチされる瞬間、船が沈み込むのが分かりました。
 
しかしさすが○上渡船のカジコ!元力士というだけあって私を受けてもビクともしません。
さあ次はTさんの番です。下から見ても相当距離があります。
見ている方がハラハラです。
彼も躊躇していましたが私が無事キャッチされるのを見てか何とか飛び降り無事回収されました。
その後、皆を回収して再び私たちの上がっていたグンカンの前を通り過ぎた時です。
飛び降りた時より更に波が大きくなり高場まで届きそうな勢いで白い波が打ち寄せています。低場は完全に波に呑まれています。
 
オレンジの○は釣り座&飛び降りた所 白い○はTさんが上がってきた所です
イメージ 1
 
 
船中で「あそこから飛び下ろされた」と言ったら皆「え~~」と驚いていていました。
港に着いて船頭に「こんなに怖い思いしたん初めてや」と言うとニヤニヤ笑いながら「うちの息子でなかったらあんな事させん」と憎たらしく言うのです。
 
聞けば過去にあの高場で片付けが遅くなり人だけ先に回収したら途端に道具全部を波に呑まれた事があったらしいのです。
 
それからです波が高い時には無理して釣行せず、現地でわかった時には船頭に「安全な磯に渡してください」と言うようになったのは・・。