前の日曜日は、この地域の秋祭りだった。私の町内も手作り屋台をひいて参加した。
町内を巡行し、昼休みにホテルの敷地内の空き地を借りて、引手の子供たちや世話人のみんなで昼食をとった。
おにぎりやハンバーガーを食べ終えた数名の未就学児たちが裏の林に駆け込んだ。大人たちもみんな談笑しているので、私は遠目からその動きを、少し気にかけて眺めていた。
やがてぞろぞろ出てきたが、おしりからついて行った3歳くらいの女の子の姿がない。
立ち上がって様子を見に行ったら、少女は一人だけ離れて、草むらに数本固まって咲いていたヒガンバナを摘んでいた。
少し離れてところで年上の男の子がひとり女の子を見守っていたので、なるほど誰かが責任を果たすものだと感心したが、「みんなのところに戻ろうね」と声をかけた。
広いところに出たら、別の子供が「その花、毒だよ」と叫んだので、少女は花を投げ捨てた。
私が、「その花はヒガンバナだよ」と教えたら、少女は、「ヒバンガナ」と口真似した。
「ヒガンバナ」だよ。「ヒバンガナ」。
数回教えなおしたら、やっと「ヒガンバナ」と言えた。
母親がかけてきて、「一人っ子だから誰にでもついて行って」、と言い訳し、「みんなから離れちゃダメでしょ、ごめんなさいは?」と叱った。
心配は分かるけどちょっと理不尽な叱りのように思えたので、「ヒガンバナって上手に言えたね」と頭を撫でて、私はその場を離れた。
ヒガンバナは、本当に彼岸の頃にパッと咲く。
咲き始めると急にあちこちで目立つが、姿を消すのもあっという間だ。
今年は庭にも数カ所で彼岸花が咲いた。明日あたりから姿を消し始めそうだ。
ヒガンバナ