超ハードコアブログ戦記 第五話 | SWS学生プロレスのブログ

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第五話 コンクリートバンプ

 フェチローに襲われ、橋本の街を逃げ回ったシコッテー。どうにかして逃げ切るも、彼に襲撃されることはそれからも多々あった。学校へ行く途中であったり、帰宅途中、授業中でも数々の学プロレスラーに襲われた。
 
 いつでも探してしまう、どっかに誰かの姿を。向かいのホーム、路地裏の窓、こんな所にいるはずもないのに・・・。と、山崎まさよしの歌の気持ちが別の意味でわかったシコッテー。それらの事柄もあり、プロレスの基礎をより早く思い出すことが出来た結果、帝京大学でのタイガーベットシーンとの試合も無事に勝利を収めることが出来た。

 今、シコッテーは杏林大学の時も持っていた鞄の中にコスチュームとハードコアベルトを入れ、電車に揺れている。目的地は中央大学。そう、今日は王座戦。jrヘビー級のベルトを持つ、マラデカイに挑戦する日だった・・・。


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試合は壮絶なものだった。
走っては走られ、投げては投げられの長期戦であった。試合後半ではマラデカイもシコッテーもクタクタで、お互い技も使い切ってしまった。

ふと試合中に、シコッテーは自分が1年から使っているお気に入りの技「アサイDDT」を使っていないことに気がついた。もう体力もないし、この技に全てをかけよう。そう思い、いきなりソバットを叩き込んだ後に、いきなりアサイDDTをかました。その時、この技がこの試合の最後の技になるなんて、シコッテーは思っても見なかった。
カウントは3、わっと歓声が上がり、ゴングが鳴る。またまた頭の中に過ぎった技が、この勝負の勝敗を決めた。
シコッテー・2・ホッテーは、SWSJrヘビー級のチャンピオンに輝いたのであった。

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試合の後は、頭がぼーっとする。リング撤収の際も、何か頭の中がふわふわした気持ちだった。
 解散になり、おのおの荷物をまとめ帰宅する。シコッテーの鞄は、また重くなった。疲れよりも安堵の方が先に来てしまい、モノレールの中では何も考えることが出来なかった。もう時間も遅い。モノレールに乗っている客は少なかった。
 
多摩センターはモノレールの駅から、京王線の駅まで、距離がある。疲労のせいか、いつもならどうも思わないこの区間も長く感じた。鞄の重さから、シコッテーはふとあることに気がつく。jrのベルトとハードコアベルト。今自分自身は二冠であることだ。俺すげぇなと笑ってみせる。思えば、このハードコアベルトがあったからこそ・・・。

・・・ハードコア?

 我に返るシコッテー、今自分がどれだけ無防備であるかを知ると、血の気が引いた。そう、彼はまだ「試合の最中」なのである。
 気がつくのが遅かった。衝撃がシコッテーの背中に走る。
 まるで自動車に跳ねられたかのように、シコッテーは前に飛ばされ、倒れた。冷たい地面の感覚が頬に伝わる。痛みよりも、今自分がどんな状況であるかがわからない。なかなか起きあがることが出来ず、背中に「何が」当たったのかを考えた。何とか片膝立ちになりながら、後方を振り返る。そこには、何日も前からシコッテーを狙っていた「ある男」が立っていた。

 首根っこを捕まれる、そのまま肩に軽々と担がれてしまったシコッテー。「この男」の使う技で、この体勢は・・・。
 ゴッと骨が地面に当たる音がする。ふわりと宙に浮いたかと思うと、シコッテーは真っ逆様に地面に落とされた。
 背中も衝撃は、きっとスピアーだろう。そして、今シコッテーに放った技は「一騎当千」 痛みにのたうち回ることも出来ずに、シコッテーは地面に力なく横たわっている。

「へっへっへ~!ありがとなぁ、フェチロー」
聞き覚えのある声がする、朦朧としった意識の中で、シコッテーは視線をその声の方に向けた。そこには、SWSのヒール軍の長であり、前々回のハードコアチャンピオンである潮噴亭釣瓶の姿があった。
釣瓶はシコッテーの胸元に足を置く、そして「1・・2・・3!」とカウントを入れ、シコッテーの鞄からハードコアベルトを取り出し自分の肩にかけた。

「なぁ、早く約束のものくれよぉ」
フェチローは子供のように手を差し出す。釣瓶は何も言わずに、どこから取り出したかわからないが輪ゴムで束ねられた何枚もの紙をフェチローに差し出した。その紙には「握手券」と書かれている。
「やべぇじゃんw本物だよーw」と喜ぶフェチロー。
 彼の貰った大量の紙は、フェチローの好きなAKB48の握手券だった。この握手券を渡す変わりに、シコッテーを倒して欲しいと釣瓶がフェチローに言ったのだった。
 それを貰い、そのままスキップをして帰るフェチロー。釣瓶もその場でしばらくハードコアベルトを眺めた後、その場から離れていった。
 シコッテーは、多摩センターの駅の近くでそのまま大の字で延びている。空の星がよく見える。先ほどまでとは違い、なんとなく肌寒く感じた。

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「また君か!いったい何回けがをすれば気が済むんだ!」
 相模原中央病院、いつもシコッテーのけがを見てくれる先生は、今回のけがの有様を見て、あきれたような、怒ったような口調でシコッテーに言った。

「すみませんです・・・」
 首のギブスが窮屈で嫌になる。大げさだとシコッテーは思ったが、コンクリートの上で一騎当千を食らってこれだけで済んだのなら、よかったのではないかと自分に言い聞かせた。
一つのベルトを手にし、そして一つのベルトを手放した。

 とにかくシコッテーは、普通の生活に戻ることが出来、そしてJrのチャンプになったことのうれしさの方が上回り、首の痛みのことなど微塵も感じなかった。

現在のハードコアチャンピオン「潮噴亭釣瓶」