三軒茶屋の氷問屋として有名な「石ばし」。
住宅街にひっそり佇むお店は、昔懐かしい趣がある。
夏は長蛇の列ができるかき氷の人気店だが、
「石ばし」には冬の顔も存在する。
すっかり寒くなった11月、
店先には大きなポスターが。
「やきいも はじめました」
年代物の削り機で、
ひとつひとつ丁寧に手で削るかき氷と同じように、
焼き芋にもとことんこだわる。
扱う芋は3種類。
種子島と天草から直接取り寄せる。
一つは紅東(べにあずま)。100円/100g。
関東のものに比べて見た目はよくないが、
味は甘みがあって美味しいと評判の天草産を使用。
二つ目はちょっとめずらしい太伯(たいはく)。200円/100g。
身が白く
さっぱりとした味が特徴だ。
一番人気は、
スイーツのように甘い安納(あんのう)芋。200円/100g。
育てるときに海水をかけるため、
僅かに塩味が感じられる。
安納芋は大きいと繊維が長く歯ざわりがよくないため、
小さめの芋を使うという。
「石ばし」ではひとつひとつの工程に手間を惜しまない。
芋が届いたらまず、
土がついたままの状態で3日間天日で干す。
こうすることで実がぎゅっと詰まって甘みが増すだけでなく、
皮も剝きやすくなるという。
芋を干すのは大変な作業だ。
常に日が当たるよう、
一日の中で干す場所を変える。
また、芋は濡れると腐ってしまったり、
寒いと黒くなってしまったりするので、
天候や気温に気をつけながら干さなければならない。
さらに貯蔵にも気を配る。
特に安納芋は寒さに弱いため、箱と
芋
の間や芋と芋の間に
カイロや湯たんぽを入れて保存する。
しかし、暑すぎると今度は芋が汗をかいてしまうので、
カイロや湯たんぽの位置を少しずつ変えて温度を調節するのだ。
「お芋って生きているのよ」とは、
店主の石橋久美子さん。
石橋さんは焼き芋がお客さんの口に入るまで、
芋を我が子のように大切に扱う。
「美味しさのひみつは、良い加減に焼くこと」と石橋さん。
普通の石焼き芋は温めた石の熱で直接芋を暖めるが、
ここではガス火を使い、
暖めた空気を滞留させて輻射熱で釜を
これはつぼ焼き芋を作る時と同じ仕組みだ。
大きさや水分の含み具合等、
芋の様子を見定めて、
最も美味しい状態に焼き上げる。
長年の石橋さんの経験が成せる技だ。
「芋を扱うのってとても手間がかかるのよ。
でも、お客さんに最高の状態で渡したいから、
ここまでするの。
それでお客さんが喜んでくれたら嬉しいもの」と石橋さん。
丹精込めて焼かれた芋は、
私たちの体だけでなく、心もあたためてくれる。
石ばし
東京都世田谷区三軒茶屋1-29-8
TEL 03-3411-2130
[営業時間]お昼くらい~18時くらい
[定休日]日曜日
[年末年始]12/30~1/7・10あたりまでお休み
焼き芋は3月中旬まで。GW前後からかき氷の営業開始。
Report by Kato


